二段式宇宙輸送機 フライバックブースター

二段式宇宙輸送機

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/01 07:01 UTC 版)

フライバックブースター

ロシア製フライバックブースターのモックアップ(2001年)

TSTOの上段を使い捨てロケットとし、下段のみを再使用する場合、この下段をフライバックブースターと呼ぶ。フライバックブースターは衛星軌道に乗らないため大気圏再突入の速度が遅く、耐熱などの対策が楽であるため、上段と比べて開発が容易である。上段は既存の使い捨てロケットを流用することで、開発費を低減できる。

フライバックブースターには発射地点付近まで戻ってきたり、水平着陸や垂直着陸が可能な本格的なものも構想されており、前述のファルコン9の下段がこれに当たる。一方で、使い捨ての下段を若干頑丈にしてパラシュートで回収するだけの簡素な構想もあり、スペースシャトルのブースターがこれに該当するが、こちらは固体燃料であるため再使用に相当の費用が掛かり、経済的ではなかったとみられている。

その他、ロシアでは水平着陸可能なフライバックブースターとして、ロケットエンジンとターボジェットエンジンの双方を搭載するものも検討されている。この場合は、上段の分離後にある程度の自律飛行が可能となる。[1]

各国の構想

日本

JAXA

単段式宇宙輸送機#日本 にあるとおり、のちにJAXAの母体となる各前身組織では、それぞれTSTOの基礎技術とも共通する、SSTOの基礎研究がおこなわれていた。これらを組み合わせる形で、TSTOの構想が発表された。

まず、HOPE-Xを大型化したような機体にロケットエンジンと推進剤を搭載したものを開発する。この機体はNASDAのロケットプレーンに類似しているが、ロケットプレーン検討時に判明したとおり軌道速度に達しないため、衛星軌道に乗らずそのまま大気圏に再突入して、滑走路に着陸する。この機体は技術実験機というだけでなく、使い捨てロケットを搭載して衛星を打ち上げることや、準軌道宇宙観光などに使用できるとしている。

次に、ジェットエンジンを搭載した極超音速飛行機を開発する。このエンジンはATREXと呼ばれ、ラム圧縮で高温になった空気を、液体水素を利用した熱交換器で冷却し、水素燃料ターボジェットエンジンに供給する。このためスクラムジェットエンジンとは異なり、最大速度はマッハ5程度にとどまる。この機体に、前述のロケットプレーン型機を背負い式に搭載し、空中発射することで二段式スペースプレーンを実現するというものである。

この構想の鍵を握るのはATREXエンジンの実用化であるが、エンジンを搭載した最初の実験機の開発が2015年前後と考えられていることから、TSTOの開発はそれより後になる。


  1. ^ ロシア、再使用ロケットを開発へ - ソ連時代に生まれた技術が復活”. マイナビ (2018年6月12日). 2020年6月4日閲覧。


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