龍華酒店とは? わかりやすく解説

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龍華酒店

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/13 01:23 UTC 版)

座標: 北緯22度23分18秒 東経114度11分30秒 / 北緯22.3884度 東経114.1916度 / 22.3884; 114.1916

號稱「乳鴿大王」的龍華酒店

龍華酒店Lung Wah Hotel、りゅうかしゅてん)は、香港新界沙田下禾輋村に所在する、香港では数少ない園林(庭園)を擁するレストランである。開業は1938年で、当初は12室の客室を有していた。当時は沙田地区で唯一のホテルであり、かつてはホテルとして営業されていた。武侠小説家の金庸も、かつてこのホテルに長期滞在し、小説を執筆したことがある。しかし、1980年代以降、沙田新市鎮の開発と新たなホテルの開業に伴い、龍華酒店の客室は次第に利用されなくなった。また、消防条例に適合しなかったため、ホテルとしての営業は終了した。

1985年より、龍華酒店は純粋にレストランとしての営業に転換し、紅燒乳鴿中国語版(子鳩の醤油煮込み)を看板料理として提供するようになった[1]。美食家として知られた香港最後の総督クリス・パッテンも常連客であり[2]、また中華民国総統蔣経国は、乳鴿を購入するために専用機を派遣したとされ、そのため「飛天乳鴿(空飛ぶ乳鴿)」という美名を得た[3]

龍華酒店は1950年代には香港で有名な庭園式ホテルであったため、当時多くの映画会社がこの場所を借りて映画撮影を行った。紅線女、張活游、陳寶珠、蕭芳芳、李小龍といった芸能人も、かつてここを訪れ撮影を行った。今日に至っても、内装は1950~60年代の様式をそのまま保っているため、多くの映画が龍華酒店をロケ地として使用しており、李小龍の『ドラゴン危機一発(唐山大兄)』や彭浩翔の『買兇拍人中国語版』などもここで撮影された。

香港のベテラン歌手・李龍基のアルバム『港澳回憶歌集』には、「龍華酒店」というタイトルのラブソングが収録されている[4]

歴史

「四方楼」上に掲げられた「嫩鴿肥鶏」のネオンサイン

龍華酒店は、香港で最も古いホテルのひとつである。建物は戦前の1938年に建てられ、当初はオーナーである鍾秀長の家族の別荘として使用された。九龍塘の住宅建築を模して建てられた二階建ての別荘は、その長方形の外観から地元の村人たちに「四方楼」と呼ばれていた。

日本軍政期、この鍾家別荘は日本軍によりその敗戦まで接収され、軍隊の司令部として使用された。一部は馬小屋として用いられ、周囲の空き地は駐屯地として使用された。戦後建物が返還されると、1951年から、龍華酒店は沙田で最初に開業したホテルとなった[5]。下層はレストラン、上層が客室として構成されており、客室は当初は8室のスイートルームのみであったが、後に12室に増設された。当時の主な顧客は、近隣の何東楼中国語版にあった華僑工商学院(後に他の書院と合併し、中文大学聯合書院となる)の教職員と学生であった。また、龍華酒店は「龍華乳鴿」や「生滾鶏粥中国語版」を初めて創作したことでも知られている。特に看板にある「嫩鴿肥雞」の語は、同学院の校長であった王淑淘女史の手によるものである[6]

龍華酒店は創業当初、広大な敷地を有していた。現在の沙田警察署が建っている場所は、当時のホテルの駐車場であり、その駐車場のすぐ外側は、まだ埋め立てが行われていなかった時代の沙田海であった。後年、九広鉄路の拡張工事が行われるに際し、鉄路を直線化する必要が生じたため、政府は鍾氏一族と協議の上、ホテルの大部分の土地を収用することとなった。

当時、政府は鍾氏に対し、土地の交換および代替地の補償を約束したが、今日に至るまでその問題は未だ結論に至っていない。

龍華乳鴿

美食家の唯霊中国語版は、沙田には三つの名物があると称している。それは「山水豆腐花」、「明火靚雞粥」、「龍華乳鴿」であった。かつて龍華では一日に六千羽もの乳鴿を売り上げた記録があり、現在でも一日に千羽以上が販売されている。龍華酒店では鳩専門の料理人を雇い、26日以内に孵化した若鳩のみを使用している。鳩は深圳の自社農場で飼育され、重さに応じて「皇鴿(約11〜12両)」または「頂鴿(約8〜10両)」に分けられる。鳩はまず熱湯で煮られ、滷水(香辛料入りの醤油ベースの煮汁)に漬けて火を通し、皮に麦芽糖を塗った後に揚げることで、皮は香ばしくパリッとした食感と色鮮やかさを保っている。

龍華生活文化村

龍華酒店は2009年に「龍華生活文化村」を設立し、展覧会の開催に加え、多くの著名人や文化人を招いて座談会を開き、文化保存の推進を図った。最初のイベントは10月2日に正式に開催された《昔日童玩遊戲展》であり、会場は龍華の麻雀部屋を改装した展示ホール「懐かしの舞台」となった。また、龍華大花園にある二つの麻雀亭は、文化財の写真展示や龍華博物館として再利用された。

交通

港鉄沙田駅より、新城市中央廣場(IKEA沙田分店)方向に向かって徒歩約10分。バスやミニバスを利用する場合は、瀝源邨で下車すると便利である。瀝源邨からも徒歩約十分、沙田警察署横の歩道橋を使って東鉄線の線路を渡ることができる。

出典

  1. ^ 名店推荐:陈年卤水VS招牌烧汁 香港乳鸽王”. 2011年6月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年3月17日閲覧。
  2. ^ 肥彭挑戰港式小食[リンク切れ]
  3. ^ “特稿 名氣雖大 屢遭劣評” (中国語). hk.apple.nextmedia.com. (2011年12月7日). オリジナルの2012年4月9日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20120409052020/http://hk.apple.nextmedia.com/template/apple/art_main.php?iss_id=20111207&sec_id=4104&subsec_id=11867&art_id=15869314 2011年12月7日閲覧。  {{cite news}}: |publisher=では太字とイタリック体は使えません。 (説明)
  4. ^ 李龍基的港澳回憶歌集”. 2008年5月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年3月17日閲覧。
  5. ^ 龍華酒店” (中国語). 港文化18區. 文化葫蘆. 2025年8月29日閲覧。
  6. ^ 龍華酒店 – 沙田” (中国語). 香港老舖記錄冊 (2025年1月27日). 2025年8月29日閲覧。

参考文献

外部リンク




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