Wizard Bible事件とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > Wizard Bible事件の意味・解説 

Wizard Bible事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/18 17:00 UTC 版)

Wizard Bible事件(ウィザード・バイブルじけん)とは、ウェブサイト「Wizard Bible」の管理者がウイルスのプログラムを公開したとして2018年3月に略式起訴されて罰金刑を受け、同年4月にサイトを閉鎖させられた事件である。

近い時期にあったCoinhive事件アラートループ事件(無限アラート事件)とともに不正指令電磁的記録に関する罪の「適用範囲の曖昧さ」が懸念された[1][2]

概要

ウェブサイト「Wizard Bible」は情報セキュリティやハッキングなどに関する技術情報を提供し、管理者をはじめ、エンジニア、研究者ら複数が投稿していた[3]

2017年6月20日、同サイトに投稿していた少年が不正アクセス禁止法違反の疑いで逮捕され[4]、7月11日に処分保留となったが、同日不正指令電磁的記録作成の疑いで再逮捕された[5][6]

少年が「Wizard Bible」に投稿した記事が問題とされ、管理者は2018年3月にウイルスのプログラムを公開したとして不正指令電磁的記録提供の罪で検察から略式起訴され罰金50万円の略式命令を受けた[7]

サイトの存続について管理者は警察とは問題の記事の削除という妥協点を見出していたが[8]、検察は存続案を一蹴し、閉鎖しなければならなくなったとした[9]

管理者は2018年に「パソコンが押収されて仕事に支障が出たことなどから、早く終わらせたいと罰金50万円を納め、ことし4月にサイトを閉鎖した」と述べた[7]

問題の検証

問題とされたのは「トロイの木馬型マルウェアについて」という解説記事とされ[10][8]、単なるsocket通信プログラムに実行機能を付けただけのものであった[11]立命館大学教授の上原哲太郎ら複数の研究者が検証し、実際はサーバーの遠隔管理等に使う一般的な機能であり、同じようなプログラムは入門書などにも載っていて専門知識がないと悪用は難しく、ウイルスとして摘発されたことに疑問や戸惑いの声が上がった[7][12][13]

上原は「サイバーセキュリティーの研究では、攻撃手法などの情報共有は非常に重要で、こうしたことが続くと研究の萎縮を招くおそれがある」と指摘した[7]

出典

  1. ^ 大塚昭彦 (2019年5月8日). “日本ハッカー協会がセミナー開催、同事件担当の平野敬弁護士や高木浩光氏らが登壇【前編】Coinhive事件に学ぶ、エンジニアが刑事事件で身を守る方法”. Asci.jp. 2019年5月31日閲覧。
  2. ^ 大塚昭彦 (2019年5月27日). “日本ハッカー協会がセミナー開催、情報法制研究所の高木浩光氏、平野敬弁護士らが登壇【後編】ウイルス罪の解釈と運用はどこが「おかしくなっている」のか”. Asci.jp. 2019年5月31日閲覧。
  3. ^ hylom (2018年4月24日). “ハッキングなどの情報を提供していたサイト 「Wizard Bible」、検察からの圧力で閉鎖”. スラド. 2019年5月31日閲覧。
  4. ^ “アノニマスに憧れ 偽サイト開設の高2逮捕”. 河北新報. (2017年6月20日). オリジナルの2017年6月20日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170620073624/http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201706/20170620_73046.html 
  5. ^ “ウイルス作成容疑 16歳少年再逮捕”. 河北新報. (2017年7月12日). オリジナルの2017年7月15日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170715225410/http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201707/20170712_13028.html 
  6. ^ ウイルス作成した疑いで再逮捕”. NHK (2017年7月11日). 2017年7月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年5月31日閲覧。
  7. ^ a b c d “ウイルスのプログラム” 公開で罰金刑 研究者から疑問の声”. NHK (2018年11月21日). 2018年11月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年5月31日閲覧。
  8. ^ a b 浅川直輝 (2019年4月24日). “「何がセーフか分からない」ウイルス罪で罰金刑を受けた技術者の嘆き”. 日経 xTECH. 2019年5月31日閲覧。
  9. ^ Wizard Bible”. 2018年4月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年5月31日閲覧。
  10. ^ hylom (2018年11月22日). “「Wizard Bible」管理人、ウイルス公開の疑いで略式起訴。問題のプログラムは一般的なサンプルコード”. スラド. 2019年5月31日閲覧。
  11. ^ 高木浩光 (2019年3月16日). “しそうけいさつ化する田舎サイバー警察の驕りを誰が諌めるのか”. 2019年5月31日閲覧。
  12. ^ これってコンピューターウイルス?”. 関西ブログ. 2019年6月21日閲覧。
  13. ^ 山本洋介山 (2018年12月13日). “セキュリティクラスタ まとめのまとめ 2018年11月版:「PCを使わないこと」が最強のセキュリティ対策なのか? (2/3)”. @IT. 2019年5月31日閲覧。

関連項目

外部リンク

PEAKS(ピークス)|Wizard Bible事件から考えるサイバーセキュリティ




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「Wizard Bible事件」の関連用語

Wizard Bible事件のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



Wizard Bible事件のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのWizard Bible事件 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS