AIOpsとは? わかりやすく解説

エーアイ‐オプス【AIOps】


AIOps

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/08/12 09:43 UTC 版)

AIOps(英: Artificial Intelligence for IT Operations)は、機械学習ビッグデータ分析を情報システムの運用に適用し、監視データからの異常検知、多数の警告を一つの事象へまとめるイベント相関付け、原因の究明、対応作業の自動化などを行う手法およびそれを担うソフトウェアの領域である[1][2]。用語は2016年に調査会社のガートナーが導入した[3][4]。ガートナーはAIOpsを「ビッグデータと機械学習を組み合わせ、イベント相関付け・異常検知・因果関係の判定を含むIT運用のプロセスを自動化するもの」と定義している[1][4]。運用担当者が大量の警告に埋もれて重要な兆候を見落とす状態を緩和し、障害の検知から復旧までの時間を短縮することが主な狙いとされる[3]

背景

クラウドコンピューティングの普及に加え、一つのアプリケーションを小さな独立したサービスの集まりとして構築するマイクロサービス型の設計が広まった。これにより監視の対象となる構成要素が増え、そこから生まれる記録の量も大きく膨らんだ。分散したシステムから送られるログ・数値指標・イベントは人手で突き合わせられる規模を超え、利用者が異常に気付いてから運用側が原因を特定するまでに時間がかかるようになった[3][5]。大量の警告への対応に追われる「アラート疲れ」も知られており、実害のない警告(誤検知アラート)を悩みとして挙げる運用チームは調査回答の半数を超える[3][6]。AIOpsは、規模と複雑さの増大で人手による監督が難しくなった運用の課題に、人工知能とビッグデータ分析で対処するものとして提唱された[5]。機械学習で技術者の作業を支えることで、サービス品質の向上や運用費用の削減に資するとされる[7]

仕組み

AIOpsの基盤となるのは運用データの集約である。稼働記録であるログ、応答時間や資源使用率などの数値指標(メトリクス)、機器やソフトウェアが発する事象通知(イベント)、構成要素の依存関係を表すトポロジ情報などを、系統ごとに分断された状態から一箇所へ取り込む。ガートナーはAIOpsのプラットフォームに求められる機能として、多様なデータの取り込み、システム構成の把握、相関関係の分析、人が状況を理解しやすい形での提示、復旧作業の実行を挙げている[8]

集めたデータには機械学習による異常検知が適用される。平常時の振る舞いを学習し、そこから外れた変化を検出する方式が代表的で、教師あり学習・教師なし学習・強化学習などが用途に応じて使い分けられる[9][5]。続いて、同じ原因から派生した複数の警告を時間的な近さや構成要素の依存関係に基づいて一つの事象へ束ねるイベント相関付けが行われる。この処理は、無関係な警告(雑音)と対処が必要な兆候とを切り分けて件数を減らす役割を担う[9][3]

束ねられた事象については、依存関係をたどって最初に異常が生じた箇所を推定する根本原因解析が行われる[3][10]。最後の段階として、サービスの再起動、ディスク領域の整理、接続のリセットといった定型的な復旧作業を自動で実行する仕組みが用意される場合がある[3]。もっとも、判断の根拠を人が確認できる状態(説明可能性)と統制を保つため、影響の大きい対応については人の承認を介在させる運用が併用される[3]

従来の監視・オブザーバビリティとの関係

従来からの人手による運用管理では扱いきれない量のデータが問題となるのに対し、AIOpsでは機械学習が平常時の振る舞いの基準を学習し、環境の変化に応じてその基準自体を更新していく点が異なる[2][8]オブザーバビリティ(可観測性)の分野でもAIの活用は進んでおり、Splunkが実施した2025年の調査では、回答者の76%が「日常業務で、AIを活用したオブザーバビリティを定期的に利用している」と答えている[6]。また、ITサービスマネジメントにおける障害対応(インシデント管理)との連携として、警告と推奨される対処を適切な担当チームへ自動的に振り分ける使い方がある[9]。開発と運用の連携を扱うDevOpsがソフトウェア開発と展開の迅速化に重点を置くのに対し、AIOpsはAIを用いてIT環境の運用を最適化することに焦点を当てる[9]

大規模言語モデルの実用化以降は、運用データについて自然言語で問い合わせられる対話型の補助機能を持つ製品も現れている。2023年にはDatadogが障害調査を支援する対話型アシスタント「Bits」を発表し[11]、Dynatraceも自然言語でデータを探索できる機能を提供している[10]

主なプラットフォーム

ガートナーは、AIOpsに関わる製品を、データ分析ツール、監視製品などに組み込まれたAIOps機能、独立したAIOpsプラットフォームの3つに分類している。このうち組み込み型は扱いやすい一方、機能がその製品の範囲で閉じてしまう限界も指摘されている[8]。TechTargetは、Datadog、Dynatrace、IBM AIOps Insights、New Relic、ServiceNow IT Operations Management、Splunk IT Service Intelligenceなど15の製品を列挙している[2]。市場規模については、調査会社The Insight Partnersが2023年時点で約49億ドル、2031年に約462億ドルへ拡大すると予測した数値が引用されている[2]

課題

分析の精度は入力されるデータと学習させたアルゴリズムの質に依存するため、収集範囲の欠落や記録形式の不統一があると結果の信頼性が落ちる[2]。学習が不十分な段階では誤検知が生じ、かえって確認作業を増やすことがある[6]。既存の監視系統との接続やデータの整備には相応の期間と工数を要し、導入の負担が課題として指摘される[2]。自動化への依存が進むと、その仕組み自体が停止した場合に運用全体が滞る恐れもある[2]。学術分野では、これまでの研究成果が分野横断的に散在し、共通の用語体系を欠いているため、同種の課題を扱う手法どうしの発見と比較が困難であることが指摘されている[5]

関連項目

脚注

  1. 1 2 AIOps (Artificial Intelligence for IT Operations) (英語). Gartner. 2019年8月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年8月10日閲覧。
  2. 1 2 3 4 5 6 7 What is AIOps (artificial intelligence for IT operations)? (英語). TechTarget (2024年10月28日). 2026年8月10日閲覧。
  3. 1 2 3 4 5 6 7 8 AIOps Explained: Detection, Prediction, and Mitigation in IT Operations (英語). Splunk (2026年2月5日). 2026年8月10日閲覧。
  4. 1 2 「AIOps」とは? IT運用における人工知能の重要性--前編”. ZDNET Japan (2023年1月17日). 2026年8月10日閲覧。
  5. 1 2 3 4 Paolo Notaro; Jorge Cardoso; Michael Gerndt (2020-12-15) (英語). A Systematic Mapping Study in AIOps. arXiv:2012.09108.
  6. 1 2 3 止まらない障害、尽きない誤検知 「オブザーバビリティ」はAI時代の運用現場を変えるのか?”. @IT(アイティメディア) (2025年10月29日). 2026年8月10日閲覧。
  7. AIOps: Real-World Challenges and Research Innovations (英語). Microsoft Research (2019年4月4日). 2026年8月10日閲覧。
  8. 1 2 3 複雑化する運用管理の現実解、ガートナーが示す「AIOps」のメリットと限界”. ビジネス+IT(SBクリエイティブ) (2023年4月10日). 2026年8月10日閲覧。
  9. 1 2 3 4 AIOpsとは?”. IBM. 2026年8月10日閲覧。
  10. 1 2 Dynatrace Intelligence (英語). Dynatrace (2026年5月8日). 2026年8月10日閲覧。
  11. Datadog Announces Bits, an AI Assistant to Help Engineers Quickly Resolve Application Issues (英語). PR Newswire (2023年8月3日). 2026年8月10日閲覧。


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