神々の山嶺
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/19 10:16 UTC 版)
登場人物
- 羽生 丈二(はぶ じょうじ)
- クライマー。岩壁登攀に天賦の才を持ち、谷川岳一ノ倉沢の鬼スラを始めとした国内の数々の難所を攻略するが、知名度不足のため資金難で、海外遠征できずにいた。協調性がなく、あまりにも登山を優先させるその生き様にザイルパートナーは長続きせず、後輩の岸文太郎を事故で失ってからは単独登攀を好むようになっていく。
- 1979年にグランドジョラスの冬季単独登攀中に滑落して負傷するも、驚異的な精神力と体力で生還する。その経験を買われ、1984年の冬季エベレスト登山隊に参加するが、第1次アタック隊に参加出来ないことを不満に下山しそのまま失踪。その後はネパールに不法滞在し、シェルパとして働きながらエベレストの冬季単独登攀を計画していた。その間にマロリーの遺体とカメラを発見しており、これが深町と縁を結ぶきっかけとなる。
- キャラクターモデルは森田勝[3]。
- 深町 誠(ふかまち まこと)
- 本作の主役であり、語り手。クライマー兼カメラマン。
- 1993年のエベレスト遠征で仲間を失い、クライマーとしても卒業が見え始めてきた中で将来を現実的に考えざるを得なくなり、懊悩していた。そんな折、カトマンズ滞在中に故買屋でマロリーのヴェストポケット・オートグラフィック・コダック・スペシャルを入手したことがきっかけで、マロリーのフィルムとエベレスト登頂の真相を追い始める。初めは半ば現実逃避のように始めた探求だったが、その中で出会った羽生の人生に強く惹かれ、彼の後を追いかけてゆくこととなる。
- 瀬川加代子という恋人がいたが、登山仲間である加倉典明に奪われ、その加倉も山で雪崩に遭い帰らぬ人となってしまったため、やり場のない想いを胸に抱えている。
- アン・ツェリン
- エベレスト登頂2回の経験を持つベテランのシェルパ。「タイガー」呼称制度最後のシェルパでもあり、イギリスより「タイガーバッジ」を授与されたことがある。
- 羽生に命を救われて以来、ネパールで羽生を支援してきた。また、羽生が涼子に贈ったターコイズ(トルコ石)のネックレスは、かつてアン・ツェリンの妻が着用していたものである。なお実際に田部井淳子が世界初のエベレスト女性サミッターとなったとき、共にアタックした男性サーダー名がアン・ツェリンである[4]。
- 長谷 常雄(はせ つねお)
- 羽生より3歳若い天才クライマー。羽生に先駆けて鬼スラや海外の高峰を単独登攀するライバル。羽生に比べると暗い面がなく社交的だが、登山に対しては羽生と同じく、人に譲らない我の強さを持っている。1985年のK2無酸素単独登山中、雪崩に巻き込まれて死亡した。
- キャラクターモデルは長谷川恒男[5]。
- 岸 涼子(きし りょうこ)
- 岸文太郎の妹で羽生の恋人。兄の死をきっかけに羽生と交流を持つようになり、羽生が失踪した後も彼を待ち続けた。
- 羽生の過去を探る深町と出会ったことでネパールに探しに行くこととなるが、カメラを巡って誘拐事件に巻き込まれることになる。また、深町と共に過ごす内に、互いに複雑な想いを寄せ合うようになる。
- 岸 文太郎(きし ぶんたろう)
- 羽生の後輩。あまりの強烈な個性に孤立していた羽生を慕って山岳会に入会した青年で、羽生と同じく幼い頃に両親を亡くしている。
- 岩壁登攀の素質があり、珍しく羽生とも良い関係を築いたものの、初めて羽生のザイルパートナーとなったクライミング中に墜落死。この事が羽生をよりいっそう孤立させる原因となった。
- 宮川(みやかわ)
- アウトドア雑誌の副編集長を務める編集者。深町の協力者で、羽生とカメラの謎を追う彼に様々な支援を行う。
- 工藤 英二(くどう えいじ)
- 深町とともにエベレスト遠征に参加した7人のうちの一人で、本業は医者。深町に伊藤浩一郎を紹介したほか、ネパールから帰ってきた深町の診療も行った。
- ジョージ・マロリー
- 実在の人物。1924年のイギリス第3次エベレスト遠征隊でアンドリュー・アーヴィンと頂上にアタックしたが遭難。登頂の成否が謎となっていた。
- 本作では彼の遺体とカメラのフィルムが発見され謎も解明されるが、これはフィクションであり、実際には本作の刊行から2年後の1999年に英米合同調査隊によって遺体は発見されたものの、カメラとフィルムは発見されなかった。そのため、遺体発見後に刊行された文庫版においてはラストシーンが変更されており、作者の夢枕もあとがきでその旨を綴っている。
- ナラダール・ラゼンドラ
- カトマンズで故買品を扱う商人。多くの部下を抱えているほか裏世界にも通じており、周囲から一目置かれる存在。カメラをきっかけに深町や羽生と深く関わって行く。
- 穏やかそうな風貌とは裏腹に苛烈で強かな一面も持っており、かつてはグルカ兵の部隊長で、ビクトリア勲章を授与された過去がある。イギリスの傭兵として半生を費やしたことへの後悔から、余生を祖国ネパールのために使いたいと願っており、自己の情熱のためだけに人生を賭ける羽生を自分とは対照的な人間だと評した。
- マニ・クマール
- 登山用品店「サガルマータ」の店主。登山用具だけでなく、中古品、仏具など様々なものを扱っており、中には盗品と思われるものまで扱っている。
- 善人ではないが馬鹿ではないという周囲の評の通り、金儲けに関して嗅覚が優れており、金になりそうな話については、時には汚い手を使うこともあるが、なかなか尻尾を掴ませない。また、カメラを巡って涼子が誘拐されたことを知った際には、カメラの価値がなくなると判断して手を引くなど、リスクに対しても敏感。
- ダワ
- 外国人専用登山用品店「ガネーシャ」の店主。アン・ツェリンの知人で、彼を探していた深町のメッセンジャー役を引き受けたほか、涼子が着用していたターコイズの首飾りを見て大事にするよう助言した。
- 井上 真紀夫(いのうえ まきお)
- 羽生と同じく、実力はありながら経済的に恵まれていなかったクライマー。羽生の熱意に押され難度の高い「冬季鬼スラ」の初登攀に成功するが、その後自己中心的な羽生と決別した。会社員となり先鋭登山から引退するが、羽生が現役を貫くことを確信していた。
- キャラクターモデルは岩沢英太郎。[要出典]
- 伊藤 浩一郎(いとう こういちろう)
- 先鋭的な登攀を行っていた青風山岳会の顧問。初心者の羽生を鍛え上げた。
- 多田 勝彦(ただ かつひこ)
- 登山用品メーカー「グランドジョラス」の営業本部長。アドバイザリー契約を結んでいた羽生と共にヨーロッパ三大北壁を登攀したが、羽生の強烈なエゴを目の当たりにし、彼が孤立した原因を知る事になる。
註釈
出典
- ^ “「神々の山嶺(いただき)」ほか3本”. 産経ニュース (2022年7月8日). 2022年7月8日閲覧。
- ^ “Netflix、アニメ長編映画「The Summit of the Gods (英題)」を獲得”. Netflix (2021年9月1日). 2023年1月8日閲覧。
- ^ “所長のひと言(25)「映画『エヴェレスト 神々の山嶺』を観て思ったこと」”. 長野県山岳総合センター (2016年4月16日). 2022年9月16日閲覧。
- ^ 田部井1992、p.87
- ^ 石丸謙二郎の山カフェ「作家・夢枕獏 山を語る」9時台 2023年5月27日(土)午前9:05放送 で作者本人が語る
- ^ a b c d 『描くひと 谷口ジロー』, pp. 41–82, 谷口ジローが語る 2.
- ^ a b 『描くひと 谷口ジロー』, pp. 212–229, 谷口作品は全部が特別.
- ^ 神武団四郎 (2022年7月18日). “谷口ジローが描いた畏敬のエベレストをアニメーションで表現…『神々の山嶺』の緻密さと圧倒的スケールをひも解く”. MOVIE WALKER PRESS. ムービーウォーカー. 2023年12月5日閲覧。
- ^ “夢枕獏、「谷口ジローにこれを観せたかった」 アニメ映画『神々の山嶺』7・8公開”. ORICON NEWS. oricon ME (2022年6月2日). 2023年12月5日閲覧。
- ^ “集英社 ビジネスジャンプコミックス 谷口ジロー !!)神々の山嶺 愛蔵版 全5巻 セット”. まんだらけ通販. まんだらけ. 2024年1月21日閲覧。
- ^ a b 『描くひと 谷口ジロー』, pp. 256–263, 書誌一覧.
- ^ “神々の山嶺〈集英社文庫〉全巻リスト”. 集英社の本. 集英社. 2023年12月5日閲覧。
- ^ a b yumemakura_bakuのツイート(694118524009066496)
- ^ “神々の山嶺〈谷口ジローコレクション〉全巻リスト”. 集英社の本. 集英社. 2023年12月5日閲覧。
- ^ a b 常川拓也 (2022年7月8日). “谷口ジロー『神々の山嶺』の長編アニメ化に挑んだ仏監督が語る。影響源や日仏の自然観の違い”. CINRA. cinra. 2023年12月5日閲覧。
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- ^ a b c 山崎春奈 (2022年7月8日). “その「漫画家」はフランスで「アーティスト」になった。『孤独のグルメ』の作者は、なぜヨーロッパに愛されたのか?”. BuzzFeed. BuzzFeed Japan. 2023年12月5日閲覧。
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- ^ Angelique Jackson (2021年11月23日). “Netflix Sets English-Language Voice Cast for Animated Film ‘The Summit of the Gods’” (英語). Variety. Variety Media. 2023年12月5日閲覧。
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- ^ a b c d e f g h i j k “神々の山嶺 - 作品情報・映画レビュー”. KINENOTE(キネノート). キネマ旬報社. 2023年12月5日閲覧。
- ^ a b c d e “LE SOMMET DES DIEUX (THE SUMMIT OF THE GODS)” (フランス語). Festival de Cannes. Association Française du Festival International du Film. 2023年12月5日閲覧。
- ^ a b c d “Le sommet des dieux (2021)” (英語). IMDb. IMDb.com. 2023年12月5日閲覧。
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