米 生産と流通

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生産と流通

米の生産

米の生産高 トップ20ヶ国
(2017年、百万トン、FAO統計)[18]
中華人民共和国 212.6
インド 168.5
インドネシア 81.1
バングラデシュ 54.1
 ベトナム 42.8
タイ 32.7
 ミャンマー 25.6
フィリピン 19.3
ブラジル 12.5
パキスタン 11.2
カンボジア 10.4
日本 9.8
アメリカ合衆国 8.1
ナイジェリア 6.6
韓国 5.3
ネパール 5.2
 エジプト 5.0
ラオス 4.0
マダガスカル 3.6
スリランカ 2.4

年間生産量は7億5674万トンを超える(籾。以下いずれも農林水産省『海外統計情報』より、「FAOSTAT」の2020年統計[19])。米は小麦(年間生産量7億6092万トン)、トウモロコシ(年間生産量約11億6235万トン)とともに世界の三大穀物といわれる。1980年代の生産量は4億5000万トン前後であったため大幅に増産されていることが理解される。

生産量は増加基調だが、在庫量は需要の伸びを背景に2000年をピークに減少している。在庫率は2006年には20%を割り込んだ[20]。米の9割近くはアジア圏で生産され、消費される。最大の生産国は中国で、インドインドネシアが続く。

世界の米の生産量(2000年)

日本における生産状況

日本の農業において、米は最重要の農産物であり、農産物全体に占める生産額の割合は、2021年(令和元年)においても農業総産出額8兆8,938億円中1兆7,426億円と19.6%を占め、第2位である肉用牛の7,880億円を大きく引き離す[21]など単一の作目としては最大であり続けている。しかしながら、近年一貫してその比率を落とし、1960年代は50%前後だったものが、現況の割合にまで縮小している。生産額は、1984年(昭和59年)の3兆9,300億円(年間生産量約1180万トン)をピークとして、2014年(平成26年)には1兆4,343億円(年間生産量約844万トン)程度まで減少し[注釈 1]、米、野菜(米、果物を除く耕種)、畜産物、果物の分類においては、2000年前後には畜産物に、2005年前後には野菜に抜かれ、日本の産業としての農業における地位は年々低下している[22]

米の貿易

米の輸出入 トップ10ヶ国
(2017年、百万トン、FAO統計)[23][24]
輸出 輸入
インド 12.0 中華人民共和国 3.9
タイ 11.6 ベナン 1.9
 ベトナム 5.8 バングラデシュ 1.6
アメリカ合衆国 3.2 コートジボワール 1.3
パキスタン 3.9 イラン 1.3
中華人民共和国 1.2 サウジアラビア 1.2
ミャンマー 1.1 南アフリカ共和国 1.1
ウルグアイ 1.0 フィリピン 0.9
イタリア 0.7 メキシコ 0.9
ブラジル 0.6 イラク 0.9

米の貿易量は、増加傾向で推移している。主要な輸出国はインドタイベトナムアメリカ合衆国パキスタンで、この5カ国で世界の輸出総量の8割強を占める。一方、輸入国は中華人民共和国ベナンバングラデシュコートジボワールイランなどで各国100万〜200万トンを輸入しているが、作況により取引量の増減が大きい。

日本に関しては、太平洋戦争後、米は農業政策の根幹であったため、昭和40年代(1965年 - 1974年)初頭に米の自給が実現できるようになって以降は原則として輸入がなされなかった。が、ウルグアイ・ラウンドにおいて、関税化を延期する代償としてコメにおいては他品目よりも厳しい輸入枠(ミニマム・アクセス)を受け入れ、1993年(平成5年)以降、年間77万トンの輸入を行っている[25]。なお、年間3万トン程度の輸出も行っている[26]

米は他の穀物に比べ、生産量に対して貿易量は少ない(生産量の約7%、なお、小麦は約20%、トウモロコシは約12%が生産量に対する貿易量となっている)。これは、米は基礎食料として国内で消費される傾向が強いため、生産量に占める貿易量の割合が低くなっているためである[20]。そのため、小麦やトウモロコシと異なり、国際的な商品先物取引の対象商品となっていない。国際取引指標は、タイ国貿易取引委員会 (BOT) の長粒種輸出価格。

なお日本国内では、2011年8月8日より東京穀物商品取引所関西商品取引所で「コメ先物」として商品先物取引の試験上場が開始。2013年2月12日、名称を関西商品取引所から改名した「大阪堂島商品取引所(現:堂島取引所)」が、東京穀物商品取引所閉所に伴い、同所からコメ先物取引(東京コメ)を引き継いだ。なお、現物決済の標準品は、「東京コメ」については茨城県産、栃木県産および千葉県コシヒカリ、「大阪コメ」は石川県産および福井県産のコシヒカリとなっていた。しかしながら、大阪堂島商品取引所は2021年8月6日、コメ先物取引の本上場への移行が、生産者の参加が大きくは増えておらず生産・流通を円滑にする観点から不十分との理由により農林水産省に認可されなかった旨を発表、すでに成立している取引が終わる2022年6月以降はコメ先物を扱えなくなった[27][28]

日本のコメ現物取引市場

コメの取引は、生産者やJA、卸・小売業者らの間で行われる相対取引が中心で、広く開かれた市場がないため、公平・透明な価格形成が行われていないと指摘されている[29]。今はJAグループが農家から集荷する際に支払う仮払金(「概算金」と呼ばれる)がコメ相場を左右しており、需要が減っても概算金が上がれば取引価格も値上がりするという消費者から見れば納得しにくい相場になっている[30][31]。コメ先物の上場廃止で価格指標が消滅したが、大規模コメ農家やJA、コメ卸などは価格指標が必要との認識で一致している[31]。このため、自民党が農林水産省に現物市場の創設を求めていた[29]。農林水産省は、「米の現物市場検討会」[32]を設置し、需給実態に合った価格指標を提供する現物市場の制度設計を行った。2022年3月には、市場の制度設計の取りまとめが行われ、JAなど集荷業者と卸売業者の間の「大口取引」と生産者と卸売業者・実需者の間の「小口取引」の2本立てとする方針が示された[29]。現物市場は買い手と売り手のマッチングの場となり、代表的な産地・品種・銘柄に関する⾼値帯(最も取引価格が高い価格帯)・中値帯(最も取引量が多い価格帯)・安値帯(中値未満で最も取引量が多い価格帯) 、およびこれらの価格帯に対応した取引量をリアルタイムで公表する[33][34]

農林水産省は、2022年11月25日に開かれた自民党の会合で、コメの現物市場を2023年秋にも開設できるようにする方針を示した[29][34][35]シンクタンクである「公益財団法人流通経済研究所」(東京都千代田区)が現物市場の開設・運営する意向を示しており、同研究所のマッチングシステム「アグリーチ」を使って農林⽔産物の⽣産者・卸売業者・実需者をマッチングすることを明らかにした[29][34][35]

11月29日の閣議後の記者会見で、野村哲郎農相は、現物市場の消費者への影響を問われ、「売る側と買う側の両者が入っているなかで検討されるので透明性・公平性があり、消費者にとって納得のいく価格に設定されるのではないか」と期待を語った[36]

農水省は、2023年3月24日に開かれた自民党の総合農林政策調査会・農林部会合同会議でコメの現物市場について報告し、水稲や野菜の栽培を手がける農業法人の「ぶった農産」(石川県野々市市)が新たに開設の意向を示したと発表した[31][37]。「みらい米市場」を運営する流通経済研究所と「グリーンフードテックマーケット」を運営するぶった農産が、それぞれ具体的な事業運営⽅法や価格指標の公表方法を開⽰した[31][37]

農水省は、現物市場の創設に向けて、米の生産者・集荷団体・卸売業者による「情報共有の場」として「米産業活性化のための意見交換」を開始した[38]。また、将来の米価を把握するための方法について、生産者・集荷業者・卸売業者・実需者の目線で勉強する「米の将来価格に関する実務者勉強会」を開始した[39]。2023年8月2日の第1回「米の将来価格に関する実務者勉強会」[39]と8月9日の第3回「米産業活性化のための意見交換」[38]では、ぶった農産の佛田利弘社長が「グリーンフードテックマーケット」[40]について、流通経済研究所の折笠俊輔主席研究員[41]が「みらい米市場」[42]について、それぞれ説明した。

大手コメ卸の神明(東京都中央区)、東京商品取引所、堂島取引所、SBIホールディングスなど16社の出資を受け、流通経済研究所は「みらい米市場」を運営する「みらい米市場株式会社」(東京都新宿区)を2023年8月10日に設立し[43][44][45][46][47]、10月16日に市場を開設した[45][47][48]。最大の売り手としてホクレン農業協同組合連合会北海道札幌市)が参加し[44][48]、10月18日にオンライン市場に出品する道内の11生産部会とコメ15種類を公表した[49]

また、ぶった農産と田仲農場(茨城県稲敷市)は、「グリーンフードテックマーケット」の運営会社として「農場(のうば)」(石川県野々市市)を10月12日に設立し、12月以降に取引を始めると発表した[50][51][52]

コメ現物市場の取引が活発になれば、天候などによる価格変動リスクをヘッジできる先物取引のニーズが高まることが予想される。このため、コメ先物の再上場を目指す堂島取引所は、独自に「コメ先物の市場開設に係る有識者会議」を開催し、11月28日の初会合にプレゼンターとして「みらい米市場」の折笠社長を招いた[53]。当業者の意見を取り入れた商品設計を行って本上場を申請する準備を始めた[53]

農水省は、2024年1月30日に「コメの将来価格に関する実務者勉強会」のとりまとめ[54]を公表した[53]。勉強会では、国産米の安定的な取引を持続するためには、需要に応じた生産や事前契約の拡大に継続して取り組み、供給側で再生産可能な米価を確保する重要性が指摘された[54]。将来価格を予め決めることは、先を見通した経営や需要に応じた生産の実現に寄与する[54]。予め取引価格を決められる取引形態は3種類あり、現時点で行われている「現物先渡相対取引」(事前契約取引)と現時点では行われていない「現物市場先渡取引」及び「先物市場取引」がある[54]。これらの取引形態を組み合わせて活用すれば、各事業者が将来の価格変動に対するリスク抑制を行う場合の選択肢が広がることが期待されると記している[53][54]。新たな現物市場として「みらい米市場」や「グリーンフードテックマーケット」が開設され、市場取引が拡大している[54]。今後、将来価格を決めることができる取引の選択肢が増え、関係者がそれぞれの事情に応じ活用するようになることが重要であるとまとめている[54]

堂島取引所は、2024年2月3日までに株主に対して臨時株主総会を開催する旨を通知した[55][56]市場価格から算出する米価指数先物の上場に向け、2月下旬にも農林水産省と経済産業省に認可申請する方針を固めたことが明らかになった[55][56]。認められれば8月にも取引を開始する[56]。指数の算出手法は有識者による検討委員会で詰めており、3月末までにまとめる方針だと報じられた[56]

その他

米の生産(稲作)には病害虫の防除や稲の生長のため、殺菌剤、殺虫剤、除草剤など各種の農薬が使用される。農薬については玄米中への残留農薬の基準がある。

  • プロクロラズ(殺菌剤)
  • ヒドロキシィソキサゾール(殺菌剤)[57][58]
  • フィプロニル(殺虫剤)
  • ベンスルフロンメチル(殺菌剤)
  • メフェナセット(除草剤)
  • ベンタゾン(除草剤)
  • ピロキロン(殺菌剤)
  • ジノテフラン(殺虫剤)
  • エトフェンプロックス(殺虫剤)

注釈

  1. ^ その後、価格の安定を受け生産額は、2018年(平成30年)には1兆7,416億円(年間生産量約778万トン)程度まで回復。
  2. ^ 理由として、この地域の圃場開発が進んだこともあるが、江浙地域が綿花養蚕用のなど商品作物の栽培に転換したことも大きい。
  3. ^ デンプン糖類が結合した巨大分子でそのままでは栄養として吸収できない。水と一緒に加熱することで小さなに分解され、栄養として吸収されやすくなり、食感もよくなる。
  4. ^ 「舂く」の字は「春」とは異なる。

出典

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