業績に対する誤解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/06 00:02 UTC 版)
「ロナルド・コース」の記事における「業績に対する誤解」の解説
「社会的費用の問題」(1960年)で提起された「コースの定理」は「一部に大きな誤解を生んでいる」ことでも有名である。「コースの定理」は標準的な教科書においては「企業間に外部性が存在しても、もし取引費用がなければ、資源配分は損害賠償に関する法的制度によって変化することはなく、また常に効率的なものが実現する」や「外部性の出し手と受け手との間で交渉が行われれば、それが理想的な形で機能する限り、授権のあり方に関わらず、常にパレート効率的な資源配分を実現する」と要約されるが、一方で、定理を正しく理解していない経済学者からはしばしば「政府の介入を極力嫌い、自由放任の市場競争を良しとするシカゴ学派の思想に基づくもの」等と誤解される。しかし、コース自身、「これらの洞察は取引費用がプラスの現実世界の分析に向けてのステップとして以外には価値が無い。(中略)取引費用ゼロの世界の詳細の研究に多くを費やすべきではない」と述べており、この「コースの定理」は「経済システムを構成する諸制度のあり方の決定において、取引費用が果たす、あるいは果たすべき基本的な役割を、明らかにすること」を目的としたアイデアであって、決して市場の万能性を主張しているのではなく、「取引費用が無視できない現実的な世界では、なぜ非効率性が発生し、市場メカニズムがうまく機能しないようなケースが起こるのかを解明しようとした」のであった。なお、「コースの定理」の命名者はシカゴ学派の代表的経済学者と知られるジョージ・スティグラーであった。
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