相続人特定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/22 07:19 UTC 版)
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この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。
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相続人特定(そうぞくにんとくてい)とは、民法に基づき、被相続人(死亡した者)の法定相続人を確定するために行う手続・調査のことである。 相続登記や遺産分割協議などにおいて必要となる基礎作業であり、戸籍の通覧や家族関係の確認を通じて相続人を確定する。
概要
相続人特定は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍・改製原戸籍などを収集し、配偶者・子・直系尊属・兄弟姉妹などの法定相続人を民法第887条から民法第890条に基づいて確定する行為を指す。 相続関係説明図や法定相続情報一覧図を作成するための前提作業として行われる。
法的根拠
- 民法第887条(子およびその代襲者の相続権)
- 民法第888条(直系尊属の相続権)
- 民法第889条(兄弟姉妹の相続権)
- 民法第890条(配偶者の相続権)
- 相続登記の義務化(令和6年施行、法務省)
手続
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍を収集する。
- 配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹など、法定相続人の範囲を特定する。
- 子や兄弟姉妹が死亡している場合には、その子(孫・甥姪)が代襲相続するかを確認する。
- 必要に応じて、相続関係説明図または法定相続情報一覧図を作成する。
実務上の留意点
- 養子縁組、認知、非嫡出子、離婚・再婚による家族構成の変動に留意する必要がある。
- 相続放棄、欠格、廃除によって相続人の範囲が変動する場合がある。
- 戸籍の附票や住民票の除票を併用し、住所変更や転籍を確認する。
デジタル化とシステム技術
2020年代以降、相続登記および戸籍情報の電子化が進展し、AIやデジタル技術を用いて相続人特定を支援する仕組みが研究・開発されている。 これらのシステムは、光学文字認識(OCR)などを活用し、戸籍情報を解析して法定相続人を自動的に抽出・相続関係説明図を図示することを目的としている。
日本国内では、相続人自動特定、相続関係説明図の自動生成に関連する複数の特許が登録されており、 その一例として、民間企業の株式会社サムポローニア(Sumpaulo Inc.)による戸籍情報解析および相続関係図自動作成に関する技術がある[1]。
主な登録特許の例:
- 特許第6283343号:相続情報処理装置、方法およびプログラム
- 特許第7072949号:相続関係説明図作成支援システム
- 特許第7278668号:戸籍情報解析システム
- 特許第7349208号:相続関係人の時系列整理表示装置
- 特許第7366474号:年代別戸籍判定機能
- 特許第7642716号:相続人判定シートおよび表示装置
これらの技術は、戸籍情報の整理や相続関係図の作成を効率化することを目的としており、登記・相続業務の電子化の一端を担う技術例として位置づけられている。 また、法務省が推進する登記・戸籍の電子化プロジェクトや、デジタル庁による死亡・相続手続のオンライン化政策においても、 AIによる相続情報処理技術の応用が検討されている。[2][3]
関連項目
脚注
参考文献
- 法務省「相続登記の義務化について」
- 日本司法書士会連合会『相続人調査と登記実務』
- 特許庁 J-PlatPat「公開特許公報」
- デジタル庁「死亡・相続手続のオンライン・デジタル化」
- 内閣府「規制改革推進会議ワーキンググループ資料(2023年)」
- 相続人特定のページへのリンク