大竹照子

現代俳句データベース(人名)

大竹照子

大竹照子の俳句

しづけさの集まつてゐる蟻地獄

わが鬱の色のあぢさゐばさと切る

ルノアール風紫陽花の表現力

三線を蛇の抜け出す午前二時

保護色となりて声上ぐ雨蛙

先生に横向きのまま卒業す

凍滝やすぎきし時間かがやきぬ

噴水のこれまでという高さかな

墨磨りて二階は離島冬の雲

夏の白鳥半分人になつてをり

夕焼色のバスが一台来て停まる

夕立なか野鯉のやうな下校生

大寒やポストの音に深さあり

宇宙船めく夕暮の盆の家

快楽とは堰を落ちゆく花筏

抱つこせぬ約束の児のゐのこづち

春愁を宥めるように墨を磨る

昼の蚊が鏡の中に棲みつきぬ

月光のメスを入れたる蟬の羽化

月光の畳を歩く浮力かな

朧夜の奥よりホームズの足音

松過ぎのひとりの音に籠りたる

梅雨晴れの真ん中にある小学校

正論やマフラー膝に折りたたみ

水仙を活けてしばらく正座する

花の夜のプラットホームの浮力感

萬の向日葵同じ方むく怖さ

蛇の残像裏口を開けるたび

転た寝の只今石鹸玉のなか

障子貼る昭和の家の声したり

雑踏の中のさみしき素足かな

青梅雨の青に染まりし首の冷え

面影に歩幅のありて十三夜

鶏頭の中の一本兜太かな

麦の芽をわが精神の色とせり