ジッポー アメリカ軍との関係

ジッポー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/06 04:50 UTC 版)

アメリカ軍との関係

オリジナルZIPPO#23 1941復刻版sterling

ジッポーライターの普及には、アメリカ軍が大きく関わっている。 第二次世界大戦中、「どこでも、どんな状況でも点火できる器具」が求められ、ジッポーが注目された。ジッポーは耐風性が高く頑丈で、かつ必要最小限の構成ゆえ部品も少なく、修理も容易だった。また戦場では燃料としてガソリンも入手できた。

アメリカ軍は製造元であるZippo Manufacturing Companyに軍へのライター納入を依頼した。納入された正確な数は戦闘部隊数が知られてしまうため極秘とされており不明であるが、相当の数が納入されたようである。

当時は戦時で、ジッポー本来の材質である真鍮材は、薬莢製造用に優先して回されていた。この資材不足対策として、軍用ライターのケースの材料には鉄を使い、その上に錆止めの塗装を施した。これらは黒い塗料の表面が細かくひび割れたように見えたため、通称「Black Crackle」モデルと呼ばれた。これには後に「戦場では、光る物は反射で自分の位置を知らせてしまうので、敢えて反射止めに黒く塗った」とするもっともらしい俗説が付いた。ただ関係者筋に拠れば「苦肉の策だった」ことが明かされている。

このライターは兵士達に大変好評で「GIの友」とまで呼ばれ、売店に入荷するや基地内の兵士の間では取り合いになったという。大戦中、アメリカ軍の名将として知られ、ノルマンディー上陸作戦を指揮したドワイト・D・アイゼンハワーも「私の持っているライターの中でどんな時でも火がつくのはこれだけだ」と賞賛した。

当時は市販品製造より軍納入分の生産を優先したため、ジッポー不足は著しかった。戦地に赴く恋人のために、ある女性一市民がラジオ放送を通じ、ジッポーを譲ってくれる人を募集したというエピソードもある。

戦地で実証された耐久性の評判は、アメリカ軍兵士を通じて一般国民や諸外国(敗戦国・被占領国も含む)にも広まり、「アメリカの豊かさと文化の象徴」の一つとして世界的なヒット商品となった。日本でも第二次世界大戦以降からベトナム戦争の時代に日本国内の米軍基地の兵士が持っていたものの一部が伝わっており、日本のデッドコピーが輸出品として日本製品の悪評を高めた歴史もある。1980年代よりはビンテージ・ジッポーの人気も上昇、1990年代頃よりは盛んにジッポー関係のムック本ワールドフォトプレスなどから出版されている。

なお、ジッポーはアメリカ合衆国軍に制式採用されたことはない。軍に供給されたジッポーライターは、全量がアメリカ軍PX(売店)での販売用であり、官給品ではなく将兵の私物扱いであった。アメリカ軍は、戦中、国外の基地内PXで、兵士の士気を維持するために、特にアメリカ的とされる製品を多く並べた。第二次大戦の開戦当時、PXではほかのアメリカ製ライターも販売されていたが、兵士らは専らジッポーのみを好んで購入した。

ブレイズデルは開戦のニュースを好機ととらえ、軍から部隊章などの提供を受けた場合は、一個につき20セントの手数料で取り付けるとしたサービスを打ち出した。また同時期には、PXへの卸価格は10%の値引きを表明している。ジッポーが軍指定に至らなかった一方で、紙巻きたばこラッキーストライクは官給品に指定され、補給物資の対象となっていたため、世界大戦を境にジッポーでラッキーストライクを嗜む兵士が増加し、軍人以外にも伝播していった(それためか、以来ラッキーストライクのロゴであるブルズアイをデザインに取り入れたジッポーが、他の煙草銘柄の意匠をあしらった製品に比して、ひときわ多く発売されている)。ゆえにラッキーストライクのポスターにライターが現れる際も、そのブランドはジッポーである例が多い。また、この組み合わせは軍人ばかりでなく、小旅行を楽しむライダーの支持を得て全世界へ広がった背景から「ジッポー+ラッキーストライク+バイク」のイメージが定着し、煙草製品のコマーシャルが規制されていなかった時代の映像作品においても、同様の組み合わせが宣伝に広く採用された。


注釈

  1. ^ ターボライターでは珍しく、フリントによる着火であった。圧電素子による着火と異なり、フリントを交換すればいつまでも点火可能という点で「ジッポーらしい」点といえる。
  2. ^ 英語版記事によると、同社は2014年7月15日にブリティッシュ・アメリカン・タバコグループのレイノルズ・アメリカン(R.J.レイノルズ・タバコ・カンパニーの親会社)に買収され、その時にBLUの商標はインペリアル・ブランズに売却され、同社の電子たばこのブランドとなっている。→blu英語版
  3. ^ レーザー彫刻や素彫りなどによって名入れのみを施した製品の修理を依頼し、自己工作品であることを理由に返却された例が多数ある。ただしユーザーや販売店らによる自己工作品ではなく、ジッポー社が関与した名入れキャンペーンの一部製品などは、無保証の対象から除外されている。
  4. ^ 保証を受ける場合、インサイドユニットのみの故障や損傷であってもケースと共に送付する必要があり、これについてジッポー社はケースとの勘合を鑑みた精度の高い修理を行うためであるとしている。
  5. ^ アークおよびガス式のインサイドユニット(レギュラーサイズのケース用のみ)については、コットンやウイック、フェルト、フリント等に同じくアクセサリの扱いで単体販売している。

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