IRA (アメリカ) IRAの転換

IRA (アメリカ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/07 19:21 UTC 版)

IRAの転換

通常IRAを持っている人は、その残高の全部或いは一部を、課税繰延分(課税前拠出の場合は元利合計、課税後拠出の場合は運用益)に関わる所得税を払うことでRoth IRAに転換(convert)することができる。その逆の転換は原則不可だが、例外としてある年度にRoth IRAに拠出した人のその年度の所得が結果的に上記の制限を超えてしまった場合は、その年度の確定申告締切り(翌年の4月15日)までに限度超過分を通常IRAに「付替え(re-characterize)」することは可能で、通常IRAの所得制限も既に超えているので拠出分の税控除はできず運用益も将来の引出し時に課税対象になるが、運用中は課税繰延されるので通常IRAに拠出(付替え)するメリットがある。

IRAの種類にかかわらず、その年度の法定拠出限度額を超えて拠出された分は、その年度の確定申告締切りまでに付替えや修正引出し(罰金なし)をしないと、超過分が口座に残っている限り毎年6%の罰金が課税される。複数の証券会社に401(k)、通常IRA、Roth IRAなど異なる種類の優遇税制退職資金を持つ場合、証券会社間で総拠出額を監視する仕組みはなく、また証券会社は個人の所得・納税状況を把握できないので、本人が注意を払う必要がある。

裏口Roth IRA転換

Roth IRAの資金は、通常IRAからの転換分に5年間の待機期間があることを除き、運用益は将来に渡り非課税でMRDの心配もないので、引出し時に運用益(と課税前拠出なら元金)に課税される通常IRAより一般的に有利であり、通常IRAからRoth IRAへの転換が金額、年齢、時期などに関係なく実施できることから、401(k)に拠出しているなどの理由でRoth IRAに課税前拠出できない高額所得者が課税後所得から一旦通常IRAに拠出後すぐにRoth IRAに転換する「裏口(back-door)Roth IRA転換[1]」と言う合法的節税手法が存在する。例えば、2015年度の年収が25万ドルの50歳のA氏はRoth IRAの所得制限を超えており拠出できないが、一旦通常IRAに課税後拠出をしてすぐに転換すれば実質的にRoth IRAに拠出できる。もちろん転換時に通常IRAに資金があった間の当該転換額に運用益があれば転換時にそれに対する所得税を払わねばならないが、拠出から転換までが短期間なら少額或いは無税(運用益がゼロまたは損失の場合)で済み、「引出し」ではなく転換なので59歳半前の引出しに関わる罰金(10%の追加税)は科されず、IRAの運営会社(証券会社など)の費用もかからないのが普通である。

Pro Rata規則

Roth IRA拠出の所得制限が骨抜きにされる裏口Roth IRA転換の抜け道に対処して、「Pro Rata(按分)規則」がある。Pro Rata規則では、当人の通常IRAと401(k)からの課税繰延ロールオーバーIRAなどすべてのIRAの資産を合算し、そのうちの課税後拠出分の割合に実際に転換される課税後拠出分を乗じた分だけが課税後拠出の転換の際に非課税となる(課税前拠出はもともと課税繰延なので転換時には全額課税対象)。例えば上記A氏が以前の勤務先の401(k)をロールオーバーしたIRAに48万4,500ドル(課税前拠出)あり、課税前拠出とその運用益合計1万ドルの残高を持つ通常IRAに課税後所得から5,500ドル拠出直後にこの課税後拠出5,500ドル全額をRoth IRAに転換すると、転換される5,500ドルの1.1%(5,500ドル÷(48万4,500ドル+1万ドル+5,500ドル))の60.50ドルだけが非課税で、残りの5,439.50ドルは所得税の対象となる。

ただし上記の合算には既に存在するRoth IRAと雇用者の提供する退職資金口座(401(k)など)は含まれないことを利用して、もしA氏が現在の勤務先に401(k)プランがありそのプランが外部ロールオーバーIRAからの資金の移転(ロールイン、再ロールオーバー)を受け入れるなら、A氏はロールオーバーIRAの資金を事前に全額401(k)に再ロールオーバーすることにより転換に関わる所得税対象を5,500ドルの約64.5%(100%-5,500ドル÷(1万ドル+5,500ドル))の3,548.39ドルに減少できる。しかし一般的にロールオーバーIRAの投資先が数百~数千の投資信託、ETF、ETPのような様々なファンドや個別株式・債券から幅広く選択できるのに対して、401(k)プランでは10~20の投資信託(と一部の上場会社では自社株式ファンド)に限定され、その会社を辞職するまでその401(k)プランから外部に(再々)ロールオーバーできないなどの制約があり、特に課税繰延ロールオーバーIRA内の資金が転換額に比べて多額の場合は、裏口Roth IRA転換で実現できる節税の利益は再ロールオーバーで生じる不利益に見合わないかもしれない。

裏口Roth IRA転換が効果的な場合もある。夫婦であってもPro Rata規則はそれぞれの配偶者のIRAに摘要される(所得税課税および所得制限の算定は夫婦合算が可能)ので、例えばA氏の妻が課税後拠出だけの通常IRAを持ち、課税前拠出の通常IRAやロールオーバーIRAなどを一切持っていなければ、彼女は課税後拠出を全額非課税でRoth IRAに転換できる(通常IRAに資金があった間の運用益は課税対象)。


  1. ^ What Is a Backdoor Roth IRA? 2016年8月24日閲覧
  2. ^ Fed U.S. Federal Individual Income Tax Rates History, 1862-2013 2014年2月5日閲覧
  3. ^ Low-Minimum Funds Well-Suited as myRA Alternatives 2014年2月5日 2014年2月5日閲覧
  4. ^ All about the myRA 2014年2月11日 2014年2月21日閲覧





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