アタッチメントと母子相互作用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 07:45 UTC 版)
「かわいさ」の記事における「アタッチメントと母子相互作用」の解説
ベビースキーマ自体はコミュケーションのために進化したものではない。たしかにベビースキーマは、赤ちゃんを養育させる感情を保護者に喚起させるが、あくまで一次的な身体機能発達の産物に過ぎず、それを受け取る大人側に「かわいらしい」と感じられる感受性が、進化の過程で備わってきたと解説される。 比較行動学者の正高信男は、ベビースキーマの理論を拡張するだけでは、赤ちゃんの発声や動きに対する大人の養育的反応を説明できないとしている。たとえば「指さし」など、赤ちゃんが大人と類似した行動をとった時であっても、それを愛でようとする傾向がヒトの心理にはあるという。小児科医のT・ベリー・ブラゼルトンによれば、親が話しかけるほど赤ちゃんもよく発声し、笑顔で見つめると笑顔で微笑み返す。このような相互作用は本能的に備わっており、生まれて数時間しか経っていない赤ちゃんであっても、親の表情や発声を忠実に模倣する習性があるという。このような反射的習性は「原初模倣」と呼ばれている。この際、保護者は泣き叫ぶ赤ちゃんをあやすなど「快感情」を与え、赤ちゃんもまた保護者に様々な養育信号を発信する。 母性の発達を研究している石野陽子は、母子間で愛情を高めあう乳幼児の行動に「人見知り」を挙げている。たとえば、赤ちゃんは生後半年ほどで人見知りをするようになり、普段あまり接しない人が接近するだけで泣き叫ぶなど不快感を示す。しかし、保護者が視界に入ると赤ちゃんはピタリと泣き止み、抱きつくなど甘える仕草を見せる。保護者もまた「私がこの子を育てなければ」というポジティブな養育行動を促進させ、赤ちゃんを甘やかすようになる。こうした母子間の親密かつ情緒的なかかわりは「アタッチメント(愛着)」と呼ばれ、母子間で信頼関係が育まれるプロセスを発達心理学では「母子相互作用」と呼んでいる。
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