キャリアメール 迷惑メール対策

キャリアメール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/04 14:54 UTC 版)

迷惑メール対策

携帯電話事業者は当初、SMSと同様にメールアドレスのアカウント名部分に電話番号を用いていた。この規則性が仇となり、またインターネットから発信される電子メールの送信コストは非常に安いことから、2001年頃には迷惑メールが激増[15][16]。迷惑メールの大量受信によってメールボックスがあふれたり、存在しないメールアドレスへの大量送信とバウンスメールにより通信回線が輻輳し、またサーバ処理能力を超えてしまったことでサービスが停止したりメール配送が遅延したことで、訴訟になったり[17] 逮捕される事態も起きている[16][18]。また利用者が望まない内容のメールであることや、昼夜を問わないメールの受信などにより苦情が相次いで、社会問題になったこともあり、以下のような迷惑メール対策が取られるようになった[19][20][21][22]。 またインターネットサービスプロバイダも同様の対策を行い、パソコンから送信される迷惑メール全体の抑制を図った。ただ、様々対策を行っているにもかかわらず、迷惑メールの完全な排除は難しく、根本的な解決には至らないのが現状である。

メールアドレス推測の困難化

初期値として使用していた電話番号を使用したメールアドレスをやめ、ランダムな英数字(後で任意のアカウント名に変更可能)に変更することで迷惑メールの到達率を下げ、悪質な送信者に送信をあきらめさせることを意図した。なおauでは最初から任意のアカウント名を決められる仕組みだったため、これらの対策は取る必要がなかったが、Cメール(SMS)の「Eメールお知らせ機能」が悪用されたため、2001年12月に「Eメールお知らせ機能」自体を廃止した。また利用者に英数字が混在したものや、文字数が多いメールアドレスを使用することも推奨した。その他にもメールアドレス変更機能を悪用するとメールアドレスの推測が可能であったため、1日のメールアドレスの変更回数に制限を設けた[15]

フィルタリング機能

自動生成されたランダムなメールアドレス・ありがちなパターンを組み合わせたメールアドレスにも迷惑メールが送信され始め、また送信者のメールアドレスを詐称してフィルタリングをかいくぐろうとする事例が増えてきたことから、以下のような対策が行われている[15][23]

  • 携帯・PHS以外の受信拒否
  • なりすましメール拒否(送信ドメイン認証Sender IDSPF)など)
  • URL付きメールの受信拒否
  • ドメイン・アドレス指定受信
  • ドメイン・アドレス指定拒否
  • 学習型迷惑メールフィルタ
  • アドレス帳サービスに未登録のメールアドレスからの受信拒否
  • 大量送信者からの受信拒否
  • HTMLメールの受信拒否
  • 未承諾広告拒否

宛先不明メールが大量に含まれる場合はすべてのメールが受信拒否されたり、大量送信者からのメールは拒否されたり、場合によってはバウンスメールすら返ってこないなどの対策も取られている[24][25][26]

また指定された条件に従い、メールを自動でフォルダ分け・削除する機能を持った携帯電話端末もある。

利用停止・送信数制限

以上の対策が功を奏するようになった2003年頃から、携帯電話とパソコンを接続して、携帯電話から大量の迷惑メールを送信する悪質な送信者が現れた[15]。そこでパソコンとの接続はパケット定額制の対象外にしたり、パソコンとの接続機能を削除したりインターフェースの仕様を非公開にした機種を発売する対策を取った。しかし携帯電話の基板に直接配線を追加して、パソコンから携帯電話を制御する悪質な送信者もあらわれた[16]。そのため各事業者は迷惑メール申告窓口を設置し、利用者から情報収集するとともに、悪質な送信者が使用する携帯電話を利用停止・契約解除し、新規契約も拒否する対策を取った。

これらの対策をとっても、プリペイド式携帯電話・名義貸しでの新規契約・飛ばし携帯などによって迷惑メールの送信が続いたため、2003年末から各事業者で一定時間内での最大送信数・1回あたりの最大送信数の制限を実施[15]。これらの対策により、携帯電話から発信される迷惑メールは激減した。

また迷惑メール申告窓口からの情報や、悪質な利用者の情報も各携帯電話事業者で共有している[27][28]

メールヘッダ閲覧サービス

キャリアメールではデータ容量の削減・通信速度の高速化を目的に、受信時には必要最低限度のメールヘッダしか閲覧できなかった。 そこで利用者が迷惑メールの送信先を判別しやすくするために、メールヘッダ表示サービスを開始した。

OP25B

インターネットサービスプロバイダは、動的IPアドレスからのメールを抑止するOutbound Port 25 Blocking(OP25B)を講じることで、パソコンなどから送信される迷惑メールの送信抑制を図った[15]


  1. ^ キャリアメール”. IT用語辞典バイナリ. 2012年10月6日閲覧。
  2. ^ 7bit文字の場合。8bit文字の場合、140文字まで。
  3. ^ KDDIのSMSは実装上の問題により、3GPP2仕様に完全準拠するまで海外とのやりとりができなかった。
  4. ^ 携帯各社、SMSの相互接続サービスを7月13日スタート”. ケータイ Watch (2011年6月11日). 2021年2月16日閲覧。
  5. ^ 世界的には、GSM(W-CDMA) vs CDMA(cdma2000)の2極構造で、日本以外のほとんどの国は、2極のどちらかひとつあるいは両方しかなかった。日本だけ、2極のどれでもないネットワークがあった
  6. ^ 高橋暁子「高橋暁子の意外と知らない!? 業界ランキング 第41回 日本人の40%がLINEを常用しているが世界はWhatsAppとFacebook二強」『ASCII.jp』 KADOKAWA、2015年6月15日
  7. ^ 高橋暁子「深読みチャンネル なぜ? LINEからも逃げ出し始めた若者たち」『読売新聞(YOMIURI ONLINE)』 読売新聞社、2018年1月18日
  8. ^ 「キャリアメール持ち運び」サービスを必要としている人はいる?いない?|@DIME アットダイム
  9. ^ 「最安価格」うのみは禁物 携帯プラン、どう選ぶ? 新割安ブランド3月登場”. 47NEWS (2021年2月4日). 2021年3月22日閲覧。
  10. ^ "携帯電話料金の低廉化についての総務省の取り組みについて"”. 総務省総合通信基盤局 (2020年12月9日). 2021年2月16日閲覧。
  11. ^ キャリアメール、回線解約後も引き継ぎ可能に。ドコモとauが月330円 - Impress Watch
  12. ^ a b c d e f g メールアドレス持ち運び」『ソフトバンク』 ソフトバンク、2022年1月9日
  13. ^ Rメール(@rakuten.jp)」『楽天モバイル』 楽天モバイル
  14. ^ 楽天モバイルのキャリアメール、7月1日から提供 名前は「楽メール」」『ITmedia Mobile』 ITmedia、2022年7月1日
  15. ^ a b c d e f Japan Email Anti-Abuse Group Wirelessサブワーキンググループ「JEAG Recommendation ~携帯電話宛の迷惑メールに対する提言書~」『インターネット協会 迷惑メール対策委員会』インターネット協会、2006年2月
  16. ^ a b c NTTドコモ 三石多門「NTTドコモにおけるお客様保護対策」『ユビキタスネット社会の実現に向けた政策懇談会 利用環境ワークグループ 第2回』総務省、2004年4月9日
  17. ^ 辛島睦「第17回 迷惑メール防止2法 広告宣伝用メールに対する規制を知る」『日経xTECH』 日経BP、2008年4月10日
  18. ^ 三柳英樹「警視庁、迷惑メール送信の男性を逮捕」『INTERNET Watch』ITmedia、2008年2月15日
  19. ^ いちばゆみ「iモードの迷惑メール対策を斬る」『ITmedia mobile』 ITmedia、2001年7月2日
  20. ^ KDDI株式会社 本間輝彰「ケータイメールにおける迷惑メールについて 講演資料」『IAjapan 迷惑メール対策カンファレンス』 インターネット協会、2005年5月10日
  21. ^ KDDI株式会社 本間輝彰「運用情報 経験談 携帯電話における迷惑メールとの戦い」『有害情報対策ポータルサイト 迷惑メール対策編』 インターネット協会 迷惑メール対策委員会、2006年1月
  22. ^ 「迷惑メール対策に関するアンケート調査結果 [参考]〈ボーダフォンの主な迷惑メール対策〉」『ソフトバンク』 ボーダフォン、2006年2月14日
  23. ^ 「迷惑メール対策 ケータイ会社別 迷惑メールフィルター 3社一覧表(ケータイ) 」『迷惑メール相談センター』 日本データ通信協会
  24. ^ サービス・機能 同報メールを大量に送信されるお客様へ」『NTTドコモ』 NTTドコモ
  25. ^ 「サービス・機能 auメール(@au.com/@ezweb.ne.jp)へメール送信する際の注意事項」『au』 KDDI
  26. ^ 「モバイル メール送受信の際の注意事項」『ソフトバンク』 ソフトバンク
  27. ^ 電気通信事業者協会「迷惑メール等送信行為に係る携帯電話・PHS加入者情報の交換について」『一般社団法人電気通信事業者協会』 電気通信事業者協会、2005年10月26日
  28. ^ 電気通信事業者協会・NTTドコモ・KDDI・沖縄セルラー電話・ソフトバンク・ウォルト ディズニー ジャパン「プレスリリース 迷惑Eメールに関する申告情報の取扱いについて」『一般社団法人電気通信事業者協会』電気通信事業者協会 、2016年9月7日
  29. ^ 配信中のメールの暗号化 – Google 透明性レポート
  30. ^ メールのセキュリティ - Twitter透明性センター
  31. ^ メールの暗号化に関するよくある質問 - Transparency Report ヘルプ


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