ローマクラブ 今日までの略史

ローマクラブ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/08 14:21 UTC 版)

今日までの略史

ペッチェイが依頼したMITグループによるシミュレーションモデルの分析結果は、1972年に「成長の限界(The Limit to Growth)」として世に出され、30カ国語以上に訳され、160万部以上が出版され、世界中で読まれた。

このデニス・メドウズらによる第1号レポート「成長の限界」では、(今後、技術革新が全くないと仮定すると。=日本語では削除)現在のままで人口増加や環境破壊が続けば、資源の枯渇(あと20年で石油が枯渇する)や環境の悪化によって100年以内に人類の成長は限界に達すると警鐘を鳴らしており、破局を回避するためには地球が無限であるということを前提とした従来の経済のあり方を見直し、世界的な均衡を目指す必要があると論じている。団体として1973年にドイツ書籍協会平和賞を受賞した。

しかし、地球環境問題に関して、ローマクラブはNPOであり、世界の市民に訴えることはできても、各国政府を行動させることは困難であった。そこで、拘束力を持たせるために国連に対して対応する委員会を設置するように働きかけたのが、草創期のフルメンバーであり執行委員会(Executive Committee)メンバーでもあった大来佐武郎であった。手続きとしては、日本政府が国連に対して、「環境と経済」に関する委員会の設置を提案。これが採択されて、ノルウェー元首相のグロ・ハーレム・ブルントラントが委員長になって1984年に「環境と開発に関する世界委員会」(World Commission on Environment and Development, WCED)が設立され、ブルントラント委員会と呼ばれるようになり、その報告書「われら共通の未来(Our Common Future)」において「持続可能な開発(Sustainable Development)」の概念が打ち出された。このような、人類の重要課題に対して世界を動かしたのが日本人フルメンバーの大来佐武郎であり、中曽根首相も賛同して1987年に同委員会がレポートOur Common Futureとして取りまとめる会議を日本に招いた。このように、当時の地球規模課題に対する日本の貢献は大きかった[要出典]

デニス・メドウズの主張を、普通に解釈すると、技術革新が有ると石油は無尽蔵にある、成長の限界は無いと言える。しかし、政治利用され、デニス・メドウズの主張は無視されてきた。続編『限界を超えて-生きるための選択』(1992年)では、資源採取や環境汚染の行き過ぎによって21世紀前半に破局が訪れるという、更に悪化したシナリオが提示されている。ローマクラブでは、各会員によって環境・情報・経済・教育などをテーマとした活発な活動が展開され、その成果が各会員またはその研究グループの著書として引き続き刊行され、今日までに40余がローマクラブレポートとして認定されている。

その中で、エルンスト・フォン・ワイツゼッカーが主著者として、気候変動締約国京都会議(COP3)の前に出版された「ファクター4(Factor 4)」は、第1レポート「成長の限界」が人類の危機を訴えたのに対して、経済的豊かさを2倍にしつつ、資源消費を半減させること(Factor 4)により、持続不可能な地球を持続可能な軌道に導く指針を分かり易く示した画期的なレポートであった。

その後、「世界発展のための新しい道」として環境問題など五つの分野で提言を行なっている。2007年には、OECD欧州議会WWFと共同で「Beyond GDP」という会議が開催され、進歩と富と幸福を計る尺度について議論が交わされた。2008年11月にはローマクラブ創設40周年の会議がスイスで開催され、スイスの氷河の後退など地球温暖化の脅威に関する報告などがあった。

「ファクター4」の続編「ファクター5」(ドイツ語版:2011年刊、日本語版:明石書店2014年刊)では、「ファクター4」を更に進めて、豊かさは経済(GDP)ではなくQOLであるとし、Efficiency(経済vs資源効率)からSufficiency(少ない資源消費で「足るを知る」)へのパラダイム転換を訴えている。「ファクター4」は単独技術に基づく提案であったが、ここでは、技術をシステムとして捉え直している。地球上の70億人全員が現在のアメリカ人と同レベルの資源消費性向を持てば、地球が5つ必要となる。しかし、現存技術を使った省エネをシステマティックに組み合わせて実施することで、人類の現在の生活の質の低下をさせることなくエネルギーと資源の消費を1/5にする事が可能であることを、具体的な実例をあげて説明している。そして、これまでその実現を阻んで来たもの、つまり既得権益、新自由主義の考え方などをどのように克服してゆくべきかも提案している。

ローマクラブ創設から半世紀が経ち、人類は新たな段階(人新世 Anthropocene)に入った。世界では際限ない都市化とライフスタイル変化、その要求に伴う過剰な開墾、生産活動によって、地球1個の再生産能力を上回って資源を使い尽くすオーバーシュート問題、気候変動に伴う極端気象、飽食と飢餓、空前の富と貧困の格差など、様々な問題が次々と噴出した。 2017年12月に、最新レポート”Come on – Capitalism, Short-termism, Population and the Destruction of the Planet”(英語版、Springer)、”Wir sind Dran”(ドイツ語版、Gutes Loher Verlags Haus)が刊行された。「成長の限界」から半世紀を経て今日生じてきた、これらの状況を網羅的に書き込んだ包括的書物で、フォン・ワイツゼッカーとワイクマンが編著者となって、主要フルメンバー35名を著者として結集したローマクラブ初の企画であり、「成長の限界」に対応する50周年記念レポートである。現在各国語に訳されており、日本語版は2019年12月に"Come On!目を覚そう! -環境危機を迎えた「人新世」をどう生きるか?"(明石書店)として出版されている。


  1. ^ a b c d e f g Honorary Members”. THE CLUB OF ROME. 2019年5月6日閲覧。
  2. ^ a b c Honorary Members”. THE CLUB OF ROME. 2019年5月6日閲覧。
  3. ^ Members” (英語). Club of Rome. 2021年2月24日閲覧。
  4. ^ Japanese Association of the Club of Rome officially launched • Club of Rome


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