ナス 品種

ナス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/05 00:38 UTC 版)

品種

品種は数が多く、産地によっても様々で、日本では概ね70種類ほどある[32]。世界では1000種類もあると言われている[33]

賀茂茄子などの一部、例外もあるが、日本においては南方ほど晩生の長実または大長実で、北方ほど早生の小実品種となる[15]。本州の中間地では中間的な中長品種が栽培されてきた。これは寒い地域では栽培期間が短く大きな実を収穫する事が難しい上に、冬季の保存食として小さい実のほうが漬物に加工しやすいからである。日本で一般に流通している品種は中長品種が中長ナスである[34]。日本で栽培される栽培品種のほとんどは果皮が紫色又は黒紫色である。しかしヨーロッパやアメリカ等では白[注 1]・黄緑色・明るい紫、さらに縞模様の品種も広く栽培される。

形状・色

  • 小丸ナス(小ナス) - 皮がやわらかく、種子が少ないのが特徴[34]。在来品種では、京都の椀ぎ(もぎ)、東北の民田(みんでん)、山形の出羽がある。
  • 丸ナス - 扁球形の果実は、皮がかためで果肉が緻密なのが特徴。煮崩れしにくく、田楽などに使われる。信越地方、関西。京野菜の賀茂なすがよく知られる[34]。トキタ種苗の「グリルでイタリア」[22]、家庭菜園向けのサントリー本気野菜シリーズの「とろとろ炒めナス」などもある[35]
収穫期の丸ナス。ヘタ部分にはトゲが有る。
  • 卵形ナス - 関東一円で多く出回る品種。代表種は「真黒」(しんくろ)で、現在は流通していない[36]
  • 千両ナス - 卵形ナスと中長ナスの交雑による改良品種。ヘタの近くまで濃い紫色になる。関東を中心に東日本で出回る[36]タキイ種苗が開発した「千両」とその改良種「千両二号」は、長卵形の好まれる形と黒くやわらかい果皮が好まれて、全国的なロングセラーとなった[37]
  • 中長ナス - 流通量が最も多い品種。皮・果肉ともやわらかく調理法を選ばず使える[34]サカタのタネが開発した「黒福」などがある[22]
  • 長ナス - 果実の長さが20 - 30 cmあり、果肉がやわらかいのが特徴。やや水分が多く、調理法は蒸したり、焼いたりしたり、塩揉みに向く[34]。代表品種の「黒陽」「PC筑陽」があるほか[37]、西日本の「津田長」「博多長」、東北の「仙台長」「南部長」などがある[36]。洋種では「ブルネット」など[36]。大長ナスでは、長さ30 - 40 cmになる「庄屋大長」(タキイ種苗)などが知られる[35]
  • 米ナス(べいなす、アメリカなす) - アメリカ品種ブラックビューティーを日本で改良した大型種で、ヘタが緑色なのが特徴。果肉は締まっていて、焼き物・炒め物・煮物などの加熱調理に向く[34][36]。「くろわし」などがある[37]
  • 巾着ナス - 丸ナスの一種で、小ぶりな丸く潰れた巾着型で、皮がやわらかく、果肉がしっかり詰まって固いのが特徴[2]。加熱しても煮崩れしにくく、煮物、揚げ物、漬物に使われる[8]。新潟・魚沼産の「長岡巾着」(中島巾着)がよく知られる[34][38]
  • 白ナス - 東南アジアの品種で、果実が真っ白になるナス。皮がややかたい[8]。アクが少なく、皮から色素が出ないため煮ると煮汁が黒くならない。「ホワイトベル」[38]「越後白ナス」などがある[14]
  • 白長ナス - 実が20 - 23 cmほどの大長タイプの白ナス。淡緑色でヘタが小さい。実は皮がかたいが果肉は柔らかく、焼き茄子などに使える[14][39]。「味しらかわ」(丸種種苗)などがある[40]
  • 緑ナス - 埼玉県などで栽培される緑色のナス。加熱すると身は柔らかくなり、焼き物、炒め物、揚げ物に向く[2]。長さ30 cmになる緑色の大長ナス「緑美」などもある[41]
  • ヘビナス - 長さ25 - 30 cm、太さ2 - 2.5 cmの細身な果実が特徴。果皮は濃い紫色で、果皮や果肉もやわらかくて甘い。油と相性がよく、加熱調理するととろけたような触感になる[38]

日本の栽培種

栽培の歴史が長いことから、その土地ならではの伝統品種が多く、北部で丸・卵形の小・中型品種、中部が卵形・中長形の品種、南部では長形・大型品種が多い傾向がある[8]。在来品種は東北の仙台長、山形の民田なす、京都の賀茂なす、大阪泉州の水なす、九州の大長茄子などがよく知られる[14][8]

東北・関東地方
  • 民田なす(民田小なす) - 山形県鶴岡市民田に由来する江戸時代から続く伝統品種[15]。果実は15 - 20グラムと小さく、辛子漬けなどに使われる[2]松尾芭蕉が『おくのほそ道』で詠んだ「めずらしや 山をいで羽の 初茄子」は、民田なすだと伝わる[16]
  • 早生真黒茄子 - 埼玉県草加市で発達した中長なす。やや小ぶりで、現在の中型なす交配品種の原型といわれている[15]
  • 埼玉青なす - 明治期に埼玉県に導入された淡緑色の巾着型のナス。果重200 - 300グラムと大きい[35]
  • 蔓細千成なす - 東京都
中部地方
近畿地方
中国・四国・九州地方
  • 田屋なす - 山口県(長門市、萩市)外観がよく、1本が500g以上のものが「萩たまげなす」[43]
  • 十市なす - 高知県(南国市)で生産されている卵形の小ナス。色形がよく、京都の料亭などでも使われている[35]
  • 黒びかり博多長なす - 福岡県・博多野菜のひとつ。実は長くて35 - 38 cmにもなり、曲がりは少なく、皮が薄くてつやがある。生育旺盛で、低温期でも弱ることなく晩秋まで実をつける[44]
  • 大長茄子 - 熊本県旧鹿本郡(山鹿市、熊本市)など九州地方で多く栽培されている。長さ40 - 50 cmと長大で、皮がかたいが果肉はやわらかい。焼き物、煮物、炒め物に向くが[2]、皮がかたいため漬物には向かない[36]
  • 赤なす - 長ナス系の早生種で熊本県の在来種。果皮が赤紫色で、果肉がやわらかく、種が少ない。焼き茄子に向き、漬物には向いていない[36]
  • 肥後紫なす - 熊本の赤ナスから作られた大型品種。長さや太さがあり、やや赤味がある。アクが少なくてやわらかい[2]
  • 佐土原なす - 宮崎県宮崎市佐土原町原産で江戸時代から栽培されてきた在来種。2000年から保管されていた種から復活する研究が始まり、生産者も生産・販売の取り組みが行われている[35]
  • 薩摩白丸なす - 紫色の色素がなく、ヘタも実も淡緑色の大型の白丸ナス。皮はかたいが、加熱すると身は柔らかくなる[2]
  • 鹿児島県白ナス - 鹿児島県で栽培されている白ナスで、在来種の薩摩白なすの系統。果実が薄緑色で「青なす」の名で売られている[8]。果肉は白色で、とてもやわらかい[14]

日本国外の品種

イタリア産のゼブラ模様のナス
  • ローザビアンカ(ロッサビアンコ) - イタリアナスの品種。紫と白のやや縦縞模様で直径10 cmほどになる。皮・身ともかたく締まり、焼き物、煮込み料理に向く[14]
  • ゼブラ - イタリアやスペインのナスで、紫と白の縦縞模様が特徴。皮はかたく、身は柔らかい[14]。セブラナスは紫色の縞模様があるナスの総称で、「ゼブラ」のほか、「カプリス」「フェアリー・テイル」「リスターダ・デ・ガンディア」などの品種がある[41]
  • スティックテイスト - イタリア系のゼブラ模様の長さ7 - 8 cm、50グラムほどになる小ナス[14]
  • フィレンツェ - イタリアのトスカーナ地方の伝統品種で、直径15 cmにもなる大型の丸ナス。パスタやラザニア、カポナータなどの料理に適している[41]
  • リスターダデガンジア - スペインの伝統品種。赤紫と白の縦縞のまだら模様をしている。肉質はやわらかい[45]
  • マクワポ(マクアポ) - タイナス英語版の品種。果実が卵形で白いことから「卵なす」ともよばれている。観賞用にされることも多い[8]。タイの食卓では一般的な小ナスで、グリーンカレーの具材にも適している[41]
  • マクアポー・ピンポン - タイナスの品種。ピンポン玉大と小ぶりの丸ナスで緑色。歯ごたえがあり、タイでは生のまま食べたり、カレーなどに使われる[46]

注釈

  1. ^ 卵型の白い果実が一般的だった地域の英語名が“eggplant”となっている。

出典

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Solanum melongena L. ナス(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年8月5日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 86.
  3. ^ a b c d e 貝津好孝 1995, p. 146.
  4. ^ a b c d e f g h i 主婦の友社編 2011, p. 24.
  5. ^ a b c d e f g h i j 小川正 (2016年7月20日). “湖国の食 ナス 多様な料理を楽しむ”. 中日新聞 (中日新聞社): p. 朝刊 びわこ版 17 
  6. ^ 加納喜光『動植物の漢字がわかる本』山海堂、2007年、182頁。ISBN 4-381-02200-9 
  7. ^ a b 石尾員浩『野菜と果物 ポケット図鑑』主婦の友社、1995年、118頁。ISBN 4-07-216639-1 
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z 講談社編 2013, p. 67.
  9. ^ 講談社編 2013, p. 64.
  10. ^ a b c d e f g 田中孝治 1995, p. 198.
  11. ^ a b c d e f g h i j 田中孝治 1995, p. 199.
  12. ^ 学研・たまねぎ舎編 2015, pp. 36–37.
  13. ^ 大久保 1995, p. 148.
  14. ^ a b c d e f g h i j k l m n 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 87.
  15. ^ a b c d 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 31.
  16. ^ a b c d e 竹下大学 2022, p. 80.
  17. ^ 武光誠『歴史からうまれた日常語用語辞典』東京堂出版、1998年、230-231頁。ISBN 4-490-10486-3 
  18. ^ a b 竹下大学 2022, p. 81.
  19. ^ 大竹大学 2022, p. 81.
  20. ^ a b c d e f g h 主婦の友社編 2011, p. 28.
  21. ^ a b c d e f g h i 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 241.
  22. ^ a b c d e f g 板木利隆 2020, p. 22.
  23. ^ 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 36.
  24. ^ 板木利隆 2020, p. 23.
  25. ^ 板木利隆 2020, p. 26.
  26. ^ a b c d e f 主婦の友社編 2011, p. 29.
  27. ^ 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 38.
  28. ^ a b c 主婦の友社編 2011, p. 30.
  29. ^ a b 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 39.
  30. ^ a b c d e 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 40.
  31. ^ a b 板木利隆 2020, p. 24.
  32. ^ 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 30.
  33. ^ 金沢市中央卸売市場>豆知識>青果雑学>なす
  34. ^ a b c d e f g h i j k l m 主婦の友社編 2011, p. 25.
  35. ^ a b c d e f g h i 竹下大学 2022, p. 84.
  36. ^ a b c d e f g 講談社編 2013, p. 66.
  37. ^ a b c 竹下大学 2022, p. 82.
  38. ^ a b c 竹下大学 2022, p. 83.
  39. ^ 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 34.
  40. ^ 竹下種苗 2022, p. 84.
  41. ^ a b c d 竹下大学 2022, p. 85.
  42. ^ しみずの農産物・ナス JAしみずホームページ
  43. ^ 萩たまげなす | ぶちうま!やまぐち.net~やまぐちの農林水産物~”. www.buchiuma-y.net. 2019年9月1日閲覧。
  44. ^ 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 32.
  45. ^ 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 35.
  46. ^ 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, pp. 87, 98.
  47. ^ a b 文部科学省 「日本食品標準成分表2015年版(七訂)
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  49. ^ 日本食品標準成分表2015年版(七訂)第2章 日本食品標準成分表 6.野菜類”. 文部科学省. p. 9. 2020年6月24日閲覧。
  50. ^ a b 講談社編 2013, p. 69.
  51. ^ a b 世界初!ナス由来の成分による血圧改善、気分改善効果を実証|What's New”. www.adeka.co.jp. ADEKA. 2020年6月24日閲覧。
  52. ^ a b ナスのヘタに含まれる天然化合物、子宮頸がん細胞に抗腫瘍効果 名大”. 科学技術振興機構 (2024年1月5日). 2024年1月15日閲覧。
  53. ^ 【抗がん成分を発見?】なすのへたで「長生きスープ」つくってみた!”. がん情報チャンネル・外科医 佐藤のりひろ. 2024年1月15日閲覧。
  54. ^ 学研・たまねぎ舎編 2015, p. 41.
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  58. ^ Çiğdem TEZ(チーダム・テズ)(著)、天野かよ 訳(編)「トルコの暮らしと食文化」『食品と容器』第57巻第1号、缶詰技術研究会、2016年、52-58頁。 
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  60. ^ Uses of Tropical Grain Legumes: Proceedings of a Consultants Meeting, 27-30 Mar 1989, ICRISAT Center, India. ICRISAT. (1991). pp. 108, 335. ISBN 978-92-9066-180-1. https://books.google.com/books?id=GNKzAAAAIAAJ 
  61. ^ 主婦の友社編 2011, p. 11.
  62. ^ 根田仁、毒きのこ類 森林科学 Vol.54 (2008) p.39-42, doi:10.11519/jjsk.54.0_39





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