ナミハグモ属
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/05/29 22:53 UTC 版)
分類
本科はタナグモ科やミズグモ科などとされたこともあり、現在ではナミハグモ科とすることが多い[10]。この科には8属が知られるが、日本では本属だけしか知られていない。
なお属を細分することは検討されており、狭義の本属とズナガグモ属 Dolichocybaeus、キタグニグモ属 Hetelocybaeusに分ける説も提案されているが現時点では広く認められてはいない。
多様性
この属には地理的変異が多く、個々の種の分布域は広くない。洞穴性のものでは単独の洞穴からしか知られていない例もある。大型種のカチドキナミハグモ C. nipponicus は特に広い分布域を持ち、東北北部地域を除いて本州から九州にわたって分布し、関東以西ではもっとも普通種となっている。だがこの種においても斑紋などには地方変異が多く見られる[11]。更にこの種では中国四国地方で触肢の長い集団と短い集団が区別できて、少なくとも一部地域では同所的に見られ、両者間に生殖隔離が存在するという。ただし他地域では中間型もあるため、これらを別種とすることはできない[12]。
またこの属の分布で興味深い点として、同一地域に生息環境の嗜好や体サイズの異なる複数種が共存している点が上げられる。また体サイズや生殖器の基本構造が共通する近縁種群が地理的広がりを持って確認できる。このような点、本群は種分化の研究対象として興味深いものとなっている[13]。
参考文献
- 小野展嗣編著、『日本産クモ類』、(2009)、東海大学出版会
- 八木沼健夫、『原色日本クモ類図鑑』、(1986)、保育社
- 井原庸、「ナミハグモ属の生殖器と体サイズに見られる地理的分化と種多様性」、(2008), Acta Arachnologica 57(2): p.87-109.
- Byung-Woo Kim & Joo-Pil Kim, A new species of the genus Cybaeus (arachnida: Araneae: Cybaeidae) from Korea. Acta Arachnologica 57(1) p.9-14.