貴妃とは? わかりやすく解説

貴妃

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/24 18:13 UTC 版)

貴妃(きひ)は、かつての中国における皇帝妃嬪封号の一つである。通例では皇帝の側室の中で、高位の者に与えられた。宮廷における地位の高さとしては、親王正室である親王妃に相当する。また、朝鮮半島やベトナムにおいても用いられた。

歴史

の時代、貴妃は正式な封号ではなく、非公式な場で、高位の妃嬪の尊称として用いられた。

南北朝時代南朝宋孝武帝が、初めて正式に貴妃の封号を定め、位としては相国に相当するものだった。そして、貴嬪中国語版貴人とあわせて三夫人中国語版と称した[1]。後世ではこれに沿った制度が多い。

においては、貴妃は皇后に次ぐ封号だった。唐の初め、皇后の下に貴妃、淑妃徳妃中国語版を設け、これを四夫人と称し、位は正一品とした。玄宗開元年間には後宮の封号制度が改められ、先の四つの妃の代わりに恵妃麗妃華妃中国語版の三妃を設けた[2]。開元十二年(724年)に王皇后が廃され、玄宗は武氏を恵妃とし、そのほかに趙氏を麗妃中国語版劉氏を華妃中国語版とした。開元二十三年(735年)、皇甫徳儀中国語版が亡くなると、淑妃を追贈した[3]天宝年間には改めて楊氏を貴妃とした。

これ以降の唐の後宮における妃の封号は貴妃、淑妃、徳妃、賢妃となった。ただし、唐では代宗から懿宗まで長期間、徳宗が王淑妃(昭徳王皇后)を亡くなる直前に皇后とした以外は皇后を立てず、この四妃(貴妃、淑妃、德妃、賢妃)で後宮関連の職務(本来は皇后の職務)を行っていたので、実際上は正室であった。それでも、名分上は側室でしかなく、皇帝が代替わりした場合、新帝の母でなければ必ずしも皇太后とされるわけではなかったし、あるいは追諡で皇后とされるわけでもなく、皇帝の嫡母というわけでもなかった。例としては代宗の崔貴妃中国語版がある。

においては、宮中の皇妃の封号は多く、たとえば順妃寧妃などがあった。貴妃は最高の封号だった。明の中後期には皇貴妃中国語版の封号があったので、貴妃は最高位のひとつ下となった。

の後宮における品級は次の通り:皇后皇貴妃中国語版、貴妃、貴人常在中国語版答応中国語版官女子中国語版。貴妃は三番目に位置する封号だった。

歴代王朝での貴妃の一覧

南朝

  1. 宋孝武帝:宣貴妃殷氏(追贈)
  2. 宋明帝:陳妙登
  3. 斉武帝:范貴妃
  4. 陳宣帝:銭貴妃中国語版
  5. 陳后主:張麗華

北周

  1. 北周宣帝:元楽尚尉遅熾繁

唐朝

  1. 唐高祖:萬貴妃中国語版
  2. 唐太宗:韋貴妃
  3. 唐睿宗:豆盧貴妃中国語版崔貴妃中国語版
  4. 唐玄宗:董貴妃楊貴妃
  5. 唐代宗:独孤貴妃崔貴妃中国語版
  6. 唐宪宗:郭貴妃中国語版
  7. 唐穆宗:武貴妃中国語版(追贈)
  8. 唐敬宗:郭貴妃中国語版
  9. 唐懿宗:王貴妃中国語版楊貴妃中国語版(追贈)

五代十国

  1. 後周太祖:張貴妃中国語版
  2. 前蜀高祖:張貴妃中国語版
  3. 前蜀后主:銭貴妃中国語版
  4. 南漢后主:李貴妃中国語版
  5. 后蜀高祖:李貴妃中国語版

宋朝

  1. 宋太宗:臧貴妃中国語版(追尊)
  2. 宋真宗:昭静貴妃(尊封)、杜瓊真(追尊)
  3. 宋仁宗:張貴妃昭節貴妃(尊封)、昭淑貴妃(尊封)、昭懿貴妃(追尊)
  4. 宋神宗:刑貴妃(尊封)
  5. 宋哲宗:慕容貴妃(尊封)
  6. 宋徽宗:鄭貴妃大王貴妃懿粛貴妃小王貴妃喬貴妃劉貴妃劉貴妃
  7. 宋高宗:呉貴妃劉貴妃張貴妃
  8. 宋孝宗:謝貴妃蔡貴妃中国語版
  9. 宋寧宗:楊貴妃
  10. 宋光宗:黄貴妃張貴妃中国語版
  11. 宋理宗:謝道清中国語版賈貴妃中国語版閻貴妃中国語版

遼朝

  1. 景宗:蕭綽
  2. 聖宗:蕭貴妃(元皇后)、蕭貴妃耶律燕哥中国語版の母)
  3. 興宗:蕭貴妃中国語版

金朝

  1. 金太祖:蕭貴妃中国語版
  2. 金熙宗:裴满貴妃
  3. 海陵王:大貴妃唐括定哥
  4. 金世宗:李貴妃中国語版

明朝

  1. 明太祖:成穆貴妃
  2. 明成祖:昭献貴妃昭懿貴妃
  3. 明仁宗:郭貴妃
  4. 明宣宗:孫貴妃何貴妃中国語版(追尊)
  5. 明英宗:周貴妃
  6. 明宪宗:万貴妃邵貴妃
  7. 明世宗:沈貴妃文貴妃中国語版閻貴妃
  8. 明穆宗:李貴妃
  9. 明神宗:鄭貴妃
  10. 明思宗:袁貴妃田貴妃
  11. 弘光帝:金貴妃

清朝

  1. 清太宗:懿靖大貴妃(ナムジョン)
  2. 清圣祖:貴妃佟佳氏貴妃佟佳氏温僖貴妃皇考貴妃瓜尔佳氏
  3. 清世宗:貴妃年氏熹貴妃鈕祜禄氏、皇考裕貴妃耿氏(尊封)
  4. 清高宗:貴妃高氏嫻貴妃輝發那拉氏令貴妃魏氏、純貴妃蘇氏、庆貴妃陸氏、嘉貴妃金氏、婉貴妃陳氏(尊封)、颖貴妃巴林氏、忻貴妃戴佳氏(追封)、愉貴妃珂里叶特氏(追封)、循貴妃伊尔根觉罗氏(追封)
  5. 清仁宗:貴妃钮祜禄氏、諴貴妃劉佳氏、皇考如貴妃钮祜禄氏
  6. 清宣宗:全貴妃鈕祜禄氏静貴妃博尔济吉特氏琳貴妃乌雅氏、彤貴妃舒穆禄氏、佳貴妃郭佳氏(尊封)、成貴妃鈕祜禄氏(尊封)
  7. 清文宗:貞貴妃鈕祜禄氏懿貴妃叶赫那拉氏祺貴妃佟佳氏中国語版(尊封)、玫貴妃(尊封)、婉貴妃(尊封)
  8. 清穆宗:瑨貴妃珣貴妃瑜貴妃
  9. 清德宗:温靖皇貴妃(尊封)、珍貴妃(追封)
  10. 溥儀明賢貴妃(追贈)

朝鮮半島

高麗の後宮制度は当初は定まっていなかった。第8代国王の顕宗の時に貴妃や淑妃の号が用いられるようになり、妃嬪の一人、李子林は王姓と貴妃の号を与えられ、元質貴妃王氏朝鮮語版となった。その後、第11代国王の文宗の時に制度が整えられ、貴妃、淑妃、徳妃、賢妃は正一品となった[4]

関連項目

脚注

  1. ^ 南史』巻十一・紀伝第一「及孝武孝建三年,省夫人,置貴妃,位比相国。进貴嬪比丞相貴人三司,以為三夫人」
  2. ^ 新唐書』巻四十七・志第三十七・百官二「惠妃、麗妃、華妃,以代三夫人」 :s:zh:新唐書/卷047#內官
  3. ^ 唐故德仪赠淑妃皇甫氏神道碑”. 中国盲人数字图书馆 (2008年11月25日). 2012年7月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年11月23日閲覧。
  4. ^ 高麗史』巻七十七・志第三十一・内職「國初未有定制,后妃而下,以某院、某宮夫人爲號。顯宗時,有尙宮、尙寢、尙食、尙針之職,又有貴妃、淑妃等號。靖宗以後,或稱院主、院妃,或稱宮主。文宗定官制,貴妃、淑妃、德妃、賢妃並正一品。」

貴妃(きひ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/18 17:24 UTC 版)

彩雲国物語の用語」の記事における「貴妃(きひ)」の解説

正一品

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「貴妃(きひ)」を含む「彩雲国物語の用語」の記事については、「彩雲国物語の用語」の概要を参照ください。

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