放射線障害
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/25 10:08 UTC 版)
放射線の胎児への影響
身体的影響と遺伝的影響の中間にあたるともいうべき放射線の胎児への影響、すなわち生殖細胞が受精した後に受精卵から胎児へと成長する段階において被曝したときの影響については、身体的影響及び遺伝的影響とも異なる次の特徴が存在する[37]。
- 影響の時期特異性
- 放射線被曝を受けた時期によって発生する障害が異なる[注釈 30]
- 高い放射線感受性
- 一つの受精卵が10兆個の細胞に成長・分化する胎児は放射線の感受性が最も高く、被曝線量に対して発生する影響も成人よりも大きくなる。
- 影響の非可逆性
- 人体に備わった自然の治癒能力では回復しない非可逆的な障碍が発生するときがある。
胎児の週齢による差異(影響の時期特異性)
細胞死に関する放射線感受性は細胞分裂を繰り返す頻度が高い細胞ほど高い(ベルゴニー・トリボンドーの法則)ため、胎児は最も放射線感受性の高い個体である[注釈 31]。胎児の発生・分化は次の3つの時期に区分されるが、放射線被曝の影響はその時期に応じて異なる。
- 着床前期(pre-implantation period):受精後約9日間
- 器官形成期(organogenetic period):受精後2-8週間
- 胎児期(fetal period):受精後8週以降
障害を来す線量は、着床前期に閾線量0.05〜0.1Gyで胎児死亡(embryonic death/fetal death)、器官形成期に閾線量0.1Gyで奇形(malformation)[注釈 32]、胎児期に閾線量0.12〜0.2Gyで精神発達遅滞(mental retardation)である(ただし、精神発達遅滞は週期によって発生率が異なる)[41][42][注釈 33]。
妊娠2か月以降の胎児は既に臓器が形成された後であるから、奇形発生はないとされている[43]。ただし、胎児期以降の被曝について、小児白血病などの確率的影響が有意に高い(成人に比べて2-3倍と言われる)ことが知られている[44]。
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