国際協力 国際協力の諸段階

国際協力

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/16 02:52 UTC 版)

国際協力の諸段階

慈善型開発・慈善型援助

困っている人や弱い立場にある人を目前にしたときに、その人を助けようと思うのは人間としての自然な心情の発露である。そのことが国境を超えて行われると国際的な援助になる。例えば災害の被災者に対して行われる物資や資金の供与である。また、自らがボランティアとして援助の活動に参加することである。

こうした慈善型の援助は、国際協力の世界では原点とも言える活動である。しかし、こうしたタイプの援助にはさまざまな批判もある。例えば、現地のニーズを十分に調査していない、住民の自立をかえって阻害するおそれがある、「援助」のマイナスの影響について考慮していない、援助が偶然的に始まり計画性に欠ける、などの理由による。

NGOによる国際協力も慈善型の開発プロジェクトを行っているケースが、その初期において特に多く見られる。上記のような批判や反省をもとに、住民ニーズをよりよく把握して、より計画的に国際協力活動を行うようになると技術移転型の開発や住民参加型の開発へとそのアプローチを変えていくことになる。

技術移転型開発

一般的に開発の分野における「技術移転」とは、貧困、インフラの未整備、低い生産性など開発途上国が抱える課題の解決のために、技術を有する先進国側の組織が教育、訓練を通して、途上国側の組織に技術を伝達して、そこでの定着、普及を図ることを指す。

慈善型開発が、目前の悲惨な状況を解決すべく偶発的に始まり、あまり計画性を持たずに進められるのに対して、技術移転型は当初より受益者のニーズを把握して、より計画的、専門的に進められる開発のアプローチである。最終的には何らかの技術移転を通して、受益者の自立がめざされている。その意味では官民を問わず、現在行われている開発プロジェクトのほとんどが技術移転型に分類される。

技術移転型の場合に、受益者の意見を把握することはあっても、最終的なプロジェクトの決定権は、プロジェクトを行う側にあることが特徴である。参加型開発が、当初より受益者である住民の参加を促し、開発プロジェクト自体の企画、運営、評価のプロセスに住民の参加を図るのと対照的である。

参加型開発

従来の開発プロジェクト(慈善型開発と技術移転型開発)においては、プロジェクトの受益者である地域住民の意見や意を超えたところでプロジェクトが計画されて実行される傾向にあった。しかしながら、そうしたプロジェクトは住民のニーズを十分把握できないために実効性に欠けたり、住民自身の自覚が高まらずに持続性が乏しい、などの問題があった。参加型開発はこうした問題点を克服すべく1980年代の後半より提唱された開発の新しいアプローチである。

OECDの開発援助委員会は1989年に「1990年代の開発協力」を発表し、今後の開発協力を主導する理念として「参加型開発(Participatory Development)」を提唱した。参加型開発とは、開発の受益層自身が開発の意志決定プロセスに参加すること、そしてより公平にその恩恵を受けることが含まれる。これは民主的なシステムの確立と公平な分配を保証する概念でもある。従って、この場合の参加は強者の参加ではなく「弱者」の参加である。弱者とは都市のエリートに対する農村の住民、男性に対する女性、大人に対する子ども、支配民族に対する少数民族や先住民族などである。

参加型開発においては、住民自身のエンパワーメントが重要であり、住民がエンパワーしていく手法・アプローチとしてPRAやPLAと呼ばれる方法が提唱されて実施されている。

PRA・PLA(参加型農村調査法・参加型学習行動法)

PRA(Participatory Rural Appraisal) は1970年代後半に農村調査のために開発されたRRA(迅速農村調査法)の手法をもとに、住民自身の参加の観点を加えた農村調査の手法として発展したものである。PRAの理論化や普及に貢献してきたロバート・チェンバースは、PRAを「地域住民自身が自らの生活の知識や状況を共有し、高め、分析し、さらに計画し、行動し、モニターし、評価することを可能にする一連のアプローチや方法」と説明している。

PLA(Participatory Learning and Action)は、農村調査の方法という観点からさらに進めて、住民自身が自ら課題を発見して問題を解決するまでの一連のアプローチと方法のことである。実際にはPRAもPLAもその内容においてはほとんど変わらず、同義で使用されることも多い。それらの内容は、地図作り、年表作り、季節カレンダー、社会関係図、ランキング(順位づけ)、などがあるが、固定された一連のパッケージがあるわけではなく、日々さまざまな手法が現場に即して開発され応用されている。




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