楽天主義
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楽天主義(らくてんしゅぎ)または楽観主義(らっかんしゅぎ、英: optimism[a])とは、出来事が肯定的で望ましい結果につながるとする考え方や態度を指す。語源はラテン語: optimum「最善の」に由来する。対義語は悲観主義(英: pessimism[b])。
19世紀半ばにアメリカで起こったニューソート(新思考)に始まる、ポジティブな姿勢を保ち「思考そのもの」を変えることで現実を変えることを目指す思考法については、「積極思考(ポジティブ・シンキング)」を参照のこと。
心理学的楽観主義
若い人たちは、年配の人たちよりも世の中に対して楽観的である[1]。オックスフォード大学感情神経科学センター教授のエレーヌ・フォックスの2009年の論文では、「セロトニン運搬遺伝子」の型が楽観・悲観を決める可能性が示唆されていた。しかし、パーキンソン病から復帰した不屈の楽観主義者マイケル・J・フォックスの依頼で遺伝子を調べたところ、悲観的なタイプという結果だった。これを受けて研究を続けた結果、悲観的と思われていた遺伝子の型は、外界の影響をうけやすい型であり、逆境で悲観的になる一方、良いことを経験すればより高い幸福を感じ、最大の利益を引き出せるタイプであることが分かった。遺伝子の型によって楽観・悲観は決まっているわけではなく、生育環境の影響が大きくある。マイケル・J・フォックスの場合、変わり者とみなされていた幼少時に、彼を肯定し励ましたやさしい祖母の影響が大きいのではないかと推察されている。研究では、大人でも楽観・悲観は、継続的な訓練で変えることができると考えられている[2]。アメリカのハーバード大学医学部によると、楽観的な人は目標を達成しやすいということで、やはり楽観性は大切なのだそうである[3]。
哲学的楽観主義
哲学における楽観主義の最初期の例の一つは、ソクラテスの楽観主義である[4]。ソクラテスによれば、人は哲学的自己吟味を通じた道徳的完成を目指すことによって、有徳な生活を送ることができる。道徳的真理に関する知識は、幸福な生を享受するための必要十分条件である(ソクラテスの主知主義)[4]。ソクラテスは哲学探求において、知性や理性のみに集中するのではなく、感情もまた人間の豊かさの重要な要素として考慮する、均衡の取れた実践的態度を志向していた[5]。
哲学では、物事がうまくいくであろうと見込むという日常的な意味での楽観主義とは別に、「現状が(その完全な仕組みは分からないが)最適化されている(英: optimized)」と見込む、という意味での楽観主義(英: optimism)がある。(他にも、物理学的楽観主義・最適化説に数えられるものとして、例えばハミルトンの原理がある。)この種の楽観主義は、哲学的悲観主義としばしば対立する。
ライプニッツ
ドイツの哲学者・数学者ゴットフリート・ライプニッツは、現実世界はあらゆる可能世界の中で最善のものである(仏: meilleur des mondes possibles、英: best of all possible worlds)と考えた[6]。彼はまず想定可能なすべての可能世界を考える。しかし、このうち、内部に論理的な矛盾を含む世界はそもそも現実化可能ではない。そこで、この共可能的な事象の組み合わせからなる複数の可能世界のうち、どのような世界が(神によって)選択され、実現されたかが問題となる[7]。
フランスのヴォルテールは匿名で発表した小説「カンディード」でライプニッツの最善世界説を揶揄・批判した。イギリスのバートランド・ラッセルは、ライプニッツの議論を、最善世界の必然性と人間の自由意志の存在が矛盾しているという観点と、最善世界説が好ましくない道徳的帰結をもたらす(現世の不条理を不用意に正当化している)という観点から、批判的に評価した[8]。ライプニッツの議論は、その形而上学が論理的な一貫性に欠けると当時に、現実の倫理的な問題とも実践的に結びつきにくいと批判された[9][10]。
しかし、ライプニッツの最善説(英: optimism)は、現代における最適化(英: optimization)の概念を先取りする内容となっている[8][11][12]。フランスの科学史家ミシェル・セールは、ライプニッツの数理モデルに動的構造主義からの解釈を与えた[13]。
ライプニッツの哲学は、善に何らかの意味で(悪に対して)存在論的優位を認め、善を積極的な存在と見なすと点において、プラトンやアウグスティヌスらの立場と共通している。
脚注
注釈
出典
- ↑ “Young people more optimistic about the world than older generations – Unicef” (英語). the Guardian (2021年11月18日). 2022年12月24日閲覧。
- ↑ エレーヌ・フォックス 悲観的な脳でも、楽観的な脳に変えられる なぜマイケル・J・フォックスは復帰できたか 東洋経済 2015年08月14日
- ↑ Salamon, Maureen (2022年11月1日). “Aiming for longevity” (英語). Harvard Health. 2022年10月19日閲覧。
- 1 2 Wallgren, Thomas (2006). Transformative Philosophy: Socrates, Wittgenstein, and the Democratic Spirit of Philosophy. Lanham, Md.: Lexington Books. p. 60. ISBN 978-0-7391-1361-5.
- ↑ Schultz, Anne-Marie (2013-06-07). Plato's Socrates as Narrator: A Philosophical Muse. Lanham, Md.: Lexington Books. p. 28. ISBN 978-0-7391-8330-4.
- ↑ Feeney, Thomas, "Leibniz on the Problem of Evil", The Stanford Encyclopedia of Philosophy (Spring 2026 Edition), Edward N. Zalta & Uri Nodelman (eds.).
- ↑ Leibniz, G.W. "Monadologie" (1714) §53–5.
- 1 2 Mee, Nicholas. "The best of all possible worlds", Oxford University Press's Academic Insights for the Thinking World, Oxford University Press, 2017-04-19. Retrieved 2026-05-16.
- ↑ Russell, B. (1945). "A History of Western Philosophy". Simon and Schuster.
- ↑ Russell, B. (1900). "A Critical Exposition of the Philosophy of Leibniz". Cambridge University Press.
- ↑ McDonough, Jeffrey K. 2024. "Leibniz: Science and Metaphysics. Oxford: Oxford University Press.
- ↑ McDonough, Jeffrey K. 2009. "Leibniz on Natural Teleology and the Laws of Optics". Philosophy and Phenomenological Research 78, no. 3: 505–544.
- ↑ Serres, Michel. 1968. Le Système de Leibniz et ses modèles mathématiques. Paris: Presses Universitaires de France (PUF).
関連項目
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