カブトヘンゲクラゲ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/06 15:58 UTC 版)
生殖
原記載に用いられた個体では生殖巣内に幼生が見られ、いわゆるフウセンクラゲ型幼生を数日おきに放出した。この幼生は放出直後には豆型で、約24時間でほぼ円錐形に変わった。それから更に伸びて2週間後には口が広がり始め、触手鞘が内側に開いた。1次触手は体の3倍超で横枝を持つ形から次第に短くなり、2週間で体長程度となった。観察されているのはここまでである[10]。 なお、後に長径3mm程度の生殖腺が未発達の個体が採集され、これが既に本種の成体クラゲの特徴を有していたことから本種の変態は比較的短期に終わり、カブトクラゲ類で知られる幼形生殖は行わないのだろうとの判断がある[11]。
分布
最初の発見は三重県であったが後に瀬戸内海や沖縄島などで発見された。その結果を総合すると本種は10.5-23.4℃と幅広い水温に対応出来ること季節的にも年間を通して発見があり、また発見された水深も1-38mと幅広い。2013年の段階で東京から石垣島に渡って発見されており、少なくとも南日本に広く分布し、各地で定着しているものと推定された[12]。この時点ではその分布は日本だけから知られていたが、更に2015年には紅海で発見された。本種は非常に透明であること、またクシクラゲ類としては例外的な底性生活を営み、驚いて泳ぎだしてもすぐに海底に沈むのでプランクトンネットなど標準的な採集法では発見が難しいことなどから、実際にはより広い海域に生息しており、見逃されているのだという可能性が示唆されている[13]。
分類
独特な特徴を多く持つことから単一の種で属を立て、独自の科と見なされている。
この動物は原始的ながら袖状突起を持ち、1次触手が退化している。これらはカブトクラゲ目の特徴である。他方で胃水管系の配置は一部を除いてフウセンクラゲ目のものに似ており、本種がこの2つの目の中間的位置にあることを示唆すると取れる[14]。ただし現時点では他群との関係については明らかではない。
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