マンホールの蓋 構造

マンホールの蓋

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/19 09:44 UTC 版)

構造

要求性能

マンホールの蓋は上を通過する歩行者や車両に対して安全性があり、がたつきや騒音が小さく安定性を持つことが最も重要なことである[20]。そのほか、通常で要求される性能として路面に対する凹凸や枠・蓋との間隙が小さい、適度な摩擦がありスリップしづらい、舗装を傷める原因とはならず道路工事で支障にならないようにすることが求められる[21]。道路管理者が求める性能として、長寿命で価格が低廉なもの、取り扱いのしやすいものが項目として挙げられる[21]。また、作業時に必要な開口面積が十分あることも必要である[21]。電気関係のマンホールであれば雨水の浸入を防止する必要がある[21]

蓋の固定方法

蓋の固定方法は、蓋の下部で受枠が直接支える「平受方式」と、蓋外周と受枠内周がくさび効果で傾斜した接触面でかみ合うことで蓋が受枠に食い込む「勾配受方式」の2種類に分けられる[22]。日本国内では1960年代頃までは平受構造が一般的であったが、車両通過時に動きやすく、蓋と受枠の接触面が摩耗することでがたつきが発生しやすい問題があった[23]。そのため、勾配受方式が開発され、勾配角度の改良を経てがたつき軽減に至った[23]

部材

蓋には通常、かぎ型のバールキーと呼ばれる工具を挿入して引き開けるための「摘み穴」もしくは「不法開放防止を目的とした鍵」が備えられている。専用のマンホールバールキーは特にこうした穴・鍵に引っかける目的で製造されている。

マンホールの蓋に十分な強度を持たせるためには、裏面(地上から見えない面)にリブ材を取り付けられる[24]

形状

イタリアローマにある四角い排水口の蓋。SPQRの文字が見える。

マンホールの蓋には円形と角形がある[1]

円形が多く採用される理由を問う出題は、外資系の戦略コンサルティング会社[25]世界的IT企業の発想力を問う入社問題として広く知れ渡っていると言われ[26]、以下が指摘されている。

  • 円は定幅図形であるため、蓋がずれても穴に落ちてしまうことがないから[7]
  • 自動車などの重い物が載った時でも、圧力が分散されて割れにくいため。また、もし蓋が外れた場合でも、他の形のマンホールであれば、鋭い角の部分が後に通過する他の自動車のタイヤをパンクさせてしまう恐れがあるが、丸い形には角が無いため[27]
  • 円筒状の穴は掘るのが容易であり、マンホール開口部の丸い形状は、それを囲む地面の圧力に対して最も効率的な形状であるため、その丸い開口部の蓋が丸い様相を帯びるのは自然であるから[26]
  • 丸型の蓋は丸いマンホール穴に対して、うまくはまるように回転させる必要が無いから[28]
  • 丸い形状なら簡単に転がして移動できるから[28]
  • 文化的理由[26]

など、様々なものがあるが、明確な理由はない。

排水口を兼ねた蓋は丸い形状のものもあるが、長方形(四角形)が一般的となっている[29]

大型機械の出入り口となる大きな蓋の中に人の出入り口となる小さな蓋の二重円形の蓋もある[5]


注釈

  1. ^ マンホールのふた(日本篇)、マンホールの蓋(ヨーロッパ篇)の2冊を上梓。
  2. ^ 日本土木工業協会刊行 建設業界誌に連載のエッセイで歴史的マンホール蓋について詳細に記述。
  3. ^ 北海道庁函館支庁1899年(明治32年)発行 函館港改良工事報文に掲載の図面に描かれた物と同一の蓋が図面と同位置に現存。

出典

  1. ^ a b 意匠分類定義カード (L2)” (PDF). 特許庁. 2016年10月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年10月29日閲覧。
  2. ^ 山方三郎 2010, p. 18.
  3. ^ 小峯龍男 2021, p. 69.
  4. ^ 杉伸太郎 2018, p. 75.
  5. ^ a b c d 三土たつお 2016, p. 51.
  6. ^ 日本グラウンドマンホール工業会 2021, 1.
  7. ^ a b c 身もフタもある ご当地マンホール”. 2013年5月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年4月8日閲覧。
  8. ^ 三土たつお 2016, p. 57.
  9. ^ a b 石川成昭 2018, p. 1.
  10. ^ 関根康生 2013, p. 200.
  11. ^ 平成10年の高知豪雨水害”. 四国災害アーカイブス. 一般社団法人 四国クリエイト協会. 2018年6月21日閲覧。
  12. ^ [1][リンク切れ] 日本下水道協会規格(JSWAS) 下水道用鋳鉄製マンホールふた(G-4)
  13. ^ 三土たつお 2016, p. 55.
  14. ^ APEC警備本格化 横浜でマンホール2000カ所封印『日本経済新聞』2010年11月7日(2017年11月18日閲覧)
  15. ^ Brian Long 2008, p. 172.
  16. ^ F1ニュース速報/解説【Formula1-Data】 2019, p. 1.
  17. ^ List of Myths and Summaries 2013, p. 2.
  18. ^ F1 - Number Web - ナンバー 2019, p. 1.
  19. ^ C・キャシディー, P・ドハティー & 梶山あゆみ 2021, p. 19.
  20. ^ 伊藤哲男 1967, pp. 14–15.
  21. ^ a b c d 伊藤哲男 1967, p. 14.
  22. ^ 下水道マンホール緊急対策委員会 1999, p. 2.
  23. ^ a b 杉伸太郎 2018, p. 76.
  24. ^ 伊藤哲男 1967, p. 34.
  25. ^ 大石哲之 2009, p. 5.
  26. ^ a b c 中谷充宏 2012, p. 200.
  27. ^ 大石哲之 2009, p. 161.
  28. ^ a b 高濱正伸 2014, p. 102.
  29. ^ 大石哲之 2009, p. 162.
  30. ^ 三土たつお 2016, p. 54.
  31. ^ 正木信太郎 et al. 2021, p. 143.
  32. ^ マンホールふた45点 県庁で展示”. 2017年9月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年9月4日閲覧。
  33. ^ 地域の魅力を映す「デザインマンホール蓋」、下水道への理解促進へ「マンホールサミット」、岡山・倉敷で18日開催”. 2019年5月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年11月17日閲覧。
  34. ^ 愛知県流域下水道のマンホール蓋の新デザインを決定しました!愛知県下水道課(2017年10月30日)2018年2月5日閲覧
  35. ^ アニメ「ラブライブ!」マンホールに 舞台の沼津市設置へ静岡新聞NEWS(2018年1月20日)2018年2月5日閲覧。[リンク切れ]
  36. ^ マンホールふた販売で注目 前橋市、申し込み殺到”. 2017年11月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年11月7日閲覧。
  37. ^ 日本底辺教育調査会 2012, p. 146.
  38. ^ 五條警察署 2008, p. 13.
  39. ^ マンホールのふた 300万個老朽化の恐れ 耐用年数超過『日本経済新聞』朝刊2018年1月8日(社会面)
  40. ^ a b “マンホールのふた、23年ぶりに規格改正。集中豪雨・老朽化に対処”. 日刊工業新聞. (2018年12月5日). https://newswitch.jp/p/15512 2018年12月6日閲覧。 
  41. ^ 伊藤 (1967), pp. 72–78.
  42. ^ 林 (1984), pp. 176–177.
  43. ^ a b c d e 杉伸太郎 2018, p. 77.
  44. ^ a b c 林 (1984), pp. 177–178.
  45. ^ 林 (1984), p. 45.
  46. ^ 中島工学博士記念事業会 (1927), pp. 727–769.
  47. ^ 中島工学博士記念事業会 (1927), pp. 789–800.
  48. ^ “マンホール「ドイツ蓋」撤去 浜松市保管へ 国内で唯一現存”. 静岡新聞. (2023年8月15日). https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/1297751.html 2023年8月15日閲覧。 
  49. ^ a b 林 (1984), p. 63.
  50. ^ 栃木県/マンホールの蓋ができるまで”. 栃木県下水道管理事務所. 2023年6月24日閲覧。





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