着差 (競馬)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/15 09:39 UTC 版)
概要
平地競走や障害競走などでは、伝統的にゴールの差を時間では表示しない。元来、競馬は到達時間を争うものではなく到達順位を競うものであり、ひとつの競走に参加している競走馬に序列をつけるのは到達順位で事足りる。時間の計測が必要になるのは、その競走に参加していない別の馬との比較が求められる場合である。
サラブレッドの全力疾走は時速70キロ (km/h)[1]に達し、10分の1秒で 2 mほど進む。接戦となった場合、目視による差が10 cmであったとすると時間に直すと1000分の5秒 (5ミリ秒 (ms))ほどである。17世紀から18世紀に現在の競馬のスタイルが確立されたころには、まだ100分の1秒 (10ミリ秒 (ms))、1000分の1秒 (1ミリ秒 (ms))を精確に計測する手段がなかった。このため目視によって計測がなされ、馬の体を基準に差を表示する方法が定着した。
20世紀の前半に目視に変わって写真判定が採用され、時計の測定技術も進歩したにもかかわらず現在もゴールの差を表示する場合は馬の体が基準となり時間によっては表さない。日本では10分の1秒での計測が公式なものであり、公式なタイムは一緒であっても場合によっては 1 m前後の差が発生する。1位馬と最下位馬のタイムは精確に計測されているがそれ以外の着順の馬の公式タイムは計測によるものではなく、写真に基づいた計算値である。
競馬は技術の進歩を受け入れないわけではなく、調教時の走破タイムの測定にはレーザーによる測定が用いられている。2016年の天皇賞の1・2着馬の着差 4 cm[2]、同年の日本ダービーの1・2着馬の着差 8 cm[3]のように、数センチの差で決着するケースも多々ある。
一方でばんえい競走では着差は用いられず、全てを走破時間で表示する。ばんえい競走ではそりの最後端が決勝線を通過した際にゴールとなるが走路上および決勝線で競走馬が息を入れるために止まってしまうため、馬の体を基準に他馬との到着順位をつけることができないからである。
- ^ 上がり3ハロン36.0秒が60 km/h, 32.0秒が67.5 km/hに相当する。
- ^ “天皇賞・春、キタサンブラック差し返す サブちゃん熱唱”. 産経新聞フォト. (2016年5月1日) 2016年5月3日閲覧。
- ^ “【日本ダービー】マカヒキ8センチ鼻差で世代頂点に!川田が泣いた”. スポーツニッポン. (2016年5月30日) 2017年3月1日閲覧。
- ^ ポンド (lb)は0.454 kgに相当する。
- ^ 世界ランク日本馬ワンツー、最大の要因は着差 SANSPO.COM、2023年7月26日閲覧
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