ナス 歴史

ナス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/05 00:38 UTC 版)

歴史

原産地はインドの東部が有力とされ[13]、インドでは有史以前から栽培されていたと考えられている[8]。その後、ビルマを経由して中国へ5世紀ごろに渡ったと考えられており、多くの変異が生じていった[8]ヨーロッパへは13世紀に伝わったが、もともと熱帯植物であったため、あまり普及はしなかった[8]東南アジアでは古くから栽培されており、日本では見られないような赤、黄、緑、白などカラフルで、形や大きさも様々な物が市場に並ぶようになった[8]

日本には7世紀から8世紀ごろに中国から伝わり[14][15]奈良時代から食されていたといわれ[4]、東大寺正倉院の古文書で、「天平勝宝二年(750年)茄子進上」とあるのが日本最古の記録である[8]平城京長屋王邸宅跡から出土した木簡に『進物 加須津毛瓜 加須津韓奈須比』との記述があり、高位の者への進物にナスの粕漬けが使われていたことが判明した。また、正倉院文書には「天平六年(734年茄子十一斛、直一貫三百五十六文」をはじめとして多数の「茄子」の記述がみられる。平安時代中期に編纂された『延喜式』には、ナスの栽培方法の記載が見られる[16]。1600年ごろ、静岡県三保では地温があたたまる砂地を利用した日本初の促成栽培がナスで始まり、旬の早い「折戸なす」が徳川家康にも献上されたといわれる[16]。元は貴重な野菜であったが、江戸時代頃より広く栽培されるようになり、以降日本人にとってなじみのある庶民的な野菜となった[17]寛文年間(1661年 - 1673年)には江戸でも旬を先取りするナスの促成栽培が広がり[16]、『農業全書』(1697年)には「紫、白、青の三色あり、又丸きあり長きあり」の記述があり、江戸時代から多くの品種が栽培されていたことがうかがえる[14]。1918年(大正7年)、鹿児島県指宿で温泉ナスの栽培が始められ[16]、1924年(大正13年)に世界で最初の野菜のF1品種がナスで実用化され、埼玉県農業試験場の柿崎洋一が「浦和交配1号」「浦和交配2号」を育成し、農家から「柿崎ナス」とよばれた[18]。戦前の日本では、果菜類のなかで最も生産量が多いのがナスであったが、終戦後は生食できる野菜に抜かれた[19]。1961年(昭和36年)に誕生した「千両」は実の形と食味の良さからヒットし、1964年(昭和39年)にはさらに改良された「千両二号」がロングセラーとなった[18]


注釈

  1. ^ 卵型の白い果実が一般的だった地域の英語名が“eggplant”となっている。

出典

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Solanum melongena L. ナス(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年8月5日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 86.
  3. ^ a b c d e 貝津好孝 1995, p. 146.
  4. ^ a b c d e f g h i 主婦の友社編 2011, p. 24.
  5. ^ a b c d e f g h i j 小川正 (2016年7月20日). “湖国の食 ナス 多様な料理を楽しむ”. 中日新聞 (中日新聞社): p. 朝刊 びわこ版 17 
  6. ^ 加納喜光『動植物の漢字がわかる本』山海堂、2007年、182頁。ISBN 4-381-02200-9 
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  10. ^ a b c d e f g 田中孝治 1995, p. 198.
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  13. ^ 大久保 1995, p. 148.
  14. ^ a b c d e f g h i j k l m n 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 87.
  15. ^ a b c d 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 31.
  16. ^ a b c d e 竹下大学 2022, p. 80.
  17. ^ 武光誠『歴史からうまれた日常語用語辞典』東京堂出版、1998年、230-231頁。ISBN 4-490-10486-3 
  18. ^ a b 竹下大学 2022, p. 81.
  19. ^ 大竹大学 2022, p. 81.
  20. ^ a b c d e f g h 主婦の友社編 2011, p. 28.
  21. ^ a b c d e f g h i 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 241.
  22. ^ a b c d e f g 板木利隆 2020, p. 22.
  23. ^ 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 36.
  24. ^ 板木利隆 2020, p. 23.
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  32. ^ 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 30.
  33. ^ 金沢市中央卸売市場>豆知識>青果雑学>なす
  34. ^ a b c d e f g h i j k l m 主婦の友社編 2011, p. 25.
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  52. ^ a b ナスのヘタに含まれる天然化合物、子宮頸がん細胞に抗腫瘍効果 名大”. 科学技術振興機構 (2024年1月5日). 2024年1月15日閲覧。
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  54. ^ 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 41.
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  58. ^ Çiğdem TEZ(チーダム・テズ)(著)、天野かよ 訳(編)「トルコの暮らしと食文化」『食品と容器』第57巻第1号、缶詰技術研究会、2016年、52-58頁。 
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  60. ^ Uses of Tropical Grain Legumes: Proceedings of a Consultants Meeting, 27-30 Mar 1989, ICRISAT Center, India. ICRISAT. (1991). pp. 108, 335. ISBN 978-92-9066-180-1. https://books.google.com/books?id=GNKzAAAAIAAJ 
  61. ^ 主婦の友社編 2011, p. 11.
  62. ^ 根田仁、毒きのこ類 森林科学 Vol.54 (2008) p.39-42, doi:10.11519/jjsk.54.0_39





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