出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/07 07:49 UTC 版)
副反応も考慮しなければならない場合
本セクションでは、主反応の他にもMやLを巻き込む反応がある様々場合を扱う。このような反応を主反応に対して副反応 side reaction と呼ぶ。
一般に次が成り立つ。金属塩と配位子の全副反応係数をそれぞれαM、αLとすると、条件全生成定数βi’は
- (3-1)
で表せられる。
配位子L-が一塩基酸HLの共役塩基の場合
この場合、金属塩の全濃度CMは
- (31-1)
配位子の全濃度CLは
- (31-2)
ここで、[L']を金属塩と結合していないすべてのLの濃度とする。本セクションの場合、
- (31-3)
となる。
(31-2)からプロトン付加 protonation により配位子L-の濃度が低下する。この影響は主反応に及び、逐次生成定数も全生成定数も変化させる。この変化は金属塩や配位子の全濃度だけでなく、系の酸性の度合いにもより、複雑だ。そこで、配位子に対する副反応係数 side reaction coefficient αL(H)を次のように定義する。
- (31-4)
副反応係数のLは、これがLのかかわる副反応についての値であり、括弧の中のHはその副反応がプロトンによるものであることをそれぞれ示す。
(5-2)に(5-1)を代入して
- (31-5)
よって、副反応係数は系のpHとLの濃度酸解離定数から得られる。また、副反応係数は[L]の分率の逆数に等しい。
副反応係数は(5-3)から容易に導けるため、各化学種の濃度などを知るのに重宝する。例えば、逐次生成定数および全生成定数は
- (31-6)
- (31-7)
というように、[L']が既知であるときや、配位子濃度が金属塩濃度に比べて大過剰で[L']=CLに近似できるときに得られる。そのほかの場合は、条件生成定数 conditional formation constant Kfi' と条件全生成定数 βi' を用いて導く。
- (31-8)
- (31-9)
位子Ln-が多塩基酸AnLの共役塩基の場合
この場合、金属塩の全濃度CMは
- (32-1)
配位子の全濃度CLは
- (32-2)
ここで、[L']を金属塩と結合していないすべてのLの濃度とする。本セクションの場合、
- (32-3)
となる。
ここで、平衡定数Kiは
よって、副反応係数αL(A)は
- (32-4)
したがって、このときにおいても、逐次生成定数、全生成定数について(31-6)、(31-7)が成り立つ。また、(32-8)と(32-9)も成り立つ。
金属塩Mn+がヒドロキシド錯体M(OH)nを形成する場合
金属塩は、水溶液のpHが高くなると、ヒドロキシド錯体となる。この場合、金属塩の全濃度CMは
- (33-1)
配位子の全濃度CLは
- (33-2)
ここで、[M']を金属塩と結合していないすべてのMの濃度とする。本セクションの場合、
- (33-3)
となる。
(33-3)から
- (33-4)
この場合でも、値を対応するものに置き換えることで全生成定数について(31-7)が成り立つ。
- (33-5)
また、同様に、代入を行ったうえで(31-9)も成り立つ。
- (33-6)
金属塩MがLn-とは異なる化学種と配位結合する場合
金属塩がLや水酸化物イオンとは別の化学種Xn-と錯体MiX(i=1~m)を生成する場合、金属塩の全濃度CMは
- (34-1)
配位子の全濃度CLは
- (34-2)
ここで、[M']を金属塩と結合していないすべてのMの濃度とする。本セクションの場合、
- (34-3)
となる。
Xn-の副反応係数は
- (34-4)
ここで、βXiは錯体MXiの全生成定数である。系の中にX1~Xnのn種類の余計な配位子が混ざっており、任意の配位子Xjは金属塩とxj個まで配位結合できるとする。このとき、金属塩に対する全副反応係数 αM は
- (34-5)
で表される。