原子層堆積
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/13 14:12 UTC 版)
長所と限界
長所
ALDは原子層レベルで膜厚の厳密なコントロールができる。また、異なる材料の複層構造も比較的容易に成膜できる。反応性の高さと精密さから、マイクロエレクトロニクスやナノテクノロジーのような、微細かつ効率的な半導体分野に極めて有用である。ALDは通常、比較的低温プロセスで運用されるため、生体サンプルのような脆弱な基板を用いるときに有用であり、熱分解しやすいプリカーサを使用する際にもメリットとなる。付き回り性に優れるため、粉末や複雑構造の形状物へも適用しやすい。
短所
ALD工程は非常に時間がかかることが主な制約条件として知られている。たとえば酸化アルミの成膜はサイクルあたり0.11nm、時間当たりの標準的な成膜量は100~300nmである。ALDは通常マイクロエレクトロニクスやナノテクノロジー向けの基板製造に使われるため、厚膜形成は必要とされない。一般的にμmオーダーの膜厚が必要とされる場合には、ALD工程は成膜時間の面から難しいとされる。また材料的な制約として、プリカーサは揮発性でなくてはならない。かつ成膜対象物がプリカーサ分子の化学吸着に必要な熱ストレスに耐えられる必要がある。
ALDの派生技術
PEALD
プラズマALD(Plasma Enhanced ALD)。成膜にプラズマを援用することで、成膜をより低温で行える等のメリットがある。
MLD
分子層堆積法(Molecular Layer Deposition)。有機物ポリマーを膜材料とした成膜をALDプロセスで行う。超格子の製造などに使われる。
VPI
気相浸透法(Vapor Phase Infiltration)。有機ポリマーや繊維の奥までプリカーサを浸透させることで有機無機ハイブリッド材料を作る。
参考文献
- Puurunen, Riika L. (2014-12-01). "A Short History of Atomic Layer Deposition: Tuomo Suntola's Atomic Layer Epitaxy". Chemical Vapor Deposition. 20 (10-11-12): 332-344. doi: 10.1002/cvde.201402012. ISSN 1521-3862.
- Julien Bachmann (Ed.) (2018)『ALD(原子層堆積)によるエネルギー変換デバイス』廣瀬千秋訳, 株式会社エヌ・ティー・エス.
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