代金引換郵便詐欺 概要

代金引換郵便詐欺

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/04 05:20 UTC 版)

概要

詐欺の構図

詐欺を仕掛ける側の立場では、無価値な物品、例えば、紙切れ一片を封筒に入れて、代金引換郵便で任意の相手に送付する。そして、相手が、自身で注文した物かもしれないという曖昧な記憶のまま、または知人からの届け物かもしれないと錯誤したり、何も考えず漫然と、何の疑いもなく素直に、その他理由の有無や内容を問わず、なんにせよ受け取って代金を支払ってくれることを期待する。あるいは、宛名人の家族が何の疑いなく代金を立て替えて受け取ることを期待する。このようにして、無価値な物と引き換えに「商品代金」を支払わせ詐取すると言う構図である。

一方で、このような郵便物を送付された側である被害者の立場では、代金を支払う前には内容物を確認する事が出来ず、支払って開封してから注文していない物、到底対価に見合わない物である事を知り詐欺である事に気付く。あるいは、代わりに受け取った家族が宛名人本人に郵便物を渡して立て替え代金を求めたところで、心当たりのない物品の対価を詐取されたと気付き、家庭内不和の原因となりうる。

そして、一度代金を支払うと、これは詐欺であると被害者が主張しても、制度上郵便局から返金はできず、郵送・配達・取引を取り消して代金を取り戻すことはできない。また、裁判所の令状が無い限り郵便局は差出人についての情報を開示することがない。そもそも、日本郵便では2014年10月31日に代金引換サービスにおける本人確認を開始する以前は、何ら差出人の確認を行っていなかった。

これらの事情から、詐欺を仕掛ける側の立場では、任意の相手に対して、自身の氏素性を隠蔽し追及されるリスクなく郵便局員に代金回収を担わせ安全かつ確実に「商品代金」を入手できる。一方で、無価値な郵便物に代金を支払ってしまった被害者の立場では送付状や郵便物に表示されている住所・氏名などのほかに追及の手段が乏しく「商品代金」を取り戻すのは事実上不可能である。

詐欺を仕掛ける側は、例えば紙一片に金一万円の商品代金を表示して、名簿業者等から入手した住所・氏名リスト等をもとに不特定多数に送付し、その中でうっかり支払ってくれる者が一定数いれば、郵便物作成や郵送費用等の全体総額を差し引いても十分に利益を揚げられる。一方で支払ってしまった側は、取り戻す為には差出人の調査費用、訴訟費用といった諸経費が嵩んで容易に損害金額一万円を越えてしまうので損得勘定で言えば実質上なにも手出しできず泣き寝入りを強いられる。このため、差出人即ち詐欺を働く側が追及され返金を迫られることはまずなく、安全に回収された代金を懐に入れることができる。

類似の手口

代金引換郵便詐欺と類似の手口としてはネガティブ・オプション架空請求詐欺オークション詐欺特殊詐欺がある。

ネガティブ・オプションは、任意の相手に対して注文していない物品を送りつけたうえで、業者の主張する条件の下で購入契約の成立を主張して爾後代金を要求する。架空請求詐欺は任意の相手に対して、使用していないサービスや購入していない物品の債務があると主張し、根拠の無い対価を要求する。いずれも、何らかの連絡手段で接触して手練手管を弄して被害者に代金支払いを迫るが、適切な対応をする、或いは無視することで支払いを抑制できる。その点では、郵便局員の手を介して「商品」と引き換えに直ちに代金を詐取できる代金引換郵便詐欺とは異なる。

オークション詐欺の中でも取引や決済に代金引換郵便を悪用する場合があり、その場合には、注文した物と異なる、或いは商品価値の無いものを送りつけて代金を詐取する。この場合も、詐欺のきっかけとしてオークションの取引が存在する点で、何らの前触れも無く送りつけてくる代金引換郵便詐欺とは異なる。また、オークション仲介業者にクレームを入れることで取引中止等をして支払いを免れることができる点が、得体のしれない商品と引き換えに問答無用で代金を支払わせる代金引換郵便詐欺と異なる。

事例

以下の様な物品を送付し、数千円~数万円の代金を詐取する。

  • 衛生マスク
  • 消毒液
  • 体温計

また、以下の様な事例がある。

2006年春に、開催日時と場所の記されていない「ディナーショーチケット」2枚が、2万円弱の値段で配達された事例が多数確認されている。ネット上に報告された配達事例より、複数の通信販売業者より流出した顧客名簿を用いて発送した可能性が指摘されている。

また、「個人情報抹消のお知らせ」の名目で、数万円の代金引換郵便を後送するので代金と引き換えに手続き書類を受け取るように連絡する場合もある[1][2]

2023年(令和5年)には、Amazonのマーケットプレイスと組み合わせた手口が確認されている。顧客が通販で注文を行ったところで、販売業者が注文をキャンセルし、クレジットカード等で決済済みなら返金処理する。これと平行して、都合で代金引換郵便に変更すると案内し、注文とは異なる廉価な物品(例:大人のおもちゃ)に本来の商品と同じ代引金額を表示して代金引換郵便で送付し、対価に見合わぬものを受け取らせて代金をせしめる。直接別の商品を送付すれば通販上の規約に違反し顧客からクレームがつけば決済不能となって代金を回収できずペナルティを蒙っていずれ取引停止となるが、この手口では通販システム上は飽くまでも取引がキャンセルされており以後の取引にも影響が及ばない。一方で顧客の立場では注文した物品が届くという期待とその代金金額の記憶があるのにつけこみ、決済方法が変更されたが商品が確かに届けられたと錯誤させて代金を支払わせ安全且つ確実に回収することを狙う。なお、通販システムの立場では、飽くまでもキャンセルされた取引であり、爾後は販売業者と顧客との間のトラブルにしか過ぎず、当然顧客が蒙った被害について関知しない。




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