シャイニー・ビースト
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/15 18:39 UTC 版)
『シャイニー・ビースト(バット・チェイン・プラー)』 | ||||
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キャプテン・ビーフハート・アンド・ザ・マジック・バンド の スタジオ・アルバム | ||||
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ジャンル | ブルース・ロック | |||
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プロデュース |
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キャプテン・ビーフハート・アンド・ザ・マジック・バンド アルバム 年表 | ||||
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『シャイニー・ビースト(バット・チェイン・プラー)』(Shiny Beast (Bat Chain Puller))は、ドン・ヴァン・ヴリートが率いるキャプテン・ビーフハート・アンド・ザ・マジック・バンドが1978年に発表した通算10作目に相当するアルバムである[注釈 1]。
解説
経緯
1976年の春、ヴァン・ヴリートは、元メンバーのジョン・フレンチ(ドラムス、ギター)、デニー・ウォーリー(ギター)、ジェフ・モリス・テッパー(ギター)、ジョン・トーマス(キーボード)と新しいキャプテン・ビーフハート・アンド・ザ・マジック・バンドを結成して、アルバム『バット・チェイン・プラー』を製作した[1]。この作品はヴァン・ヴリートの旧友フランク・ザッパ[注釈 2]がエグゼクティブ・プロデューサーを務めて、ザッパと彼のマネージャーであるハーブ・コーエンが共同で設立して経営していたディスクリート・レコードから発表されることになっていた。しかしザッパとコーエンが経営を巡って対立して互いを告訴するという状況に陥り、ディスクリート・レコードの先行きは全く不透明になっていた[2]。そのような状況下で『バット・チェイン・プラー』はお蔵入りになり、オリジナル・テープはザッパに保管されたままになってしまった[注釈 3]。
『バット・チェイン・プラー』が制作されてまもなく、トーマスと再度フレンチが離脱し、テッパーの親しい友人で彼にキャプテン・ビーフハート・アンド・ザ・マジック・バンドの音楽を聴くきっかけを与えたキーボーディストのエリック・ドリュー・フェルドマンと、フェルドマンの友人だったドラマーのゲイリー・ジェイが加入した[3]。彼等はさらにヴァン・ヴリートの従兄弟で以前客演者として参加したヴィクター・ヘイデン(アルト・サクソフォーン、バスクラリネット)を再び客演者に迎えて、1976年末から1977年初めにかけてリハーサルを繰り返し、幾つかのライブ活動を行なった。そしてジェイが離脱してフレンチが仮メンバーとして一時復帰した後、テッパーやフェルドマンと同じように長年に亘ってキャプテン・ビーフハート・アンド・ザ・マジック・バンドの音楽を愛聴してきたドラマーのロバート・ウィリアムスが加入した[4]。
ヴァン・ヴリート、ウォーリー、テッパー、フェルドマン、ウィリアムスのキャプテン・ビーフハート・アンド・ザ・マジック・バンドは1977年10月31日に初舞台を踏み、11月にはフランス社会党がパリで開いた慈善コンサートに出演した[5]。彼等は1978年2月にツアーを終えると、新曲のデモ・テープを録音してワーナー・ブラザーズと交渉して、新作アルバムを制作することになった[6]。そして離脱したウォーリーの後任に選ばれたフェルドマンの旧友のリチャード・レダス[7](ギター)と、1975年のライブ活動でメンバーだったブルース・ファウラー(トロンボーン)を迎えて、6月6日から8月27日までサンフランシスコのオートマットで本作を製作した。ヴァン・ヴリートは、ワーナー・ブラザーズのA&Rでジャズ・ミュージシャンでもあるピート・ジョンソン(Pete Johnson)[8]と共同でプロデューサーを務め、元メンバーのアート・トリップ(マリンバ、パーカッション)が客演した[9]。
内容
収録曲のうち、「フロッピー・ブート・ストンプ」「ハリー・アイリーン」「バット・チェイン・プラー」「オウド・トゥ・アレックス」の4曲は当時未発表だった『バット・チェイン・プラー』の同名収録曲の再録音版、「エイプス・マ」は『バット・チェイン・プラー』の同名収録曲と同様のホーム・レコーディングである[10]。
「オウド・トゥ・アレックス」は1966年に書かれ、ヴァン・ヴリートと共にキャプテン・ビーフハート・アンド・ヒズ・マジック・バンドの結成の中心人物だったギタリストのアレックス・セント・クレアについての曲である[11]。
収録曲
作詞・作曲の記載がない収録曲はDon Van Vliet作である。邦題は日本盤CD[12]に準拠。
オリジナルLP
CD
# | タイトル | 作詞・作曲 | 時間 |
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1. | 「フロッピー・ブート・ストンプ The Floppy Boot Stomp」 | ||
2. | 「トロピカル・ホット・ドッグ・ナイト Tropical Hot Dog Night」 | ||
3. | 「アイス・ローズ Ice Rose」 | ||
4. | 「ハリー・アイリーン Harry Irene」 | ||
5. | 「ユー・ノウ・ユーアー・ア・マン You Know You're a Man」 | ||
6. | 「バット・チェイン・プラー Bat Chain Puller」 | ||
7. | 「ホウェン・アイ・シー・マミー・アイ・フィール・ライク・ア・マミー When I See Mommy I Feel Like a Mummy」 | ||
8. | 「オウド・トゥ・アレックス Owed t' Alex」 | Don Van Vliet, Herb Bermann | |
9. | 「キャンドル・マンボ Candle Mambo」 | ||
10. | 「ラヴ・ライズ Love Lies」 | ||
11. | 「サクション・プリンツ Suction Prints」 | ||
12. | 「エイプス・マ Apes-Ma」 | ||
合計時間:
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参加ミュージシャン
- キャプテン・ビーフハート・アンド・ザ・マジック・バンド
- キャプテン・ビーフハート Captain Beefheart – ヴォーカル、ハーモニカ、ソプラノ・サクソフォーン、口笛
- ブルース・ファウラー Bruce Fowler – トロンボーン、エアー・ベース
- ジェフ・モリス・テッパー Jeff Moris Tepper – スライド・ギター、ギター、スペル・ギター
- エリック・ドリュー・フェルドマン Eric Drew Feldman – シンセサイザー、ローズ・ピアノ、グランド・ピアノ、ベース・ギター
- ロバート・ウィリアムス Robert Williams – ドラムス、パーカッション
- リチャード・レダス Richard Redus[7] – スライド・ギター、ボトルネック・ギター、ギター、アコーディオン、フレットレス・ベース
- 客演
- アート・トリップ Art Tripp – マリンバ、パーカッション
脚注
注釈
- ^ 1960年代に発表した3作のアルバムと『ミラー・マン』(1971年)はキャプテン・ビーフハート・アンド・ヒズ・マジック・バンド名義だった。『ミラー・マン』はヒズ・マジック・バンド時代の1967年の未発表音源集である。『ザ・スポットライト・キッド』(1972年)はキャプテン・ビーフハート名義だった。
- ^ ヴァン・ヴリートとザッパはカリフォルニア州ランカスターのアンテロープ・バレー・ハイ・スクールの同級生。R&Bのレコード鑑賞を通じて親交を深め、やがてザッパがギター、ヴァン・ヴリートがボーカルを担当して録音するようになった。1964年、ヴァン・ヴリートはザッパと共同制作していたSF映画の主人公の名前であったキャプテン・ビーフハートを自分のステージ名にした。1968年、ザッパはキャプテン・ビーフハート・アンド・ヒズ・マジック・バンドを自分が同年に設立したストレイト・レコードに招き、『トラウト・マスク・レプリカ』(1969年)のプロデューサーを務めた。この作品の制作を巡って2人の関係は険悪化して、1970年代前半にはすっかり疎遠になっていた。しかし、1974年にキャプテン・ビーフハート・アンド・ザ・マジック・バンドが消滅して一人になったヴァン・ヴリートは、1975年のザ・マザーズ・オブ・インヴェンションの国内ツアーに参加し、同年2人はザッパ/ビーフハート/マザーズの名義でライブ・アルバム『ボンゴ・フューリー』を発表した。
- ^ 1993年にザッパ、2010年にヴァン・ヴリートが病没した後、2012年にザッパの遺族によってキャプテン・ビーフハート名義の『バット・チェイン・プラー』として発表された。
出典
- ^ Barnes (2011), pp. 224–229.
- ^ Barnes (2011), p. 237.
- ^ Barnes (2011), pp. 235–236.
- ^ Barnes (2011), pp. 237, 239–240.
- ^ Barnes (2011), pp. 240–241.
- ^ Barnes (2011), p. 244.
- ^ a b “Discogs”. 2025年4月27日閲覧。
- ^ “Discogs”. 2025年4月27日閲覧。
- ^ Barnes (2011), pp. 244–248.
- ^ Barnes (2011), p. 248.
- ^ Barnes (2011), pp. 232–233.
- ^ “Discogs”. 2025年4月26日閲覧。
引用文献
- Barnes, Mike (2011). Captain Beefheart: The Biography. London: Omnibus Press. ISBN 978-1-78038-076-6
関連項目
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