福井道二 戦後

福井道二

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/24 08:32 UTC 版)

戦後

所属していた満鉄整備局は、軍事輸送、防衛、諜報、情報を担当していたので、終戦後満鉄の最高幹部が心配して満鉄には、整備局はなかったことにし、福井は運輸局調査役を命じられた。ところが、新京市内の公衆電話帳に明記してあるので、ソ連側は把握していただろう。終戦の年の8月下旬になると、遠隔地に有る社宅がソ連兵に占拠されるので、整備局の全員を引き連れて社宅の確保にと務めることになり、住宅部長を命じられている。ただちに、ソ連側の最高幹部カルギン中将に申し出て、満鉄社宅の全部にソ連語と満州語で「この住宅は鉄道の官舎であるので無断で占拠することを厳禁する、カルギン中将」の警告文を貼った。佐藤総務局長に呼ばれソ連側が住宅を欲しがっているので、相談にのってくれと要請をうけ、空いている関東軍の官舎を世話しようとした。しかし、ソ連側は関東軍の官舎は中国のものなので買い取ることができないので、一般の住宅を探してほしいと命令してきた。ソ連兵に占拠されている新京市北安路、崇智路などの高級住宅街に案内すると大変気入ったという。上海においては日本人の財産は全部中国側が没収するとの情報を得ていたので、ソ連側に申し出たが、かまわぬソ連が買い取るということだった。ソ連側ウラジミロフ少将と所有代理人の福井とが署名して成立し、中国側にもこの旨を説明した。一軒あたり七万〜十八万円で四十戸の売買契約が昭和21年(1946年)2月末までに終わっている。契約中に満鉄総裁が使用してた社宅でソ連軍に占拠され相当傷んでいた、満洲不動産所の所有のものを十五万円と評価してカルギン中将のところへ出した。カルギン中将は「この社宅は満鉄のものであるから自由にお使い下さいと山崎総裁が言っているのに福井は十五万円と言うがおかしくないか」と経理部長を通じて抗議がり、福井は「総裁は何か勘違いしておられるのだ。この住宅は満洲不動産会社所有で、満鉄が借用しているもので、毎月使用料を支払っているのである。この他にも満鉄社宅の大部分は満洲不動産会社の所有の代用社宅で、満鉄解体後家賃が入らぬので、満洲不動産の社員は非常に困っている。この代用社宅を満鉄の社宅と考えるなら、満洲不動産会社の社員にも満鉄社員なみに生活費を支給して欲しい」と反論している。カルギン中将は「もっともだ、それならどれほど出せばよいか」との問に、福井は「満洲不動産会社の社員で新京駐在のものは七家族であるので、日本へ帰るまでの生活費として七万円出して欲しい」と返し、心よく承諾されている。昭和21年(1946年)7月になり、新京地区在留日本人の引揚げが決定し、理事会(中長鉄路公司理事会)の中国側幹部に帰国したい旨を申し出、中国側は「あなたはソ連側にたいへん信頼されていたのであるから引き続き残留してほしい」とのことだった。中国側の接収代表の顧啓文、金憲真(清朝王族粛親王の子息で川島芳子の兄)に相談した所、金憲真は「福井、お前たちは帰る祖国があるので幸せだ。われわれ清の皇族の流れをくむ者は帰る国がないのだ」と悲しそうに言うのであった。昭和21年(1946年)7月27日、二年八ヶ月住んだ住宅を山崎元幹総裁、平山副総裁に明け渡した。高級住宅はソ連軍に占拠され、また暴動に荒らされており、完全なもので総裁の住める家は少なかったという。書棚二つに書籍をいっぱいおいて行ったので、総裁が日本へ引き揚げ後「福井君、君がたくさんの書物を置いてくれたので留用期間中楽しく読ませてもらうことができ大助かりだった」と言われ、竹取物語などの本の事なのかと思っていたら、渡辺諒氏が著書の中で山崎元幹総裁は福井が旅順時代に手に入れ、愛読していた聖書(英語とドイツ語)をとくに愛読せられ、その影響でクリスチャンになったとのことだ。昭和21年(1946年)9月7日、博多到着と同時に一人千円を渡された。9月9日に愛知県豊橋に帰着し、長男(海軍兵学校75期卒業)と弟福井武二(豊橋撚糸漁網社長)に迎えられた。


  1. ^ 『「現代物故者事典」総索引 : 昭和元年〜平成23年 1 (政治・経済・社会篇)』日外アソシエーツ株式会社、2012年、1055頁。





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