アルバート・S・カイル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/27 02:14 UTC 版)
アルバート・S・カイル(Albert S. Kyle)は、アメリカ合衆国のファイナンス学者であり、マーケット・マイクロストラクチャーの分野における先駆的な研究で知られている。現在、メリーランド大学ロバート・H・スミス・スクール・オブ・ビジネスのチャールズ・E・スミス記念教授を務めている[1]。
2025年に来日して、東京都立大学で研究報告をしている[2]。
経歴
1973年にワシントン大学にて学士号(BA)を取得し、1981年にシカゴ大学で経済学の博士号(Ph.D.)を取得した。博士論文では、市場の流動性と価格形成に関する理論的研究を行った。
その後、カーネギーメロン大学、プリンストン大学、デューク大学、コーネル大学、ノースウェスタン大学のケロッグ経営大学院などで教鞭を執った。2006年より、メリーランド大学ロバート・H・スミス・スクール・オブ・ビジネスのチャールズ・E・スミス記念教授に就任している。
学術的業績
カイル教授は、1985年に発表した論文「Continuous Auctions and Insider Trading」において、情報を持つトレーダー(インサイダー)が市場に与える影響を分析する「カイル・モデル(Kyle Model)」を提示した。このモデルは、マーケット・マイクロストラクチャー理論の基礎的枠組みとして広く引用されている。
また、カイルは金融市場の流動性、価格発見、マーケットメイキング、インサイダー取引に関する数多くの論文を発表しており、実証・理論の両面で市場の構造的理解に貢献してきた。近年では、金融市場におけるブロックチェーンや暗号資産(仮想通貨)のマイクロストラクチャーにも関心を示している。
栄誉・受賞歴
- 2002年:Econometric Society フェローに選出[3]
- 2014年:American Finance Association(米国ファイナンス学会) フェローに選出[4]
- 2018年:CME Group–MSRI Prize in Innovative Quantitative Applications を受賞[5]
主な著作
- Kyle, A. S. (1985). "Continuous Auctions and Insider Trading." Econometrica, 53(6), 1315–1335.
- Kyle, A. S. (1989). "Informed Speculation with Imperfect Competition." Review of Economic Studies, 56(3), 317–355.
- Kyle, A. S., & Obizhaeva, A. (2016). "Market Microstructure Invariance: Theory and Empirical Tests." Econometrica, 84(4), 1345–1404.
関連項目
脚注
- ^ “Albert “Pete” Kyle | Robert H. Smith School of Business”. www.rhsmith.umd.edu. 2025年7月26日閲覧。
- ^ “第41回研究会 | 金融工学研究センター”. 2025年7月26日閲覧。
- ^ “2005 Election of Fellows to the Econometric Society” (英語). Econometrica 74 (3): 827–832. (2006). doi:10.1111/j.1468-0262.2006.00686.x. ISSN 1468-0262 .
- ^ “Fellows” (英語). The American Finance Association. 2025年7月27日閲覧。
- ^ “Pete Kyle’s Enduring Influence On Market Structure”. 2025年7月27日閲覧。
外部リンク
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