ヤナギ 人の利用

ヤナギ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/16 21:48 UTC 版)

人の利用

文化

  • 空海が中国を訪れていた時代には、長安では旅立つ人に柳の枝を折って手渡し送る習慣があった。この文化は、漢詩などにも広く詠まれ、王維の有名な送別詩「元二の安西に使するを送る」においても背景になっている。「客舎青青 柳色新たなり」の句について、勝部孝三は、「柳」と「留」(どちらも音はリウ)が通じることから、柳の枝を環にしたものを渡すことが、当時中国において、旅人への餞の慣習であったと解説している。「還」と「環」(どちらも音はホワン)が通じて、また帰ってくることを願う意味が込められているわけである[6]
  • 歯磨き用の歯木として用いられた。多くの種が歯木として使用されたが、中国や日本では楊柳(カワヤナギ)の枝から作ったことから、楊枝(ようじ)と呼ばれた。そこから歯を掃除するための爪楊枝や、歯ブラシとしての房楊枝となった。
  • 英語の「WEEPING WILLOW」は泣いているやなぎと訳せる。イスラエル人は、柳を竪琴につるし、故郷のパレスチナの山々を思い出しながら自分たちの受難を嘆いたという(バビロン捕囚旧約聖書詩編137)。そこからこの名前になった。またシダレヤナギの学名Salix babylonicaと、コトカケヤナギの名もこれにちなんでいる。
  • 柳は解熱鎮痛薬として古くから用いられてきた歴史がある。シュメール時代の粘土板には疼痛の薬として記述され、エジプト人はヤナギの葉から作られたポーションを痛み止めとして使用した[7]。日本でも「柳で作った楊枝を使うと歯がうずかない」と言われ沈痛作用について伝承されていた。19世紀には生理活性物質サリシンが柳から分離され、より薬効が高いサリチル酸を得る方法が発見されている。その後アスピリンも合成された。現在では、サリシンは体内でサリチル酸に代謝される[8]ことがわかっている。また、葉には多量のビタミンCが含まれている。
  • 植栽木として、川や池の周りに植えられた実績があり、先人が考えた水害防止対策といえる。これは柳が湿潤を好み、強靭なしかもよく張った根を持つこと、また倒れて埋没しても再び発芽してくる逞しい生命力に注目したことによる。時代劇に出てくるお堀端の「しだれ柳」の楚々とした風情は、怪談ばなしに、つきものとなった。
  • 古く奈良時代以前から奈伎良(ナギラ)とも呼ばれた。
  • 柳の枝を生糸で編んで作った箱を柳筥(やないばこ)と言い神道では重要な神具である。柳筥に神鏡を納めたり、また柳筥に短冊を乗せたりもするもので、奈良時代から皇室や神社で使用され続けている[9]
  • 花札では11月の絵柄として、「柳に小野道風」、「柳に」、「柳に短冊」、カス(鬼札)が描かれる。

土木工事への利用

挿し木で容易に増えることから、治山などの土留工、伏工ではヤナギの木杭や止め釘を用い、緑化を進める基礎とすることがある。


  1. ^ a b c d e 辻井達一『日本の樹木』中央公論社〈中公新書〉、1995年4月25日、58頁。ISBN 4-12-101238-0 
  2. ^ 漫天柳絮的春天,请小心过敏”. 2023年4月11日閲覧。
  3. ^ a b ネコヤナギ(猫柳)”. 株式会社宮城環境保全研究所. 2016年3月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年2月29日閲覧。
  4. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList) - Salix(2011年9月4日閲覧)
  5. ^ Weeds of National Significance (WoNS) 南オーストラリア政府
  6. ^ 勝部孝三『桃源詩話』国文社, 1987年11月25日初版, pp.21‐22
  7. ^ An aspirin a day keeps the doctor at bay: The world's first blockbuster drug is a hundred years old this week”. ノーベル財団. 2021年11月19日閲覧。
  8. ^ “Biosynthesis and metabolism of β-d-salicin: A novel molecule that exerts biological function in humans and plants”. Biotechnology Reports 4. (2014). doi:10.1016/j.btre.2014.08.005. PMID 28626665. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5466123/. 
  9. ^ 神社本庁『神社有職故実』1951年7月15日発行全129頁中24頁






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