AUSSOM
アフリカ連合ソマリア支援安定化ミッション African Union Support and Stabilization Mission in Somalia | |
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Hawlgalka Taageerada iyo Xasilinta Midowga Afrika ee Soomaaliya | |
![]() AUSSOMの関係者、2025年1月 | |
指導者 | モハメド・エル・アミン・スエフ |
活動期間 | 2025年1月1日 - 実施中 |
本部 | モガディシュ |
関連勢力 |
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敵対勢力 |
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ウェブサイト | https://au-ssom.org/ |
アフリカ連合ソマリア支援安定化ミッション (African Union Support and Stabilization Mission in Somalia, AUSSOM) は2025年1月から活動を開始した、アフリカ連合によるソマリアの平和維持と安定化を目指した作戦。アフリカ連合ソマリア移行ミッション (ATMIS)に代わる作戦としてスタートした。
経緯
背景
2006年末にエチオピアがソマリア南部のイスラーム武装勢力イスラム法廷会議の駆逐に成功した後、アフリカ連合軍がソマリアの治安を維持するためにAMISOMという作戦名で駐留した。その資金源は欧州連合とアメリカ合衆国であり、ソマリア軍の活動が軌道に乗るまでの短期間の作戦のはずだったが、別のイスラーム反政府勢力アル・シャバブの活動が盛んになったため、10年以上に長引いた。そこで欧州連合とアメリカ合衆国の要望で徐々にソマリア軍に役割を引き継いで撤退することになり、2022年からその作戦がATMISの名で始められた。2023年に約1万8500人の兵士のうち5千人が撤退し、2024年6月末までにさらに4千人が撤退することになっていたが、ソマリア軍の育成が難航し、ソマリア政府は2024年6月末の段階の撤退を6カ月間延長する要請を出した[1]。
計画
ATMISが順調には進まなかったため、ATMISの問題点を調整した新たな作戦が検討され、2024年8月1日、アフリカ連合の安全保障理事会にて「アフリカ連合ソマリア支援安定化ミッション」(African Union Support and Stabilization Mission in Somalia, AUSSOM) の名で進められることとなった[2]。
AUSSOMの規模は、軍人11,146人、警官680人、民間人85人とされた[3]。
しかしATMISの主力の一つであるエチオピアが、2024年1月のエチオピアとソマリランドのMoU署名でソマリアの主権を侵しているともとれる動きに出たので、ソマリア政府はエチオピア軍がAUSSOMに参加するのに難色を示した[4]。ソマリア外務省は、イスラーム武装勢力アル・シャバブの活動が盛んなのはエチオピアのせいだとまで述べた[5]。ただしエチオピア政府は治安上、隣国ソマリアでイスラーム武装勢力が活動している状況を放置できず、ソマリアの治安維持活動への参加を希望した[6]。
2024年8月の報道で、エジプトがAUSSOMに参加すると伝えられた[7]。エジプトはAUSSOMの前の作戦であるATMISには参加していなかったが、エチオピアに代わる支援国を探しているソマリア政府と、エチオピアと対立傾向にあるエジプト政府の思惑が一致したため実現したとの分析がある[8]。なお、ATMISの参加国であるウガンダとケニアはエジプトの参加に懸念を示した[9]。エチオピアもまた、エジプトの参加に疑問を呈した[10]。
2024年8月の時点では、AUSSOMの参加国の選定は難航していた。ジブチは参加を表明していたが、ブルンジ、ケニア、ウガンダがこの時点では参加を表明していなかった[11]。そこで2024年10月、ソマリア大統領はAUSSOMへの協力を求めるため、ATMIS参加国であるジブチ、ブルンジ、ウガンダ、ケニアを訪問した[9]。その上で、AUSSOMへの派遣国を決めるのはソマリア政府だと強調した[12]。
ソマリアとエチオピアは12月になってようやくトルコの仲介で「両国はソマリアの主権下でエチオピアが海にアクセスできるよう、相互に利益のある商業協定を結ぶよう努める」ということで合意した[13][14]。これを受けてあるソマリア政府の高官は、AUSSOMにはブルンジ、ジブチ、ケニア、ウガンダの4カ国が参加するが、エチオピアの参加も再考する用意があると語った[15]。
2024年12月27日、AUSSOMは国際連合安全保障理事会でも決議された。これは21日に決議されたアフリカへの支援に関する決定の一部という位置づけだった。ただしアメリカ合衆国は、21日の決議を27日の決議に適用するのは好ましくないとして当初は反対し、最終的には反対ではなく棄権とした。これにより、AUSSOMには75%を上限として国連拠出金から出されることになった[16]。なおロシアは「西側諸国がウクライナに出した2385億ドルに対して少なすぎ、偽善的だ」と述べている[17]。
2007年からソマリア駐留軍として参加しているブルンジは、派遣する軍の規模についてソマリア政府と折り合いがつかず、AUSSOMには不参加となった[18]。
開始後
2025年1月11日、ブルンジ軍はAUSSOMに参加させるため、として新たに115人の兵士をソマリアに派遣した。ただしこの時点ではブルンジ軍はAUSSOMに参加することになっていない。また、この時点ではATMISの残留部隊との位置づけで2200人をソマリアに駐留させていた。ブルンジがソマリア駐留にこだわるのは、最終的には欧米が負担することになる派遣兵士への給与支払いを期待しているためである、との分析もある[19]。
2025年1月12日、ソマリア外務大臣は、エチオピアがAUSSOMに参加する障害は取り除かれたとして、AUSSOMの部隊再編が課題だと述べている[20]。
2025年1月23日、アフリカ連合委員会は、AUSSOMにかかわりのあるブルンジ、ジブチ、エジプト、エチオピア、ケニア、ウガンダの会合を招集した[21]。
2025年1月27日、ソマリア政府はAUSSOMにエジプト国防軍が参加する事について、エジプト政府がアフリカ連合を通じて参加を要請してアフリカ連合に認められた、と発表した。AUSSOMに参加する各国兵士の割り当ては、ソマリアがこれから決定するとされている[22]。
2025年1月28日、ウガンダ軍は、撤退するブルンジ軍に代わってブルンジ軍の担当地区が新たにウガンダ軍に割りあげられたと発表した[23]。
参考文献
- ^ Sheikh, Abdi (2024年6月20日). “Exclusive: Somalia asks peacekeepers to slow withdrawal, fears Islamist resurgence”. Reuters. 2025年2月23日閲覧。
- ^ “AU Launches New Somalia Mission Amid Rising Rivalry and Funding Challenges” (English). hornobserver.com (2024年8月8日). 2024年10月27日閲覧。
- ^ “New AU-Led Mission, AUSSOM, to Replace ATMIS in Somalia Starting January 2025” (英語). Mustaqbal Media (2024年8月8日). 2024年10月21日閲覧。
- ^ “Somalia: Ethiopian troops cannot be in AUSSOM, unless Somaliland deal nixed”. VOA. (2024年8月23日) 2025年2月19日閲覧。
- ^ “Somalia blames Ethiopia for resurgence of Al-Shabaab amid strained relations” (英語). Garowe Online (2020年6月30日). 2024年10月23日閲覧。
- ^ “Ethiopia Lobbying to Maintain Troop Presence in Somalia” (英語). Mustaqbal Media - (English) (2025年1月2日). 2025年1月2日閲覧。
- ^ “African Union to Launch New Support and Stabilization Mission in Somalia” (英語). Garowe Online (2020年6月30日). 2024年10月27日閲覧。
- ^ “AUSSOM: Egypt Steps Into Somalia As Ethiopia Likely Stepping Out”. media Saxafi. (2024年8月8日) 2025年2月23日閲覧。
- ^ a b “HSM's Regional Push For AUSSOM Faces Opposition” (英語). Saxafi Media (2024年10月24日). 2024年10月27日閲覧。
- ^ “We must be consulted in formation of AUSSOM, Ethiopia insists” (英語). Garowe Online (2020年6月30日). 2024年10月20日閲覧。
- ^ ““AUSSOM” New AU Mission in Somalia; Burkina Faso Reaches Boiling Point”. Critical Threats. (2024年8月22日) 2025年2月23日閲覧。
- ^ “Somalia’s Stance on Sovereignty and Ethiopia’s Role in the African Union Stabilization Mission (AUSSOM) – MFA – The Ministry of Foreign Affairs & International Cooperation” (英語). 2024年10月23日閲覧。
- ^ “Wafdi sare oo ka socda Itoobiya oo gaaray Muqdisho” (ソマリ語). Voice of America (2025年1月2日). 2025年1月2日閲覧。
- ^ “Ethiopia and Somalia reach deal in Turkey to end Somaliland port feud” (英語). BBC News (2024年12月12日). 2024年12月21日閲覧。
- ^ “Somalia 'open' to Ethiopian troop role” (英語). Voice of America (2024年12月19日). 2024年12月28日閲覧。
- ^ “ソマリアに関する国連安保理決議2767:日本の仕事納め”. アゴラ. (2025年1月14日) 2025年2月13日閲覧。
- ^ “Adopting Resolution 2767 (2024), Security Council Endorses New African Union Support Mission in Somalia | Meetings Coverage and Press Releases”. press.un.org. 2024年12月29日閲覧。
- ^ Ali, Faisal (2024年12月28日). “UN authorises new mission against al-Shabaab in Somalia” (英語). The Guardian. ISSN 0261-3077 2024年12月28日閲覧. "Somalia’s national security adviser, Hussein Sheikh-Ali, suggested a decision had not yet been reached on whether Ethiopian troops would be permitted to remain"
- ^ “Burundi: Ndayishimiye redeploys to Somalia aiming to tame his army's grievances”. The Great Lakes Eye. (2025年1月22日) 2025年2月23日閲覧。
- ^ “Somalia, Ethiopia to restore diplomatic ties amid AU mission agreement”. VOA. (2025年1月12日) 2025年2月23日閲覧。
- ^ “Somalia's new mission faces similar challenges as its predecessor”. The Eastleigh Voice. (2025年2月7日) 2025年2月23日閲覧。
- ^ “Somalia approves Egypt's participation in AUSSOM”. Garowe online. (2025年1月27日) 2025年2月23日閲覧。
- ^ “Uganda to increase troop deployment in Somalia after Burundi’s withdrawal”. Igihe.com. (2025年1月29日) 2025年2月23日閲覧。
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