観光バス 観光バスの車両

観光バス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/24 06:56 UTC 版)

観光バスの車両

車両の特徴

車体

乗降口が前方の一箇所で、座席が進行方向を向いているものが多い。車椅子などを収容するために中間部や後部に別の出入り口やリフトを備えるものもある。非常口は出入口と反対側側面の後方(日本では右後方)についているものが多い。乗降口ドアは近年は自動ドアが一般的で、折戸は少なく、外側へせり出すスイングドアが多い。

高速走行、長距離走行のため、車両の足回りや座席が豪華に作られ、疲労が少なくなるようにされている。ただし、独立座席の夜行高速バスよりは狭い。

内装はかつて、豪華なシャンデリアやモケット生地などを多用して華やかに仕上げ、各事業者が趣向を凝らした内装を特注するといったこともあったが、近年は華やかさよりもコストや実用性が優先される傾向が強く、メーカー標準仕様の内装をそのまま採用する事業者も多くなった。とはいえ、伝統的な内装を重視する事業者や車両サービスに力を入れる事業者では、新規納入車両であっても豪華な内装に仕上げられていることがある。

車両の後部(あるいはすべての座席)をサロンとして座席を回転させ、向き合える空間にしてある「サロンカー」がある。飲み物などが置けるテーブルが設置されているものもあり、麻雀卓を設置し、走行中に麻雀ができるものもあった。畳敷きのものもあり、キャンピングカーのような車もある。なお日本では法規上、バスに寝台を設置することができないので、交代乗務員の仮眠室を除き寝台付きの営業用観光バスは存在しない。

一時期、大阪の中央交通がヨーロッパで採用されていたフランス製の二段ベッドにコンバート出来る座席を備えたネオプラン車を導入し、自社ツアーで運行したことがある。

主に大型車、中型車、小型車の3タイプで、それぞれにスタンダードデッカー、ハイデッカーがある。さらに大型車にはスーパーハイデッカーダブルデッカーもある。

大型車は、車体幅2.5mで全長11mから12m、40~60人乗り程度が多い。座席は最大で12列になるが、同じ車体で11~10列の座席を配置し間隔が広いく足元のゆったりした車もある(定員40~50名程度)。補助席をなくし、座席が左右にスライドするものもある。また、高速バスに多い3列シートのものもある(定員28~36名程度)。車種は三菱ふそう・エアロエース日野・セレガいすゞ・ガーラ日産ディーゼル・スペースアロー等がある。

中型車は、初めから中型観光バスとして設計された車種のほか、大型車の全長を9mに短縮した仕様もある。前者は車体幅2.3m程度で全長9m、30人乗り程度が中心である。かつてはハイデッカーも製造され、車種は日野・メルファ三菱ふそう・エアロミディMKいすゞ・ガーラミオがあるが、快適性・居住性などの理由から導入は少なくなっている。そのためハイデッカーの製造はなくなり、2013年時点では日野・メルファといすゞ・ガーラミオの統合車種しか生産されていない。一方で大型車のショートタイプについては、近年ではこれを中型車として取り扱う事業者が多くなってきている。こちらは車体幅2.5mで全長9m、30人乗り程度が多い。車種は三菱ふそう・エアロエースショートタイプMM、日野・セレガHD-S(ハイデッカーショート)等がある。

小型車(マイクロバスともいう)は、初めからマイクロバスとして設計された車種のほか、中型車の全長を7mに短縮した仕様もある。前者は車体幅2.1m程度で全長7m。25人乗り程度が多い。主な車種は日野・リエッセがあるが、2011年で生産中止となった。後者は車体幅2.3m程度で全長7m、25人乗り程度が多い。中型車と同様にハイデッカーもある。車種は日野・メルファ7、三菱ふそう・エアロミディMJ等があるが、客単価の下落によって定員の少ないバスは敬遠される傾向があり、導入が少なくなったことから2007年のエアロミディMJを最後に生産中止となった。そのため、小型観光バスについては2013年時点での国内生産はない。

車内設備

通常、冷暖房マイク放送設備、テレビビデオデッキDVDなどの音響・映像装置が装備され、車両によってはトイレカラオケ冷蔵庫、湯沸かし器なども装備されている。また、少数だが電子レンジ酒燗器、ビールサーバー、通信カラオケを装備する例や、携帯電話の普及に伴って車両に公衆無線LANを導入したり[15]、座席に充電用のコンセントUSBポート[16]を設置したりする例がある。

特殊な装備品として、エレクトーンをダブルデッカーの1階席に設置したり[17]、四国の事業者ではダブルデッカー車両のフロント、1階席と2階席の間に、車外から見る様に大きなアナログ時計を設置した例がある。

その他の仕様

マーカーランプの一部を屋根上にロケットのような形のもので設置したものがある。

特定の観光地へ乗り入れるための専用車が用意されることがある。例えば長野県上高地へ向かう途中の釜トンネル2006年に拡張工事が完了するまで道路幅・高さともに狭かったため、通常の大型ハイデッカーの乗り入れが不可能であった。このため全長・全高を抑えてショートホイールベースとした「上高地仕様」と呼ばれる仕様が存在し、上高地へのツアー輸送を多く受注するバス事業者で導入されていた[18]

2台以上の台数口で走る場合は号車番号が付くことが多い。関東などでは頭から1号車、2号車、3号車となるが、近畿地方東海3県愛知県岐阜県三重県)では最後が1号車、その前に2号車・3号車と「順」号車番号が付くことが多い。これは対向車が何台のバスがつながって走っているかを早くに認識できるためと言われている。[19]

一部には1/8と「号車番号/総号車」の表記をした物や8終と表記するケースもある[20]

老人団体など4号車が嫌われる場合、「寿号車」と表記する場合がある。修学旅行遠足などの場合には直接的に「○組」と表記することもある。

  • 近畿地方・東海3県以外 【先頭】 1号車、2号車、3号車 【最後】
  • 近畿地方・東海3県 【先頭】 3号車、2号車、1号車 【最後】

会社によってはバス毎に愛称を付ける事もある。

手配の関係で別の会社からの応援の車で編成する場合会社がばらばらとなり、カラーリングが五色豆の状態になる場合がある。この場合先頭車両がもともとの手配会社で、次の位置が最後尾車両、残りを応援会社で編成することが多い。

会社によって車体のカラーリングがバラバラになることを避けるため、グループ内で統一したカラーを設定したり、資本関係のない会社同士では協同組合方式でカラーリングを統一する例がある(ひがし北海道貸切バス事業協同組合ホープバス協同組合)。

観光バス・高速バスに対しても2009年7月からETC大幅割引が適用されるようになった[21]

いわゆるインバウンド輸送を主力とする事業者では希望番号制度を利用し、保有する車両ナンバーを中華圏で好まれる「8888」「168」など8を含む数字で登録していることが多い。

車両の用途

団体旅行

会社、地域・職域などの団体の研修旅行や慰安旅行

学校幼稚園などの遠足修学旅行体験学習などの学校行事クラブ活動の送迎

募集型企画旅行

募集した客を会員として旅行会社が主催で貸切る募集型企画旅行

定期観光バス

出発地から目的地の観光スポットを回り、出発地に帰る、一般的な主催旅行(この場合は観光バス会社自身が主催することもある)

ツアーバス

主要な都市から観光地(例・大阪⇔東京ディズニーリゾートなど)、または都市間を昼夜行の路線バス(出発地集合→到着地解散の片道輸送)に類似した形態で運行する主催旅行。

かつては高速バスに近い感覚で利用できる形態のものもあり事実上高速路線バスと同等になる場合があったが、この場合も免許の関係で貸切運行(主催旅行)の形態となり、通常の観光バスを流用しているため、高速バスよりも運賃(料金)が安く設定されていた。旅行会社の中には「高速バス」として販売している例も多く、正規の高速バスとの区別がつきにくくなっている場合があった。このため、通常の高速バスが競合により停留所の追加、減便や統廃合、さらには撤退という事態に追い込まれた。

しかし事故・トラブルの多発により規制が強化され、2013年8月以降都市間のツアーバスは国土交通省の許認可を受けた上で高速路線バスに移行し、新たに都市間ツアーバスを運行することはできなくなった。同年以降は、必ず観光地・宿泊施設をセットにして運行することが必要となっている。

空港鉄道駅などの交通ターミナルから観光地への移動のための輸送(二次交通)逆に出発地周辺と空港などとを結ぶための輸送

コースとして出発地(貸切バス)→A空港(飛行機)→B空港(貸切バス)→観光地(貸切バス)→B空港(飛行機)→A空港(貸切バス)→出発地の形で使われる。

鉄道会社・航空会社・旅行会社などと契約して、車体のカラーリングや仕様を契約先に合わせることもある。

輸送

催し物会場などへの来場客の輸送、労働者の通勤のための輸送。

輸送や送迎の場合、バスガイドが付かないことが多い。後者は一社の貸切とは言っても、道路運送法に基づく貸切バス(一般貸切旅客自動車運送事業)ではなく特定輸送(特定旅客自動車運送事業。路線バス同様にバス専用車線を走行可能)として扱われる場合が多い。

スキーバス・海水浴バス

都市とスキー場、海水浴場などの間を結ぶ目的で運行される。

路線を限定して運行するわけでなく、主催旅行に近いが、車が往復で違うなど、かなり特殊な輸送形態。

代替運行

お盆や年末年始といった超多客時には、高速路線バスの増発に観光バス用車両をまわすことがある。この場合、車両内にトイレがないため、途中のパーキングエリアサービスエリアなどの休憩所でのトイレ休憩の時間が必要となる。また、夜行バスの場合は座席が狭いことから、本来の車両とのバランス上運賃を割り引く。

地方の過疎地などで一般路線バスが廃止された場合、代替として道路運送法21条(旧20条)の例外規定に基づいて、地方自治体が肩代わりする、あるいは一般貸切バス事業者に委託する形で、(登録上の)貸切バスを路線バスとして運行する場合があるが、元々の一般路線バス運行会社の子会社が運行する場合などもあり、運行実態自体は以前と変わりない場合がある。

営業エリア内のJR等鉄道路線が事故等で不通になった際の代行輸送を担当する例がある(鉄道事業者と別途契約輸送)、運行上は鉄道路線として扱われる

車種・メーカー

以下は日本国内で販売されている・もしくは過去に販売されていた観光バスの車種・メーカー




  1. ^ 徳光・木佐の知りたいニッポン!~安全・安心の運行を! 進化する貸切バス政府インターネットテレビ、内閣府、2015年3月26日
  2. ^ ワールドキャビン (「ALEXANDER&SUN」系列)、ケイ・エス・エバーグリーン観光及び子会社のジャパン・グリーン(「光伸真珠」系列)など。
  3. ^ 外資系の観光バス事業者としては、2004年に韓国の旅行会社「株式会社旅行博士」の出資により設立された「旅行博士観光バス(母体変更により2008年トラベル・テースト・ジャパンに改称)」が初である。その後、「パンスター」系列の「サンスターライン」、「友愛観光バス」(「ハナツアー」系列)、「スプリングワールドバス(「春秋航空」や「「春秋航空日本」の母体である上海春秋国際旅行社系列)などの事業者が設立されている。
  4. ^ 北海道に本拠地を置く新日国際交通 北海道のように、地方の貸切バス事業者の買収により設立されるケースもある。
  5. ^ 動画でみる・認定制度早わかり日本バス協会
  6. ^ 輸送の安全を確保するための貸切バス選定・利用ガイドライン (PDF)”. 国土交通省自動車局 (2014年4月1日). 2014年5月28日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2017年4月5日閲覧。
  7. ^ 一般貸切旅客自動車運送事業者に対する行政処分等の状況、国土交通省関東運輸局。
  8. ^ “貸切バス等の安全確保対策に関する行政評価・監視「ランドオペレーター」に関する中間公表” (日本語) (プレスリリース), 総務省, (2017年3月31日), http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/000112999_00001.html 2017年4月5日閲覧。 
  9. ^ 30条2項及び9条の2第1項事業の健全な発達を阻害する競争をしてはならない
  10. ^ 警告処分や再違反の場合、事業用自動車の使用停止
  11. ^ 道路運送法第20条 発地及び着地のいずれもがその営業区域外に存する旅客の運送をしてはならない
  12. ^ 「事業用自動車の運転者の勤務時間及び乗務時間に係る基準」
  13. ^ 「一般貸切旅客自動車運送事業に係る乗務距離による交替運転者の配置の指針」
  14. ^ a b c 台湾まるごとガイド”. 台湾観光局. 2019年3月5日閲覧。
  15. ^ “菰野東部交通株式会社が運行する貸切バスにFree Wi-Fiの提供を開始” (PDF) (プレスリリース), ワイヤ・アンド・ワイヤレス, (2017年3月22日), https://wi2.co.jp/jp/assets/press/data/20170322_Komonotoubu_Bus_Wi2Free.pdf 2018年5月13日閲覧。 
  16. ^ ”新車”USBポート・コンセントを装備した大型観光バス6台を導入しました”. 関東自動車 (栃木県) (2017年5月9日). 2018年5月13日閲覧。
  17. ^ やんたけバス研究所 岡山の二階建てバス 下津井電鉄編 中央観光バス経由で下津井電鉄に導入されたネオプラン・スカイライナーについて、車内にエレクトーンが設置されていたと紹介されている。
  18. ^ 神奈中観光の公式ページ内バスタイプのご紹介で、車内装備を示すマークに「上高地仕様」とある。
  19. ^ 「関西の観光バス、号車番号『逆番』でGO!」朝日新聞大阪本社版夕刊2004年5月28日「ほんま?関西伝説」
  20. ^ この傾向は関西で顕著だが、東海の一部の事業者でも見受けられる。
  21. ^ 高速道路料金の引下げの実施について国土交通省


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