ヴィオラ・ダ・ガンバ ヴィオラ・ダ・ガンバ属のサイズ

ヴィオラ・ダ・ガンバ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/25 22:51 UTC 版)

ヴィオラ・ダ・ガンバ属のサイズ

ヴァイオリン属と同様に音域の異なるいくつかのサイズがあり、一つの「属」をなす。音域の高いほうからトレブル(フランスではドゥシュ、ドイツではディスカント)、アルト、テノール、バスがあり、その他にドゥシュより高いパルドゥシュ(フランス)、バスより低いグレートバス、コントラバスがある。このうち、コントラバスは特別にヴィオローネとも呼ばれる。なお、バスあるいは小型のバスを特殊な用途に使う場合、イタリアで「ヴィオラ・バスタルダ」、イギリスで「リラ・ヴァイオル」、「ディヴィジョン・ヴァイオル」と、それぞれ特別な名称で呼ばれた。

ヴィオラ・ダ・ガンバのみによるアンサンブル(コンソート)には主にトレブル、テノール、バスが用いられた[2]。しかし、17世紀半ば以降同属楽器のアンサンブルという演奏形態が廃れる中、ヴィオラ・ダ・ガンバも、独奏楽器として重用されたバス以外ほとんど使われなくなり、単にヴィオラ・ダ・ガンバといえばバスを指すようになった。

構造・調弦法

ヴァイオリンのように標準化された形状はないが、ヴァイオリン属との違いとして以下のような特徴がある。

表板はややふくらんでいるが裏板は平らで、どちらもヴァイオリン属に比べると薄い板が使われ、そのため弦の張力はヴァイオリン属よりも弱い。バロック時代のヴィオラ・ダ・ガンバには、ヴァイオリン属と同様に、表板を補強する力木(ちからぎ)や、表板と裏板をつなぐ魂柱(こんちゅう)がある。響孔はヴァイオリン属の f 字形とは異なりC字形のものが多いが、f 字形や、炎形など不定形のものもある。肩の線はなだらかに棹(ネック)とつながり、側板の幅が広い。表板と裏板は側板と突き合わせで接着されている。

指板はヴァイオリン属に比べて平らに近い(曲率が小さい)。フレットをもつが、ギターのような固定式ではなく、ガット弦などを棹に巻き付けたのみで、音程の微調整のために動かせるようになっている。フレットは開放弦の5度上の音程まで付いている。駒は指板と同様に天面の曲率が小さく、そのため重音奏法が容易である。

弦の数は6本が基本で、標準的な調弦法は右図のとおり。パルドゥシュは5弦のものもある。ヴァイオリン属はコントラバスを除いて5度調弦だが、ヴィオラ・ダ・ガンバは4度調弦が基本である。17世紀後半にバスの最低弦の4度下に第7弦を追加することが考案された。リラ・ヴァイオルやヴィオラ・バスタルダではしばしば特殊な調弦が行われた。

の形状や長さは同時代のヴァイオリン属のそれに近く、木部の先端は鋭角的に曲がらず、なだらかな曲線である。毛を張ると木部は直線になるか、または外側にやや彎曲する。

奏法

楽器を身体の前面で立て、小さなサイズは膝の上に乗せるか両膝で挟み、大きなサイズは両脚のふくらはぎに乗せて保持する[1]。ヴィオローネは脚で支えられないので床に置く。

弓はアンダーハンドで(掌を上に向けて)持つ。弓の中央より毛箱側で木部を親指と人差し指の間で挟んで支え、中指の第一関節で毛を弦に押しつけるようにして奏する。

左手の運指はチェロの運指に近いが、高いポジションでも指板上に親指を置くことはない。フレットのある部分では、ギターのように隣接する2つのフレットの間で弦を押さえるのではなく、フレットの真上あるいは糸巻き側で押さえる。重音奏法では、ギターと同様、同じフレットの位置で複数の弦を、一つの指あるいは異なる指で同時に押さえる運指も用いられる。


  1. ^ a b viol da gamba, n. : Oxford English Dictionary” (英語). www.oed.com. 2019年12月7日閲覧。
  2. ^ 『ヴィオラ・ダ・ガンバの手引』アカデミア・ミュージック、2018年12月1日、5頁。ISBN 978-4-87017-966-0 
  3. ^ a b c ヴィオラ・ダ・ガンバの手引. アカデミア・ミュージック. (2018.12.1.). p. 11. ISBN 978-4-87017-966-0 
  4. ^ 熊本県天草市 市立 天草コレジヨ館 展示内容 2012年確認


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