アイダカシマリエヴァとは? わかりやすく解説

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アイダ・カシマリエヴァ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/13 07:07 UTC 版)

2019年のカシマリエヴァ

アイダ・カシマリエヴァ(Aida Kasymalieva、キルギス語:Аида Касымалиева、1984年 -)は、キルギスジャーナリスト政治家であり、2018年12月から最高会議国会)の副議長[1]を務めている。彼女は、国内における家庭内暴力誘拐婚児童婚の文脈で女性の権利を擁護してきた。

経歴

学歴と初期のキャリア

カシマリエヴァは2005年、ビシュケク人文大学を優等で卒業し、ジャーナリズムの学位を取得した[2]

彼女は10年以上にわたりジャーナリストとして活動し、児童婚や若い女性の誘拐婚(無理やりの結婚)を取材した[3]。キルギス国内ではOsh TVで働いた経験がある[4]。また、ロシアにおける女性移民の生活を幅広く取材した[5][6]。 2012年、モスクワでラジオ・アザティック(Radio Azattyk)の特派員として活動していた際、エカテリンブルクタジク語を話していたキルギス人女性が暴行される動画をTwitterで目にした。カシマリエヴァが調査を進めると、同様の動画がさらに投稿され、2012年5月29日にはキルギス国営テレビでドキュメンタリーが放映された。この放送後、多くの被害者が警察に被害届を出すようになった。カシマリエヴァは女性の権利団体「アージェント・アクション・ファンド(Urgent Action Fund)」と連携し、この最初の動画の被害女性に対する法的支援や心理サポートのための資金を集めた[7]

2005年、当時20歳のカシマリエヴァは「Developing Asia Journalism Awards」で高く評価され、翌2006年にはキルギス農村部の女性に広がるアルコール問題を扱った特集記事により、「Women and Development」部門で2位となった[8]。2016年には、女性や少女に対する暴力を扱った最優秀テレビ/ラジオ報道として、スイス大使館から賞を受けた[9]

政治経歴

2005年のキルギス議会は全員が男性であったが、その後の市民運動を受け、候補者リストの3分の1を女性とするクオータ制が導入された[4]。 カシマリエヴァは2015年の国会選挙でキルギス社会民主党から立候補したものの、候補者リストで52位だったため当選はしなかった。党が38議席を獲得したことを受け、その後別の議員が行政職などに転出したことで、2017年に議会入りした[4]。これにより、彼女は当時キルギスで最年少の女性議員となった[4][3][10]。議会では家庭内暴力児童婚の問題を主要テーマとして取り組んでいる[3]

2017年、女性問題を議会で取り上げた際、男性議員が全員退席したことが大きな議論を呼んだ。彼女は次のように語った。「補助金や道路の議題のときは男性議員は普通に座っていたのに、(ジェンダー問題の)議会討議が始まったら、全員が立ち上がって出て行った[4][11][12]」。

ジャーナリスト時代に政府を批判していたため、周囲からは「野党政治家」になると期待されていたが、本人は自らを「中道」と表現している[4]

2011年に結成された超党派の「女性議員フォーラム」のメンバーとして、女性と少女の法的保護強化に取り組んできた。その結果、キルギスでは2016年に誘拐婚と宗教的児童婚が禁止された[4]

2018年10月には、タアライクル・イサクノワ労働・社会開発大臣が外交旅券を休暇旅行に使用していたことをカシマリエヴァが暴露したことで、同大臣が辞任した[13]。[12] その後、彼女が大臣らの海外渡航に関する情報公開請求をしたことを受け、副大臣2名も辞任した[13]

2018年12月、カシマリエヴァは91票の賛成を得て、キルギス議会の副議長に選出された(反対票は16票)[14]

2019年2月には、ジュネーブで開催された「国際子ども手当会議」で登壇した[2]。またオープンガバメント国家行動計画の監視グループの議長や、社会問題・教育・科学・文化・保健委員会のメンバーも務めている[2]

2020年にはビリムディク党(Birimdik、統一党)に加入した[15]

2022年、カシマリエヴァはアントニオ・グテーレス国連事務総長に信任状を提出し、国連大使に任命された[16]

私生活

カシマリエヴァは結婚しており、一人娘がいる[17]。家族は以前ドバイで生活・就労していた[17]。2011年、彼女はモスクワで働いていた際、ビシュケクで祖父母と暮らしていた当時5歳の娘を呼び寄せるにあたり、経験した人種差別について記事を書いている[17]

また、彼女は2017年のトムソン・ロイター財団のドキュメンタリー『When Women Rule』に出演しており、ケニアのペリス・トビコ議員、ボリビアのソレダッド・チャペトン市長とともに取り上げられている[18]

著書

  • Saralaeva, L.; Kasymalieva, A.; Toralieva, G.; Turdueva, A. (2005). Prison Riot Sparks Political Row in Kyrgyzstan. Institute for War and Peace Reporting 
  • Saralaeva, Leila; Kasymalieva, Aida; Toralieva, Gulnura (2006). Kyrgyz Premier Orders Mafia Clampdown. 14. Institute for War and Peace Reporting 
  • Kasymalieva, Aida; Marat, Erica (2012). “Atambayev invites Turkey to decide on US Transit Center's future”. European Dialogue 30. 

関連項目

脚注

  1. ^ 在キルギス日本国大使館 (2025年7月1日). “キルギス共和国独立後のクロノロジー” (PDF). P.10. 在キルギス日本国大使館. 2025年11月13日閲覧。
  2. ^ a b c International Conference on Universal Child Grants”. UNICEF (2019年2月). 2019年5月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年5月4日閲覧。
  3. ^ a b c Weekes, Princess (2017年11月29日). “5 Women To Remember on International Women Human Rights Defenders Day”. The Mary Sue. 2019年5月4日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g Cardi, Valeria (2017年10月25日). “When Women Rule: Kyrgyzstan's youngest female MP puts bride kidnapping, attacks on women in spotlight”. Reuters. 2019年5月4日閲覧。
  5. ^ Trilling, David (2013年6月12日). “Kyrgyzstan Passes Controversial Girl Travel Ban”. Eurasia.net. 2019年5月4日閲覧。
  6. ^ Kupfer, Matthew (2016年9月2日). “Forgotten in Moscow, Deadly Fire Still Resonates 3,700 km Away”. The Moscow Times. 2019年5月4日閲覧。
  7. ^ Leisner, Kate (2012年8月24日). “Kyrgyz Women Beaten By Kyrgyz Men in Russia- How The Story Became Part Of One Reporter's Life”. Radio Free Europe/Radio Liberty. 2022年9月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年5月4日閲覧。
  8. ^ Journalists from India, Thailand, Cambodia, Fiji Islands Take Top Prizes at 2006 DAJA Awards”. Asian Development Bank (2006年4月20日). 2019年5月5日閲覧。
  9. ^ Embassy of Switzerland in Kyrgyzstan awarded journalists in the context of the 16 days' campaign of activism to end violence against women and girls” (2016年12月8日). 2019年5月4日閲覧。
  10. ^ John, Tara (21 October 2017). “Meet the Women Who Are Breaking Glass Ceilings All Over the World in When Women Rule”. Time. https://time.com/4991159/women-equality-in-government/ 2019年5月3日閲覧。. 
  11. ^ General, Ryan (2017年11月28日). “Kyrgyzstan's Youngest Female Minister Sheds Light on Domestic Violence, Men Refuse to Listen”. Next Shark. 2019年5月4日閲覧。
  12. ^ It's hard to believe that bride kidnapping exists in 2017”. news.com.au (2017年11月20日). 2019年5月4日閲覧。
  13. ^ a b Kyrgyzstan: Government treads water after social ministry meltdown”. Eurasia.net (2018年10月12日). 2019年5月4日閲覧。
  14. ^ Podolskaya, Darya (2018年12月27日). “Aida Kasymalieva elected Vice Speaker of Parliament of Kyrgyzstan”. 24kg news agency. 2019年5月4日閲覧。
  15. ^ Kyrgyzstan: A Guide To The Parties Competing In The Parliamentary Elections” (英語). RadioFreeEurope/RadioLiberty (2020年10月3日). 2020年10月6日閲覧。
  16. ^ New Permanent Representative of Kyrgyzstan Presents Credentials | Meetings Coverage and Press Releases”. 2025年11月13日閲覧。
  17. ^ a b c Kasymalieva, Aida (2011年12月6日). “First Person: Life In Russia As A Non-Russian Child”. Radio Free Europe/Radio Liberty. 2019年5月4日閲覧。
  18. ^ John, Tara (21 October 2017). “Meet the Women Who Are Breaking Glass Ceilings All Over the World in When Women Rule”. Time. https://time.com/4991159/women-equality-in-government/ 2019年5月3日閲覧。. 

外部リンク




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