アメリカ合衆国のコミュニティ・カレッジ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/01 01:46 UTC 版)
用語
1970年代以前は、コミュニティカレッジはしばしばジュニア・カレッジと呼ばれ、その用語は今でも一部の機関や陸上競技、特にNJCAA(National Junior College Athletic Associationの略、2年制大学が加盟する全米二年制大学体育協会)で使用される。しかし、「ジュニア・カレッジ」という用語は現在、通常、私立の2年制大学を特徴付けるために使用される。「コミュニティカレッジ」という用語は、公的資金で支援されている公立の2年制大学を表すように進化した。1920年に「アメリカジュニア・カレッジ協会」として設立されたコミュニティカレッジの主要な全国擁護組織は、1992年にその名前を「アメリカコミュニティカレッジ協会」に変更した。
歴史
東海岸13州が独立を果たす前は、その地域のリーダーを養成することを目的とするリベラルアーツ・カレッジが創設され、一部の高所得者層の子弟が進学した。その後、アメリカ合衆国として独立し、農業などの実業を目的とした庶民向けの州立大学が生まれた。その後、ベトナム戦争などに従事した元軍人に対する教育、英語を母語としない移民や、低所得層に対する高等教育の提供という目的で生まれた。
「コミュニティ・カレッジ」という名前の起源については、デンマークからの移民たちが、母国の成人のための社会教育の機関、市民大学(フォルケホイスコーレ、Folkehoejskole )を元に始めたものといわれている。ただし、グルンドヴィという作家で政治家だった人が始めたものともいわれ、これは北欧からドイツ、イギリスなどのそれぞれ形態を若干変えて広まっている。デンマークは、学歴、資格は一切授与しないもので、教育制度の中の諸大学とは競合しないとてもユニークなものである。コミュニティ・カレッジの起源についてはその他の説もある。
カレッジプロミス
オバマ大統領は2015年の一般教書演説にて、コミュニティカレッジの学費を無料とすると演説[3]し、この計画は「America’s College Promise」と呼ばれている[4][5]。しかしその計画は支持があったにも関わらず実現には至らなかった[6] 。
2015年には、501(c)(3)非営利団体Civic Nationによる、College Promiseプログラムがスタートした.[7]。開始当時のプログラム参加校は53校であったが、2017年までには16の州において、州全体を対象とするCollege Promise プログラムを少なくとも1つは実施している[8]。2019年時点では、全米において320 以上のプログラムが存在することが確認されている[9]。College Promiseプログラムへの資金提供者は、Kresge財団、ニューヨーク・カーネギー財団、Ascendium財団、Proteus Fundなどである[10]。
学修プログラム
- ISCED-4C - Vocational Certificate (1年未満)[11]
- ISCED-4C - Vocational Certificate (1-2年間)[11]
- ISCED-5B - Vocational Associate's Degree Programme (2年間)[11]
- ISCED-5A - Academic Associate's Degree Programme(2年間)[11]
コースは在学中に変更は可能である。ただし共通課目以外の専門科目の単位は、あらためて取得する必要があるため卒業までに、その単位を取得するまで時間がかかる場合がある。
どちらに進学するにしても、要求されるTOEFL-PBTの点数は500位が目安となるが学校によって異なる。最初は、ESLにTOEFL免除で入学して、規定のクラス履修後はTOEFLなしで大学課程に進学できる学校もある。しかし、全ての学校にESLがあるとは限らず、ESLがあっても大学進学にはTOEFLを要求する学校もある。
AAディグリー課程(University Transfer)
AAディグリー課程(AA Degree, Academic Associate's Degree Programme)とは、Associate of Arts学位を取得するためのコース(レベル5A[11])。4年制大学の最初の2年間に履修する一般教養科目を履修し、4年制大学の3年次へ編入することができる学位[11]。修了までにかかる主な時間の目安は18~24ヶ月間(90単位以上)[11]。
このコースは、大学編入・アカデミックコース(University transfer)ともいい、4年制大学専門課程へ編入するため、1〜2年次に相当する教養科目を履修する。また、中等教育を12年生(18歳)まで受けなかったために大学進学資格がないカナダ人や、留学生のための進学準備プログラムであるカレッジ・プレバレーション・プログラムも開講されている。また州立大学の2年制大学の中には、一定の成績の上で同大学の4年制大学に編入できる制度がある。尚、ハワイのように州内のコミュニティーカレッジを卒業して、ハワイ州立大学に進学する場合、専攻はBAに限られるというケースもある。また、2年制大学で取得したGPAを4年制大学に移行できるかは提携内容次第である。このように大学間の提携によって進路や成績は大きく左右されるうえ、提携の大学以外への編入は単位の移行が一部認められないなど不利になることが多いので、編入コースを希望する生徒は事前の調査が望ましい。更に、一部私立トップ校のように2年制大学からの編入を全く認めていない大学もあるので、全ての4年制大学に編入可能なわけではない。
卒業時に授与される学位は、Associate of Arts Degree (AA, リベラルアーツ系短期大学士)と、Associate of Science Degree (AS, 理系短期大学士)の二系統がある。
- Associate of Arts (AA) Degree
- 対象分野:Art, Business, English, History, Humanities, Psychology, Sociology などの リベラルアーツ系
- Associate of Science (AS) Degree - General
- 対象分野:Math / Science 一般
- Associate of Science (AS) Degree - Option 1
- 対象分野:Biological, Environmental, Resource Sciences, Chemistry, Geology, Earth Sciences
- Associate of Science (AS) Degree - Option 2
- 対象分野:Engineering, Computer Science, Physics, Math, Atmospheric Science
アメリカでは高校卒業後、多くの人が4年制大学へ進学するための下準備として、AAディグリーコースを取る。このコースを修了すると、一般教養科目の単位が取得でき、4年制大学に編入する際に単位の移行ができる。 高校卒業後、4年制大学に直接入学するのは難関だし授業料も高いので、同じ一般教養なら、安く済むコミュニティカレッジで、という人が多くいる。普通は2年くらいでこのコースを終える。4年制大学は、コミュニティカレッジから受け入れる編入生の枠(20%前後)が決まっているので、高校卒業後、直ぐに4年制大学に合格できなくても、このルートで入学することができる。
職業アソシエイト課程
職業アソシエイト課程(Vocational Associate's Degree Programme)は職業教育を目的とした4年制大学編入を目的としない高等教育課程(5Bレベル)[11]。
修了までにかかる主な時間の目安は、Associate in Applied Science(AAS)で18~24ヶ月間(90単位以上)で、卒業時にAssociate in Applied Science(AAS,アソシエイト)称号が授与される。
- Associate in Pre-nursing Degree - 看護学部進学準備短期大学士
- Associate Science in Nursing - 看護短期大学士 (正看護師(RN)の資格取得コースがある。尚、ASN(RN)のための学士取得コースが4年制大学にはある)
- Associate in Elementary Education Degree - 幼児教育学部進学準備短期大学士
職業サーティフィケート課程
職業サーティフィケート課程(Vocational Certificate Program)とは、サーティフィケート取得を目指す6~12ヶ月間の職業教育コース(4Cレベル)[11]。
専門分野の職業に必要な技術を集中的に短期間で学修し専門職業の技術者を育成するプログラム[11]。欧州における全国職業資格(英国NVQ)、職業適性証(仏国CAP)に近似する。
プログラムの修了には必修・選択必修科目があるが、このコースでは8週間~3ヶ月の期間で、多様な授業を受講できまる。
- オフィス技術、不動産、コンピューター援用デザインなどの専門分野がある。
- アメリカ人の多くが働きながらこのサティフィケートプログラムを取っている。短期間で実践的なプログラムを求める人には最適である。しかし短期間とはいっても、プログラムの修了にかかる時間はそれぞれのメジャーによって異なる。自分のスケジュールの組み方しだいで1~2年と変わってくる。
- 卒業時には 専門課程終了証書(Certificate) が発行される。留学生の場合は卒業後、プラクティカル・トレーニングビザを取得すれば、1年間合法的に働くことができる。
- ※ 注意事項→州や学科、編入学受入れ先大学により異なるが、一般にAASを始めとした職業訓練関連の学術称号の場合は大学への編入学が認められない場合があり、認められる場合でも編入先で認定される単位に制限が加わることが多い。詳細はen:Associate's degree(英語版ページ)を参照のこと。
継続教育
継続教育プログラムは、学位や資格取得を目指して単位をとるための学習というより、専門的または個人的な技能を伸ばしたい学生のためのもの。その分野の学生のための数限りなく多様な科目が用意されている。
- ^ 『アメリカ合衆国ジュニア・カレッジ、コミュニティ・カレッジ職業教育発展史研究序説』横浜国立大学教育学部、207-209頁。
- ^ Digest of Education statistics (Report). Institute of Education Sciences. (2013). Table 308.10. .
- ^ Eric Bradner, CNN (2015年1月20日). “Obama: 'Tonight, we turn the page'”. CNN
- ^ “America’s College Promise: A Ticket to the Middle Class”. ed.gov. 2015年9月11日閲覧。
- ^ “Obama Highlights 'Free' Community College Plan, Tax Reform In State Of The Union Address – National Association of Student Financial Aid Administrators”. nasfaa.org. 2015年9月11日閲覧。
- ^ “3 years ago, President Obama first proposed making community college tuition free. Here's where we now stand.”. Education Dive. 2019年7月6日閲覧。
- ^ “College Promise Campaign”. College Prmomise. 2019年7月6日閲覧。
- ^ “Reimagining The American College Student”. Forbes. 2019年7月6日閲覧。
- ^ “College Promise Campaign 2018-2019 Annual Report”. College Promise. Template:Cite webの呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。
- ^ “Donors”. College Promise Campaign. 2019年7月6日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j “ISCED MAPPINGS - United States”. UNESCO. 2015年11月2日閲覧。
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