エミレーツ航空のビジネスモデル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/24 13:37 UTC 版)

「エミレーツ航空のビジネスモデル」では、エミレーツ航空のビジネスモデルについて説明する。
一部の業界アナリストは、ドバイ国際空港を巨大拠点として運用しているため、座席あたりにかかっているコストがライアンエアーに次ぐ2番目の低さであると分析している。そのため、ドバイを乗り継ぎハブとして整備、運用することで、巨大な利益をあげている。
エミレーツ航空は、航空連合に加盟していないことも特徴である(2000年にスターアライアンスに加盟する計画も存在したが、実現していない)。それは、アライアンスの中心メンバー以外の各社が、中心メンバーの利益というアライアンス目標を押し付けられることを理由としている。
1995年以来、エアバスA380とボーイング777の2機種の大型機の身を運用しているのも特徴。この機材戦略により、多様な機種を運用する他社と比較して、座席当たりのコストが低くなり、収益性を高めている。また、ドバイ国際空港は24時間運用のハブ空港であるため、乗り継ぎ需要を取り込みやすく、競合他社よりも高い利用率を達成している。また、ドバイには労働組合がなく、安価な労働力が豊富にあるため、競合他社よりも人件費が低くなっているのも、高い競争力の一因となっている。
不正競争という批判

ヨーロッパ、北米、オーストラリア地域で特に高いシェアを誇り、ドバイを巨大な乗り継ぎハブとして運用するエミレーツ航空の戦略は、エールフランス-KLM、ルフトハンザドイツ航空、ブリティッシュエアウェイズ、エアカナダ、デルタ航空、アメリカン航空、カンタス航空、ニュージーランド航空などが大きな脅威に挙げるなど、世界中に影響力を持つ。
その中でも、エールフランス航空、デルタ航空、カンタス航空などは、エミレーツ航空が非公式に国家から補助金を受け取っており、ドバイの空港当局および航空当局との関係が緊密すぎると非難している。また、エミレーツ航空が政府株主の主権借り手の地位を利用して、借入コストを市場金利以下に削減し、政府補助金によって正確なの財務状況が隠されていると批判している。
燃料補助金
世界各国の多くの航空会社が、エミレーツ航空がドバイ政府から燃料補助金を受け取っているとして非難している。エミレーツ航空はこれらの批判を否定し、他社と同価格、同条件で燃料を購入していると主張した。
空港利用料
また、競合他社から、本拠地のドバイ国際空港の空港利用料を割引価格で支払っているとも批判されている。エミレーツ航空はこれらの批判も否定し、ドバイでも他空港と同じ利用料金を支払ったと主張した。
地方税
さらに、UAEに所得税や法人税が課されておらず、エミレーツ航空も、税を支払う必要がないため不当な優位性を持っているとして批判されている。エミレーツ航空は、ドバイ発着便の全航空会社がこの非課税環境の恩恵を受けることを明確にし、この批判を却下した。
エミレーツ航空とドバイ政府の関係
エミレーツ航空は、政府から補助金を受け取り、不公平な競争上の優位性を得ているという競合他社の非難に対しては、ドバイ政府が完全所有しているにもかかわらず、ドバイ政府から距離を置いて運営されている本格的な営利企業であると主張している。
有利な人件費
一部の航空会社は、ドバイを拠点にすることで、不当な人件費の優位性を得ていると主張している。これに対しては、他社と同じように、世界中から社員を採用、維持するためのコストに直面していると述べて反論している。エミレーツ航空は、駐在員の福利厚生の総費用は年間4億米ドル以上に達すると主張している。
カナダ路線の拡大

エミレーツ航空は、2007年10月29日にカナダへの乗り入れを開始し、ドバイ-トロント線で週3便の直行便運航を開始した。
エミレーツ航空は、就航以来、カナダ路線で非常に高い搭乗率を獲得しており、平均は90%にもなる。その結果、ボーイング777-300ERだった機材も、エアバスA380に大型化された。しかし、UAEとカナダの間の二国間協定では、ドバイとカナダ間の運航が週3便のみに制限されており、これ以上の拡大ができない状況だった。エミレーツ航空は、ドバイ-トロント間を毎日運航することに加えて、カルガリー、モントリオール、バンクーバーに就航する計画を発表したが、カナダ政府は、拡大の意思を示さなかった[1]。
カナダ政府は、自国のフラッグキャリアであるエア・カナダが、エミレーツ航空との競争激化によって悪影響を受ける可能性を指摘した。 エミレーツ航空はこれに反論し、エア・カナダが中東、アフリカ、インド亜大陸地域に就航していなかったため、直接的な競争はないと述べた。さらに、エミレーツ航空は、カナダ人乗客の多くがトロント経由でドバイに向かうため、これはエア・カナダに利益をもたらすと述べた。
2022年、エア・カナダと、コードシェア提携、マイレージ提携、相互ラウンジ利用を含む、戦略的パートナーシップを発表した。その結果、エア・カナダがバンクーバー-ドバイ線を週4便、エミレーツ航空がモントリオール-ドバイ線を毎日運航で開設すると発表した[2]。
ドイツ路線

1987年7月、ドバイ-フランクフルト線の定期便運航を開始し、2009年時点で、フランクフルト、ミュンヘン、デュッセルドルフ、ハンブルクに旅客便を週49便運航していた。また、貨物便も週11便運航していた。ドイツは、英国に次ぐエミレーツ航空にとってヨーロッパで2番目に大きな市場であり、2007/08年度には、100万人以上の乗客が利用した。
2009年3月、ルフトハンザドイツ航空が、ドイツ-ドバイ路線において、競争の不均衡があると主張し、UAEの航空会社が乗り継ぎ客を盗んだとして非難した。また、ドバイ空港使用料がエミレーツ航空は割引されており、両社の境遇が不平等であると主張した。
エミレーツ航空はルフトハンザの主張に反論し、ドイツ路線の拡大は、両国間の航空輸送市場を刺激し、経済活動を生み出すことでドイツ経済を実際に成長させ、双方にとって「win-win」の状況をもたらすだろうと指摘した。
なお、エミレーツ航空は、ドイツ発着の国際線価格主導権を停止し、ビジネスクラス運賃を最大20%値上げするよう命令された。エミレーツ航空重役は、ドイツ連邦貨物輸送局の決定を「反消費者」で「商業的に無意味」と批判した[3]。
関連項目
脚注
- ^ “Air Canada proposed Emirates deal in 2006: documents”. The Globe and Mail. (2011年1月13日) 2023年5月18日閲覧。
- ^ “Emirates to expand global network with launch of services to Montréal in July”. Emirates. 2023年5月18日閲覧。
- ^ “AIRwise (Hub Page > Airwise News > Airline News > Germany tells non-EU airlines to raise prices, 19 November 2009)”. 2016年6月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年11月20日閲覧。
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