超高層建築物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/11 23:23 UTC 版)
耐震構造
地震や風圧対策(耐震構造)は、従来の建築物では「剛構造」という地震や風圧に耐える構造(人が走行中の列車内で脚を踏ん張って揺れに耐えることに例えられる)が求められてきたが、超高層ビルでは、地震の揺れや風圧にある程度建物を任せる「柔構造」の建築である[14]。
さらに、昨今建設される超高層ビルでは、基礎部分に油圧装置(油圧ダンパー)を取り付ける、柱の中に低降伏点鋼を挟む(制震柱)、建物の上部にダンパーと呼ばれる錘(おもり)を取りつけたりして揺れを軽減する、などの方法(いずれも制震構造)を採用している[15]。
また、基礎と上部建築物を切り離し、構造物の間に積層ゴムやベアリングを媒介して、横揺れそのものを逃す方法(免震構造)も開発されている。免震構造は古い構造基準で建設された老朽化しているビルにも有効であり、免震レトロフィット(改良、後付)工法もあるほどである。ただし、この工法は基本的に柱を切断しジャッキアップしたうえで積層ゴムやベアリングを取り付けるものなので、1階部分が空洞(駐車場や駐輪場など)であり、かつ十分な敷地が確保できる場所で重量の負担が一定のレベルを超えないことが条件とされている。
長周期地震動との共振
一般に、ビルが高ければ高いほど、そのビルの固有振動の周期が長くなる[16]。そのため、超高層ビルでは、低層の建物ではあまり問題とされない、海溝型巨大地震などによる長周期地震動との共振の可能性が指摘されている[16]。
超高層建築物における長周期地震動の実例
2007年7月16日の新潟県中越沖地震では、六本木ヒルズの高層階用エレベーターが長周期地震動で緊急停止した[16]。
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震によって東日本一帯に長周期地震動が発生した。この際に東京23区では長周期地震動階級4を観測し、新宿区西新宿の超高層ビル群が長周期地震動によって揺れ動く様子が撮影された[17][18][19]。
注釈
- ^ 1908年以前はミルウォーキー市庁舎 (Milwaukee City Hall) やフィラデルフィア市庁舎 (Philadelphia City Hall) が世界一になったことがある。
- ^ 1889年完成のモーレ・アントネリアーナ (167.5m) を世界一とすることもある。
出典
- ^ 超高層・免震建築物及び工作物の評価 - 財団法人日本建築総合試験所[リンク切れ]
- ^ 建築基準法が改正されました (PDF) - 岡山県
- ^ 2013年5月26日(日)放送 超高層ビルはなぜ倒れないの? - ラボラジオ - NHK
- ^ 新宿区景観形成ガイドライン 新宿区
- ^ 広域的な景観形成ガイドライン (PDF)
- ^ a b 広辞苑 第五版(岩波書店、1998年、ISBN 4000801112)
- ^ 昭和毎日:昭和43年4月12日 日本初の超高層ビル・霞が関ビル竣工 - 毎日jp(毎日新聞)
- ^ Article - 1244 - Huge New Rogers Skyscraper Proposed(英語)
- ^ Home Insurance Building, Chicago / Emporis.com
- ^ “How Skyscrapers Can Save the City”. The Atlantic (2011年3月). 2017年12月21日閲覧。
- ^ “全国建築紛争事例集 2011” (PDF). 景観と住環境を考える全国ネットワーク (2011年). 2017年12月21日閲覧。
- ^ 『残すべき建築: モダニズム建築は何を求めたのか』(誠文堂新光社) - 著者:松隈 洋 - 松原 隆一郎による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS
- ^ “ベトナム、高層ビルの省エネ推進 温室効果ガス削減 法整備など課題”. SankeiBiz (2017年1月3日). 2017年12月21日閲覧。
- ^ 超高層ビルの"なぜ"を科学する p.33
- ^ 超高層ビルの"なぜ"を科学する p.37
- ^ a b c 超高層ビルの"なぜ"を科学する p.36
- ^ 資料1 「東北地方太平洋沖地震時における長周期地震動による揺れの実態調査について」 (PDF) 2011年11月14日 気象庁。
- ^ 2011年東北地方太平洋沖地震(Mw9.0)の本震記録と余震記録を用いた首都圏およびその周辺地域に於ける長周期地震動の特性 日本地震工学会論文集 Vol.12(2012) No.5 特集号「2011年東日本大震災」その2 p.5_102-5_116
- ^ https://m.youtube.com/watch?v=aTu6Ukd-YlA 防災減災の科学 大都会の脅威 長周期地震動
- ^ 超高層ビルの"なぜ"を科学する p.82
- ^ 超高層ビルの"なぜ"を科学する p.83
- ^ “超高層建物の新解体工法「テコレップシステム」を開発”. 大成建設>会社情報>プレスリリース>2010年 (2010年2月23日). 2013年1月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年1月17日閲覧。
- ^ “地方の「超高層ビルマウント」に習政権激怒、500メートル以上のビル建設禁止に”. IT MEDIA (2022年8月4日). 2022年8月4日閲覧。
- ^ 世界一ビル「ハリファの塔」に ドバイ、名称変更 - 47NEWS 2010年1月5日
- ^ Why Europe Doesn't Build Skyscrapers The B1M
超高層建築物と同じ種類の言葉
- 超高層建築物のページへのリンク