タングル
(Tangle (mathematics) から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/18 06:39 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動数学の分野において、タングル (tangle) は結び目の一部分を切り取って得られるような幾何的対象のことである。通常次の二種類のいずれかを指す。
これらは共に「境界付き 3次元多様体に埋め込まれた、 1次元の(境界付き)多様体」とみなせるが、これら二種類のタングル(もしくはその一般化)が統一的に扱われることはないようである。
タングル(1)
n-タングル (n-tangle)とは、交わらない n 本の(両端のある)曲線の 3次元球への適切な埋め込みのことである。各曲線の各端点は 3次元球の境界にあらかじめ指定された 2n 個の点のいずれかに写されなければならない。二つの n -タングルは、片方のタングルを他方に移す、境界を固定する全同位が存在するときに同値であるとする。タングルの理論は結び目理論の類似としてとらえられるが、閉曲線の代わりに端点が固定された紐を扱うというところが異なっている。
タングルはジョン・ホートン・コンウェイによって導入された。
タングルの表示
一般性を失うことなしに、(タングルの端点が写る)3次元球の境界上の指定された点はある大円上にあると仮定してよい。タングルは、この大円を境界とする平らな円盤への射影が一般的な位置となるように変形することができ、射影図に交差の上下の情報を加えたものを(結び目の正則表示のように) (正則)表示と呼ぶ。
タングル(の表示)は結び目や絡み目の表示の中にしばしば現れ、絡み目を構成するブロックとして使われることもある。(例:モンテシーノス絡み目)
有理タングルと代数的タングル
有理タングル(rational tangle)とは 2-タングルであって、自明な 2-タングル(交差を持たないタングル)と同相なもののことを言う。通常、その四つの端点は方位からの類推で NE(北東)、NW(北西)、SW(南西)、SE(南東) と呼ばれる。
有理タングルの任意の表示をとると、それはとても複雑に見えるが、実は単純な表示がある。まず水平[resp. 垂直]な二本の曲線を持つタングルの表示を考え、それに「ひねり」を追加する。即ち NE と SE [resp. SW と SE] の端点を入れ替えることによって交差を一つ追加する。これらの操作を繰り返すことによって有理タングルの表示が得られる。ちなみに上記の操作の際、ひねりを加えた端点に近いところだけが変化し、それ以外の部分は変化しないとしてよい。
有理タングルのこのような表示を、端点同士を連続してひねった数の組として記述することができる。例えば (-2,1,3) という数の組は、水平な二本の曲線からなるタングル表示から始めて、まず NE/SE の端点を 2回ひねり、次に SW/SE の端点を 1回ひねり、そして NE/SE の端点を 3回、前回とは逆方向にひねってできる表示を表している。数の組が 0 から始まっている場合、二本の垂直な曲線からなるタングルから始めることにする。すると水平な二本の曲線からなるタングル表示は (0) と表せるが、垂直な二本の曲線からなるタングル表示は (0,0) となる。この約束は「正」「負」のひねりを記述するのに必要だ。 しばしばここまで説明してきたような数の組を指して、「有理タングル」と呼ぶこともある。
有理タングル

なお,重み付き3-正則平面グラフとしての
3交点から11交点までの結び目および絡み目の2重性並行表示と重み付き3-正則平面グラフが, The Knot Atlasに掲載されている。 また,別の報告で,3-正則平面グラフの全域木を用いて結び目を構成する方法の記述もある[3]。
脚注
- ^ a b c 長島 隆廣[結び目と絡み目の正則表示に関する規則的な描画法]日本数学協会論文集・別冊数学文化,2005年12月発行,日本数学協会,pp.60-70.【researchmap】で公開, 全編PDF: https://researchmap.jp/T_Nagashima または, https://researchmap.jp/multidatabases/multidatabase_contents/detail/263160/c1f5868cc1bf2c390ea0a94a9cd44476?frame_id=539358
- ^ a b c d e f 学術論文誌「日本数学協会論文集」別冊数学文化,2005年,日本数学協会編/全国書誌番号:01014271, 書誌ID:000008409476, 請求記号:Z74-F232, NDLC:ZM31, 言語:日本語, 国立国会図書館蔵.
- ^ 長島 隆廣『3-正則平面グラフを用いた結び目の構成に関する定理』日本数学協会論文集・第2号 (別冊数学文化),2006年12月発行,日本数学協会,pp.52-79.【researchmap】で公開,論文の全編PDF: https://researchmap.jp/T_Nagashima または, https://researchmap.jp/multidatabases/multidatabase_contents/detail/263160/b962b603f071c834290b5e34bfdd70cd?frame_id=539358
参考文献
- C. C. アダムス著 金信泰造訳 『結び目の数学』 培風館 1998年 ISBN 4-563-00254-2 (Colin C. Adams, The Knot Book, American Mathematical Society, ISBN 0-8050-7380-9).
- L. H. カウフマン著 鈴木 晋一、河内 明夫監訳 『結び目の数学と物理』 培風舘 1995年 ISBN 4-563-00237-2 C3041 P4429E (L. H. Kauffman, Knots and Physics, World Scientific, ISBN 978-9810241124).
- 鎌田聖一 『曲面結び目理論』"シュプリンガー現代数学シリーズ・第16巻" 丸善出版、2012年 (ISBN 978-4-621-08509-7).