タラール (サリエリ) タラール (サリエリ)の概要

タラール (サリエリ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/27 03:54 UTC 版)

1823年にタラールを演じるアドルフ・ヌーリ

概要

サリエリ

ボーマルシェとサリエリは悲劇に喜劇の要素を盛り込み、エキゾチズムとロマンスそして、現状の政治情勢を暗に揶揄するようなオペラを作成したが、大革命前のフランスの聴衆には強い訴求力を示すことになった。すべての包含された要素に加えて、ボーマルシェの広報力もあり、サリエリは本作の成功に確信を持っていた[3]。 『ニューグローヴ世界音楽大事典』によれば「ボーマルシェがオペラ史上に新しいページを開こうとしていた『タラール』はトラジェディ・リリックのグルック風の考え方にほとんど近づいており、クリストフ・ヴィリバルト・グルックのパリ・オペラ[注釈 1]に見られる心理的洞察ともいうべきものを特徴としている。舞台作品におけるサリエリは常に場面・場面の雰囲気をつかむ様に努めている。即ち、中心となる主題は単純だが、効果的なものでグルックと同様に対位法はほとんど使用せず、また、オーケストレーションは劇的状況応じて微妙に変化し、決して流れを妨げるようなものにはなっていない。グルックの弟子らしくリズムや単語のアクセントに忠実に従った。フランスの批評家ラ・アルプは『タラール』の音楽をして〈言葉にうまく合い〉、レチタティーヴォは〈表現力に富み〉軽快であると評している。しかし、ウィーン向けの『オルムス』は逆で、主題はありきたり、音楽が言葉より優位になっている。『タラール』でなされた試みには後続がなかったのである」[4]。 

3幕のアリア

サリエリは自分がグルックの模倣者や弟子以上の存在であることを『タラール』で証明した。本作は風変わりな作品ではあるが、力強くかつ変化に富んでいる。歌詞はボーマルシェによって書かれた。これには世に知られた序文がついているが、この高名な『フィガロ』の父はその中で、歌劇についての新しい理論を述べている。即ち彼はいろいろ他の希望を述べている中で、喜劇悲劇に融合することを望んでいる。サリエリには、舞台に対する知識と熱心さと情熱があった。彼は第二幕の終幕に見るように劇的な場面は上手く作っているが、軽い部分の扱いは凡庸である。それでも、本作は当時における大きな成功の一つである[5]

「サリエリが最大の勝利を得たのはフランスで、『ダナオスの娘たち』によってグルックの後継者と目された。さらに、この後、圧倒的な成功を収めたのは『タラール』」なのである。これにはウィーンでの上演のためにロレンツォ・ダ・ポンテイタリア語でリブレットを書いた改作版『オルムズの王アクスール英語版』(Axur, Re d'Ormus)があり、こちらの稿も評判が良かった[6]

初演とその後

1787年6月8日にパリ・オペラ座で行われた初演は大成功を収め、その独創性から「『タラール』はドラマと歌の怪物であり、誰もこのようなものをかつて観たことがない」と評された[7]。なお、不測の事態を警戒した警察がオペラ座周辺に400人の要員を配していたのである。そして、王妃は列席せず、ボーマルシェも姿を消したままだった[8]。 フランス革命勃発後の1790年にはボーマルシェが最終幕に『タラールの戴冠』を加えたヴァージョンも作られ、1826年までに合計131回の上演がオペラ座で行われ、これは『ダナオスの娘たち』の127回を凌ぎ、パリにおけるサリエリの最大の成功作となった[7]。 イギリス初演は1825年8月15日にロンドンのライシアムで行われた[2]ウィーンに戻るとヨーゼフ2世が命じて『タラール』のイタリア語版を作らせたのが『オルムスの王アクスール Axur, re d’ Ormus』(1788年1月8日ブルク劇場初演)である。これは台本作家ダ・ポンテが危険思想を薄めて改作し、〈自然〉と〈火の神〉によるプロローグと最終場を除去し、サリエリも音楽をイタリア風のものに書き替えて別のオペラとなっている[9]


注釈

出典

  1. ^ a b 『ラルース世界音楽事典』P 997
  2. ^ a b ジョン・ウォラックP370
  3. ^ a b ジョン・ライスP40
  4. ^ 『ニューグローヴ世界音楽大事典』(第8巻) P299
  5. ^ H.ラヴォアP 114
  6. ^ ジョン・ウォラックP268
  7. ^ a b 水谷彰良P156
  8. ^ a b 水谷彰良P155
  9. ^ 水谷彰良P159~162
  10. ^ 水谷彰良P148
  11. ^ 音楽之友社のホームページ 2021年9月27日閲覧


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