痙攣
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/09 14:17 UTC 版)
痙攣(convulsion)の分類
痙攣(convulsion)は大脳ニューロンの過剰放電に由来する急激かつ不随意性の筋収縮であり以下の3つが知られる。
単純部分発作における痙攣
部分発作では大脳ニューロンの過剰放電が起こる部位(発作焦点)に応じて大脳皮質機能局在に基づいた症状がおこる。運動発作、感覚発作、自律神経発作や精神発作が知られている。意識障害を伴わない部分発作を単純部分発作、側頭葉などに発作焦点をもち意識障害を伴う複雑部分発作という。発作焦点が前頭葉皮質の運動領野にあると部分発作として痙攣が生じうる。
一次運動野(中心前回)に発作焦点がある場合は対応する片側顔面、上肢、下肢に痙攣が生じる。間代性痙攣は、筋の過剰な収縮と弛緩をある程度規則的に反復するガクガクとした痙攣である。過剰筋収縮が持続し、肢を伸展、すなわち突っ張るような、あるいは屈曲位を持続するのが強直性痙攣である。強直性痙攣から間代性痙攣に移行するのが強直間代性痙攣である。発作焦点から始まった局所的な大脳ニューロンの過剰放電が一次運動野にそって波及すると、例えば顔の片側に始まった痙攣が同側の手指から前腕、上腕と波及していくことがあるジャクソンマーチという。痙攣した後に痙攣した肢が一過性に麻痺することがあり、この状態をトッドの麻痺という。前頭葉眼球運動野に発作焦点がある場合は眼球、頭部が病巣の対側に回旋するような向回発作が生じる。また補足運動野に発作焦点があると、焦点と対側の上枝を伸展挙上しこれを見上げるように眼球と頭部をむける姿勢発作が起こることがある。
運動発作名 | 発作焦点 |
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焦点性運動発作 | 一次運動野 |
Jackson型発作 | 一次運動野 |
向回発作 | 前頭葉(側頭葉、頭頂葉) |
姿勢発作 | 補足運動野 |
音声発作 | 補足運動野 |
感覚発作名 | 発作焦点 |
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体性感覚発作 | 一次体性感覚野 |
視覚発作 | 後頭葉 |
聴覚発作 | 側頭葉聴覚野 |
嗅覚発作 | 側頭葉内側 |
味覚発作 | 側頭葉内側 |
回転性めまい発作 | 頭頂・側頭葉移行部 |
そのほか、側頭葉内側を発作焦点とする自律神経発作、側頭葉を焦点とする精神発作が知られる。
複雑部分発作に伴う運動症状
多少なりともまとまっているものの、適切な目的性を欠く一連の動作、表情、行動などが不随意的、無意識に生じることがあり自動症とよばれる。代表的なものは、舌なめずりや舌打ち、もぐもぐと口を動かす、ごくんと飲み込むなど口部自動症である。そのほか、顔や身体をなでたり、こすったり、衣服をまさぐったり、手をもんだりなどの身ぶり自動症もある。自動症は複雑部分発作中あるいは発作後もうろう状態に認められ、患者本人はその記憶がないか、あっても断片的、部分的である。
全般発作における痙攣
全般発作における大脳ニューロン過剰放電は、局所性ではなく両側性、広範におこる。てんかん発作が局所性に部分発作ではじまり、異常放電が両側性、びまん性に波及した結果、全般発作が生じることがある。これを二次性全般化という。全般発作は広範な脳障害のため意識障害を伴い、両側性の強直間代性痙攣を生じることが多い。強直間代性痙攣の経過を示す。ますは意識消失に伴う突然の痙攣がおこる。これは開口、開眼と眼球上転、上枝は外転挙上し肘は屈曲位で前腕は回内する。次に強直相であり、通常持続は10~20秒ほどである。四肢は伸展し、呼吸筋の強直により、肺からの空気が閉鎖した声帯を通って強く呼出される際に叫び声をあげることがある。呼吸停止とチアノーゼが認められることがある。間代相の持続は30秒前後が多い。間代性痙攣の感覚は次第に長くなり終焉する。咬舌はこの時期におこる。自律神経症状として頻脈、血圧上昇、瞳孔散大、流涎、発汗過多がみられる。深い吸気をもって間代相は終わる。間代相がおわると回復期になる。このとき呼吸は再開し、対光反射も回復する。痙攣後の意識障害が持続する。
- 1 痙攣とは
- 2 痙攣の概要
- 3 疫学
- 4 痙攣(convulsion)の分類
- 5 痙攣患者のマネジメント
- 6 痙攣発作の血清マーカー
- 7 参考文献
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