バリー (犬)
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後世への影響
サン・ベルナール修道院ではバリーを記念して、必ず一頭のセント・バーナードにはバリーという名前をつけている[16]。バリーが活動していた時代には、バリーのタイプの犬には犬種として確立した名前がなかった。バリーの死から6年後の1820年まで、バリーはアルペン・マスチフ (en:Alpine Mastiff) と呼ばれたり[7]、アルペン・スパニエル (en:Alpine Spaniel) と呼ばれたりしていた[17]。イングランドでは「聖なる犬 (sacred dogs )」とも呼ばたこともあり、1828年にはドイツのケネルクラブが「アルペンドッグ」という名称を提案している。バリーが余生を過ごしたベルンでは、その死後から1860年になるまで、同じタイプの犬をバリーにちなんで「バリー・フンド(バリー犬)」と名づけていた[18]。最初にセント・バーナード(サン・ベルナールの英語読み)という名称が与えられたのは1865年だった[18][19]。そして1880年にスイスのケネルクラブがセント・バーナードという名称でこの犬種を公認したのである[20]。
ベルン自然史博物館は、バリーが世界でもっとも有名なセント・バーナードだとしている。バリーは死後に毛皮が剥製となってベルン自然史博物館に収蔵され[5]、毛皮以外は埋葬された[21]。剥製にされた当初は現在のものとは異なり、頭を下げた穏やかで人に従順なポーズのものだった。その後剥製の毛皮が劣化し20以上の細片となってしまい、1923年にゲオルグ・ルプレヒトの手によって修復された。修復の過程でポーズが当初のものから変更され、ルプレヒトと博物館館長の話し合いの結果、頭部の形も当時のセント・バーナードにあわせて修正されている。もともとのバリーの頭部はストップ(鼻と額の間のくぼみ、額段)がより平坦だったが、修正後には頭部が大きくなり、ストップも明確になっている。動物画家として有名なエドウィン・ランドシーアの絵画『瀕死の旅人を救助するアルペン・マスチフ (Alpine Mastiffs Reanimating a Distressed Traveller)』で最初に紹介された[22]、修道院での救助活動中に首輪に吊り下げていたとする神話ともいえる小さな樽が追加された[5]。この樽は1978年に博物館館長のワルター・フーベル教授が取り除いたが、現在では再び追加されている[23]。バリーの記念碑はパリ近郊の動物霊園シムティエール・デ・シヤン入り口の反対側に位置している[24]。
文学作品などでは、サミュエル・ロジャースの詩『サン・ベルナール修道院 (The Great Saint Bernard )』にバリーが登場する[25][26]。フランス人作家アンリ・ボルドー (en:Henry Bordeaux) が1911年に書いた小説『La Neige sur les pas 』ではバリーの業績を賞賛している[10]。ウォルト・ディズニー・カンパニーが1977年に『サン・ベルナール修道院のバリー (Barry of the Great St. Bernard )』という題名のテレビ番組を制作しており[27]、他にもランダムハウスの少年少女向けシリーズからは『バリー、サン・ベルナールの勇者 (Barry: The Bravest Saint Bernard )』が2007年に出版されている[28]。
2004年9月にはサン・ベルナール修道院で18頭のセント・バーナードが飼育されていた。サン・ベルナール修道院バリー財団は山の麓のマルティニ地方 (en:Martigny) に、修道院のセント・バーナード繁殖用犬舎を設立し、年間20頭ほどの仔犬が生まれている。2009年にマルティニにドッグ・ミュージアムが建てられ、開館を記念してベルン自然史博物館からバリーの剥製が貸与された[29]。毎年夏に修道院は犬を連れた旅行者に修道院を開放しており、現在では遭難者捜索にヘリコプターが使用されているが、山で昔ながらの犬を使った捜索を体験することが出来る[20]。
なお、東京消防庁の特別救助隊や消防救助機動部隊(ハイパーレスキュー)ではバリーが描かれたワッペンを救助工作車のドア側面と救助隊員の肩に付けている[30]。
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- ^ Fleischli (2006): p. 17
- ^ a b c d Fleischli (2006): p. 16
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- ^ Maurer, Urs (2009年4月9日). “Legendary St Bernard rescue dogs find a home”. swissinfo.ch 2011年3月22日閲覧。
- ^ 災害防除
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