脊髄由来の乖離性感覚障害
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 08:51 UTC 版)
「ミエロパチー」の記事における「脊髄由来の乖離性感覚障害」の解説
脊髄由来の乖離性感覚障害として前脊髄動脈症候群にみられる乖離性感覚障害、脊髄癆型(脊髄後索)乖離性感覚障害、脊髄空洞症型(脊髄灰白質型)乖離性感覚障害が知られておりミエロパチーを疑う所見となる。 前脊髄動脈症候群にみられる乖離性感覚障害 病変部以下の温痛覚が障害されるが、深部感覚が免れる感覚障害乖離を呈する。脊髄先方部(腹側)の2/3を灌流する前脊髄動脈の循環障害で生じる。長経路の脊髄視床路が障害されるため、温痛覚障害の範囲は障害レベル以下全体にみられる。後索性の感覚障害は原則として認められない。このような乖離性感覚障害は脊椎椎間板ヘルニアや脊髄髄外腫瘍などでも認められる。 脊髄癆型(脊髄後索)乖離性感覚障害 深部感覚が障害され、温痛覚が保たれる乖離性感覚障害はかつて脊髄癆で多くみられた。脊髄癆の減少とともに近年では後索や内側毛帯に脱髄巣を有する多発性硬化症や後脊髄動脈領域梗塞で典型的にみられる。また障害が末梢神経から脊髄におよぶ亜急性連合性脊髄変性症(ビタミンB12欠乏症)でもみられる。またフリードリッヒ運動失調症やビタミンE欠乏症も類似する感覚乖離を示す。この型の感覚障害では感覚性運動失調やロンベルグ試験の他、ジンジンするしびれや電撃痛、乱切痛、レルミット徴候(放電痛)がみられることが多い。 脊髄空洞症型(脊髄灰白質型)乖離性感覚障害 脊髄空洞症では脊髄中心部白質の病変により、温痛覚(脊髄視床路)の神経線維が脊髄中心部で交叉する部位で障害されて、その高さに相当する皮膚の温痛覚が鈍麻するが、後索に障害が及ばないため深部感覚は保たれる。脊髄視床路は脊髄最外側の表層を走る長経路で、ここが障害されないため、病変の高さより下の感覚は保たれ感覚障害の範囲は病変のある高さに限られるので宙吊り型を呈する。脊髄空洞症以外に脊髄灰白質に病変を有する脊髄内出血や脊髄髄内腫瘍などでもみられる。 病変拡大に伴う乖離性感覚障害の推移 病変が拡大することにより病変分布が推移する。それが乖離性の感覚障害の時、病変の性質を示唆する。代表例としてはFoix-Alajouanine病(亜急性壊死性脊髄炎)などがあげられる。
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