悪魔のロベール 楽曲

悪魔のロベール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/06 08:31 UTC 版)

楽曲

1825年時のマイアベーア

古典派からロマン派への転換期の作品であるため、折衷的傾向も残っているものの多くの革新性を有している。管弦楽の大家であるベルリオーズは創意工夫に富む斬新な手法で書かれたマイアベーアの『悪魔のロベール』の管弦楽を高く評価し、1835年7月12日の『ルヴュ・ガゼット・ミュジカール』紙に寄稿し、具体的例を挙げつつ詳細に記載しており、特にホルンの使用方法を称賛している。そして、マイアベーアがオペラの発展において多大な役割を担っていると結論付けた[3]。本作で初めてオペラにおいてオルガンが使われ、以来、教会の場面には欠かせない楽器となったほか、タムタムなど多種の打楽器がオペラに導入され、特に劇的な瞬間や恐怖の場面に使われた[2]。オルガンはこの後『ユダヤの女』、『ユグノー教徒』、『預言者』などでも使われている。後のヴェルディを予見するような幕切れの3重唱やドニゼッティの『ランメルモールのルチア』を予見するようなハープとイングリッシュホルンを伴奏とするイザベルの長大なカヴァティーナなど見所は多い。演出家のロラン・ペリーは「音楽は革新的で、生き生きとしており、時に愉快だが全く退屈なものではない」語っている[4]。なお、ドイツでの修業時代の同僚ウェーバーの『魔弾の射手』の影響も見られる。

リブレット

リブレットスクリーブとドラヴィーニュによって書かれているが、この2人は『ポルティチの唖娘』でも共同で作業にあたっている。スクリーブとマイアベーアはこの後、密接な関係を維持し、オベールおよびアレヴィともども19世紀前半から半ばにかけてのフランスのオペラ界を主導して行くことになる。本作では悪魔を扱ったオペラとして、大いに注目を集め、グノーの『ファウスト』やベルリオーズの『ファウストの劫罰』、オッフェンバックの『ホフマン物語』へも多大な影響を与えている[4]

バレエ「死んだ尼僧たちの踊り」

エドガール・ドガによる『悪魔のロベール』のバレエ・シーン (1876年) ヴィクトリア&アルバート博物館所蔵

ロマンティック・バレエの最初の舞踏は『悪魔のロベール』の第3幕第15曲に挿入された「死んだ尼僧たちの踊り」である。このバレエ・シーンは修道院長エレナ役のマリー・タリオーニのために父フィリッポ・タリオーニが振付けたもので、不吉に舞台を照らすガス照明による月の光、修道女たちの白い衣装とヴェールという非現実的な効果の中で、“シュル・レ・ポワント“ (爪先で立ち)とアラベスクが使われた[5]。また、バレエ・ブランと言われる女性ダンサーたちが白いコスチュームを着用して踊るバレエの先駆けにもなった。バレエ・ブランの有名な例としては、1832年の『ラ・シルフィード』(ジャン・シュナイツホーファ作曲、フィリッポ・タリオーニ振付)を始め、1841年の『ジゼル』(アドルフ・アダン作曲)、1877年の『白鳥の湖』(ピョートル・チャイコフスキー作曲)などがある。本作の第3幕の第2場はほぼバレエによって展開される。多くのグランド・オペラにおいてもバレエは余興の扱いがなされていることも少なくないが、本作においてはドラマの展開そのものを担っており、入念に設計され、不可欠な要素となっている。また、死んだ尼僧が生き返って物悲しくも官能的なまでに美しい音楽に合せて踊り、主人公を誘惑する筋立ても、当時としては宗教上の物議を醸すであろうと思われる内容となっている。


  1. ^ 『オペラは手ごわい』P48~49
  2. ^ a b 『フランス音楽史』P299
  3. ^ 『Critique Musicale』P209~211
  4. ^ a b 『悪魔のロベール』DVDでロラン・ペリーの作品についてのインタビュー
  5. ^ a b 『十九世紀フランス・バレエの台本』P12~13および『ロマン派音楽の多彩な世界』P415~416
  6. ^ 『フランス・オペラの魅惑』P119
  7. ^ 『パリ・オペラ座-フランス音楽史を飾る栄光と変遷-』P57
  8. ^ 『オックスフォードオペラ大事典』P13
  9. ^ 『ラルース世界音楽事典』P30
  10. ^ http://site.galleria-za.com/list/27
  11. ^ 昭和音楽大学オペラ研究所 オペラ情報センター
  12. ^ https://www.memopera.fr/FicheSpect.cfm?SpeCode=RD&SpeNum=1
  13. ^ http://www.publicopera.info/opera200001/robertlediable_berlin_recensioni.html
  14. ^ http://www.omm.de/veranstaltungen/musiktheater20112012/EF-robert-le-diable.html
  15. ^ https://www.roh.org.uk/productions/robert-le-diable-by-laurent-pelly
  16. ^ https://www.ndm.cz/en/opera/instance/4713-robert-le-diable/2019-06-13/31124/
  17. ^ https://www.lamonnaie.be/fr/program/838-robert-le-diable
  18. ^ 各劇場の上演プラン(バレエをカットするなど)で変動する





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