ナジーム・ハメド ボクシングスタイル

ナジーム・ハメド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/23 02:50 UTC 版)

ボクシングスタイル

比較的リードブローを打たない、腕をだらりと下げガードをしない、飛び上がってパンチを打つという、近代ボクシングの禁忌をあざ笑うかのようなスタイルで相手を翻弄する。背骨が直角に曲がるほどのスウェーバック、背面を完全に相手に見せるほどの深いダッキング、それらを瞬時かつ的確に行える反射神経と動体視力を駆使するため、避けることに関しては右に出る者がいない。

かといってディフェンス偏重なわけでもなく、スウェーバックしながらカウンターパンチを繰り出したり、バックステップしながらパンチを出す等、通常の選手であれば体重を乗せられず手打ちになってしまうようなパンチを放ち、なおかつそれで相手選手を平気でKOしてしまう。ハメドを指導した名トレーナー、エマニュエル・スチュワードをして「もしレノックス・ルイスとハメドが同じ階級ならハメドのパンチ力の方が上だ」と言わしめるほどのハードパンチャーである。

戦略としては、薄ら笑いを浮かべつつノーガードのまま相手選手に近づいたり、ダンスを踊るようなステップで挑発し、相手選手の大振りを誘う。それを軟体動物のように柔軟なウィービングでかわした後、突然足のステップとは関係ないタイミングで、体ごと相手に飛びかかっていくようなブローをお見舞いしてKOする試合が多く見られる。なお、サウスポーを自称してはいるものの、スイッチを頻繁に行ううえに、右でフィニッシュすることも多い。

ハメドのサンデーパンチは、フックともアッパーとも言えないオリジナルブローである。まるで猫科の猛獣が獲物に飛びかかるかのように放つのだが、通常このようなパンチはテレフォンパンチと呼ばれ、初動を見抜かれやすく、モーションに入ると中断することができないため、カウンターの餌食になるという致命的な欠点を持つ。この無謀にも思えるパンチに、前述の人間工学を無視したような動きでフェイントを施し、相手の死角からインパクトさせるのを得意としている。

総合的に見て非常に型破りでトリッキーな選手のため、ケビン・ケリー英語版ウェイン・マッカラーセサール・ソトブヤニ・ブング、オーギー・サンチェスなどのオーソドックスなボクサーほどハメドの術中にはまって翻弄された。プロで唯一ハメドを破ったマルコ・アントニオ・バレラは、執拗にカウンターを狙った出入りの激しいボクシングで、ハメドの的を絞らせないよう徹底、第1R中に3度もハメドをぐらつかせるなどハメドの特徴的な動きを攻略し、2Rからはハメドがたまらずガードを上げて戦うという珍しい戦略を取り、バレラが判定勝ちを収めた。

試合以外でも、入場の際の派手なパフォーマンス、前転してリングインなどの独自のスタイルを貫いた。須藤元気は自身のスタイルを「ハメドを参考にした」と語っている通り、入場パフォーマンスはもちろん、バックハンドブローやステップ、視線を相手からわざと外すなど、全般(本来ボクシングではバックハンドでのパンチは反則)に、ハメドの影響が見受けられる。また、山本"KID"徳郁K-1ルールに初挑戦する際に、「ビデオでハメドを見て参考にした」と語っており、テレビ解説を務めた畑山隆則からも「KID選手の戦い方はナジーム・ハメドに似てますね」と評価された。極真会館で前人未踏の5回の全日本優勝の記録を持つ数見肇も師匠にナジーム・ハメドのビデオを見せられ「あんな風にスタスタ歩いて自由に強いパンチが出せるようになりたい」と一つの理想型にしていた。

ハメドは7歳の頃からずっと真面目にボクシングに取り組んでいたが、WBOフェザー級世界タイトルを獲得した辺りから専属トレーナーの言う事を聞かずトレーニングをサボるようになった。また、試合直前にならないとジムに顔を見せず、関係者と連絡が付かないなど、素行も乱れた。不摂生によって体重が増加し、減量に苦労するケースも目立つようになった。

その奇抜なボクシングスタイル故に、ファンやアンチの数も多いが、他の格闘技界への影響も含め、良くも悪くも魅せるボクサーであった。




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