X染色体の選択
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/16 09:48 UTC 版)
「X染色体の不活性化」の記事における「X染色体の選択」の解説
正常な雌は2つのX染色体を持ち、任意の細胞において1つのX染色体は活性を持ち(Xaと呼ぶ)、1つは不活性になる(Xiと呼ぶ)。過剰なX染色体を持つ個体に関する研究によると、2つを超えるX染色体を持つ細胞においては、そのうちの1つだけがXaとなり、残りのX染色体は不活性化されることが分かっている。このことは、雌のX染色体は基本的には不活性化されるように設定されているが、常に1つのX染色体だけが活性を持つように選択されることを示している。 X染色体に結合して不活性化を阻害する常染色体上のブロッキング因子が仮説として提唱されている。限られたブロッキング因子があり、いったん利用可能なブロッキング因子が1つのX染色体に結合すると、残った他のX染色体は不活性化から守られなくなると、このモデルでは説明している。この仮説は、「多くのX染色体を持つ細胞でも活性を持つX染色体が1つだけであること」と、「常染色体が正常の2倍ある培養細胞株では活性を持つX染色体が2本あること」によって支持されている。 X染色体上のX不活性化中心(X inacivation center, XIC)と呼ばれる塩基配列が、X染色体の不活性化を制御する。想定されているブロッキング因子はXICの内部配列に結合するものと予測されている。X染色体上にXICが存在することが、X染色体の不活性化が起きるための必要十分条件である。XICが常染色体上に転座した場合、その常染色体が不活性化され、XICを失ったX染色体は不活性化されない。XICは、X染色体の不活性化に関係するXistとTsixの2つの非翻訳性RNA遺伝子を含んでいる。XICはさらに既知および未知の制御タンパク質との結合部位を含む。
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