動物農場 動物主義

動物農場

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/17 16:57 UTC 版)

動物主義

豚のスノーボール、ナポレオン、スクィーラーは、メージャー爺さんのアイデアを「完璧な思想」に昇華させる。これは共産主義の寓意として動物主義と命名される。作中でナポレオンとスクィーラーは、自分たちが権力を握ると早々に人間が行う活動(飲酒、ベッドで寝る、取引)を始めたが、これらは「7つの掟(七戒、Seven Commandments)」において明示的に禁止されていた。この7つの掟を変更する者としてスクィーラーが登場している。これはソビエト政府が自分自身と社会をについての認識をコントロールするために歴史を修正していたことを比喩している[19]

元の掟は以下の通りであった。

1. 2本足はすべて敵である。
2. 4本脚と翼を持つ者はすべて友人である。
3. 動物は服を着てはならない。
4. 動物はベッドで寝てはならない。
5. 動物はアルコールを飲んではならない。
6. 動物は他の動物を殺してはならない。
7. すべての動物は平等である。

これら7つの掟は、作中でスノーボールにより「4本脚は良い。2本足は悪い」というスローガンに集約される。これは主に羊たちが使用し、動物間の議論などで混乱をもたらすことがよくある。

後にナポレオンとその一派の豚は、違反しているという告発から自分たちが免れるために、いくつかの掟を密かに改訂していく。作中で明らかにされる変更された掟は以下の通りである。

4. 動物はシーツのあるベッドで寝てはならない。
5. 動物はアルコールを過剰に飲んではならない。
6. 動物は理由なく他の動物を殺してはならない。

最終的には7つの掟は「すべての動物は平等だが、一部の動物はさらに平等」の1つに書き換えられてしまい、集約されたスローガンも「4本脚は良い。2本足はさらに良い」に置き換えられる。本来、7つの掟は動物を人間に対して団結させ、また人間の邪悪な慣習に従うのを防ぐことで動物農場内の秩序を守ることにあったが、これを豚たちが破り、人間に近づいていくことを皮肉っている。

この掟の改訂を通して、オーウェルは政治的な教義がいかに順応性のある宣伝になるかを示している[20]


注釈

  1. ^ 例えば「動物はベッドで寝てはならない。」が「動物はシーツのあるベッドで寝てはならない。」に書き換えられていた。詳しくは#動物主義を参照。

出典

  1. ^ Cinii図書-アニマル・ファーム”. 国立情報学研究所. 2022年5月5日閲覧。
  2. ^ Cinii図書-アニマル・ファーム”. 国立情報学研究所. 2022年5月5日閲覧。
  3. ^ Cinii図書-アニマル・ファーム”. 国立情報学研究所. 2022年5月5日閲覧。
  4. ^ Cinii図書-イギリス名作集・アメリカ名作集(世界の文学, 53)”. 国立情報学研究所. 2022年5月5日閲覧。
  5. ^ a b c Jay Meija, Animal Farm: A Beast Fable for Our Beastly Times, August 27, 2002, Literary Kicks. Peter Davison, George Orwell:‘Animal Farm: A Fairy Story’,A Note on the Text, First published: Penguin Books, 2000. Machine-readable version: O. Dag Last modified on: 2004-12-19
  6. ^ a b 南谷覺正「G.オーウェル『1984年』について : 監視社会」と「自由」の視点から」群馬大学社会情報学部研究論集 20、p119-138、2013-02-28
  7. ^ オーウェルの『動物農場』を却下したT・S・エリオットの書簡、公開される 2014 AFPBBNews
  8. ^ オーウェル『動物農場』の政治学 西川伸一著、東洋経済オンライン 2010/03/16 8:00
  9. ^ 川端康雄「ソビエト神話の正体をあばく」 公益財団法人徳間記念アニメーション文化財団、2008
  10. ^ 川端康雄「動物農場 ことば・政治・歌」 みすず書房、2005年
  11. ^ ジョージ・オーウェルの傑作寓話「動物農場」誕生秘話を「赤い闇」に発見! 2020年7月20日 10:00
  12. ^ 植村秀樹権力の腐敗と翻弄される私たちの姿~目からウロコの名作再読・『動物農場』(ジョージ・オーウェル著) 2020年7月8日中央公論編集部
  13. ^ 河合秀和『ジョージ・オーウェル』(学習院大学、1995)p.334.
  14. ^ Soule 1946.
  15. ^ Books of day 1945.
  16. ^ Orwell 2015, p. 253.
  17. ^ Dalrymple, William. “Novel explosives of the Cold War”. The Spectator. オリジナルの2019-08-26時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20190826033137/https://www.spectator.co.uk/2019/08/novel-explosives-of-the-cold-war/ 2019年9月1日閲覧。. 
  18. ^ Operation Aedinosaur: The CIA’s Mission to Undermine Soviet Censorship During the Cold War”. 2022年7月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年7月13日閲覧。
  19. ^ Rodden 1999, pp. 48–49.
  20. ^ Carr 2010, pp. 78–79.
  21. ^ 映画「動物農場」公式サイト - 作品解説
  22. ^ 映画『動物農場』公式サイト - ストーリー
  23. ^ 『動物農場』(早川書房、2017年)訳者あとがき 198p
  24. ^ 映画「動物農場」公式サイト - 川端康雄さん





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