鈴木砂紅

現代俳句データベース(人名)

鈴木砂紅

鈴木砂紅の俳句

あおによし故国ことごとく青葉

えんまこおろぎ記憶にはございません

にんげんにそろそろ飽きて古雛

ねこじゃらし誰か遊んでくれないか

ふるあめりかに凌霄の花散るよ

みほとけのじひのなかゆびねむのはな

みんな死ぬ暗黒映画ところてん

アカギレを知らず月光仮面を知らず

シベリアへ旅立って行く羽根枕

ボジョレ・ヌーボー今夜は鍵を開けておく

一段とおしゃべり今夜の皸

三島忌のうどんはおかめがよろしかろ

伊邪那岐を呼ばう伊邪那美うしがえる

八月十五日人差指が我をさす

動かざることも戦い牛蛙

嘘のはんぺん鬱の大根おでん鍋

大正昭和乱切りにしてのっぺい汁

少年探偵団復活の桜騒

愛国も売国もみな着ぶくれて

扇子ゆるやか恍惚の黒い椅子

日盛りを来てくっきりと押す拇印

棘のない薔薇買っている　さみしい

浮遊する午前零時の黒日傘

爽やかやとげ抜き地蔵に刺あずけ

男雛女雛たたかい既に始まりぬ

稲架一列きょうは天覧日和です

立春大吉イージス艦がやって来る

立葵いまも黒船見ておりぬ

竹夫人紅差指はもういらぬ

蟷螂に斧にんげんにオノマトペ

西行のころもの白さ花の闇

赤紙の来そうな戸口柊挿す

銃殺のような目隠し雛納め

雹打って昭和の肌のたるみかな

青葉光永遠に読む金次郎