アニュテーとは? わかりやすく解説

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アニュテー

名前 Anyte

アニュテー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/30 21:35 UTC 版)

テゲアーのアニュテー古代ギリシア語: Ἀνύτη ΤεγεᾶτιςAnýtē Tegeâtis、最盛期:紀元前3世紀初)は、古代ギリシアのアルカディア地方の女流詩人である[1][2]。アニュテーは、『ギリシア詞華集』(『パラティン詞華集』)において、テッサロニケのアンティパトロスが、卓越した詩才を持つ「九柱の詩女神(ムーサ)」[3]の一人として名を挙げている女性である[4]。テッサロニケのアンティパトロスは、アニュテーの詩作品があまりにも素晴らしいものであったが故に、彼女を「女性のホメロスなるアニュテ」と詠じた[2][5][注釈 1]。彼女は田園生活をたたえる牧歌的詩編を最初に書いたヘレニズム期詩人の一人である[2]。アニュテーは繊細なエレジー風4行連詩の構成において、サッポーの詩風の継承者であった[6]。彼女は古代にあって「抒情詩人アニュテー」の名で呼ばれた。しかしその名にも拘わらず、彼女の抒情詩は今日一篇も現存していない[7]。更に、パウサニアースは彼女の叙事詩について言及しているが、叙事詩の方も残っていない[7][注釈 2]アニュテとも表記される[8]


注釈

  1. ^ 沓掛良彦によれば「女性のホメロス」とは「いささか大仰な表現」であり、おそらく偉大な詩人と言う意味ではなく言葉の使い方がホメロス的であるということ(沓掛 2018, p. 468.)。
  2. ^ 叙情詩(lyric poetry)も叙事詩(epic poetry)も一篇も残っていないとなっているが、少ないとは言え詩作品が残っており、また彼女の作とされるエピグラムも24篇ほど残っていると、後で記述がある。Oxford Classical Dictionary の記述を参照して判断すると、これは「叙情詩」「叙事詩」のジャンルに分類される作品が残っていないということで、エピタフ(碑銘詩)を含むエピグラム詩は、叙情詩のジャンルには入っていないようである。エピグラムは、真作の数について諸説あるようであるが、20篇前後残っていると考えられる。サッポーの場合だと、現在の研究では、断片が多数残っているが、完全な作品はほとんど残っていない。ただし、20世紀以前だと、完全な作品がかなり残っていると考えられていたが、それらは後世の人の補完によるもので、純粋にサッポーの手になる部分を選別して行くと、完全な作品はほとんどないことになった。
  3. ^ スタテール」は、古代ギリシアにおける、金または銀の硬貨。
  4. ^ 古代ギリシアの他の女流詩人と比較して、「多くの作品」が残っているので、実際に残っているのは、20数編前後のエピグラムである。サッポーの場合、相当な数の断片が残っている。しかし、現存する完全な作品の数は限られていると云うことである
  5. ^ 古代ギリシアでは、使役動物や、愛玩動物(ペット)のための墓が造られ、碑銘詩が書かれた。『ギリシア詞華集』のなかには複数の例が含まれており、などのペットの死を悼むエピタフの他に、(アエードーン)やコオロギ(キリギリス)などに献げるエピタフなどが存在している。
  6. ^ Oxford Classical Dictionary, 2003 の記述では、約18篇のドーリス方言エピグラムが『ギリシア詞華集』に含まれており、1篇がポリュデウケスの引用で残っているとなっている[6]
  7. ^ 参照:ekphrasis、「美術作品描写詩」。意味が時代と共に変遷しているのと、幅広い用例がある。ホメーロスの『イーリアス』にあって、アキレウスの盾が、その実物がありありと想像できるぐらいに詳細に、生き生きと説明・描写されているような場合、こういう描写を「エクプラシス」と呼んだ。絵画や彫像が実際にどういうものなのか、目に浮かぶように描写することを、エクプラシスと言う。
  8. ^ キュプリスは、アプロディーテー女神の別称。キュプロス島の女神の意味。なお、この詩は、「エクプラシス」技法を駆使したアプロディーテー女神の描写の例として論じられている。ギリシア語原詩の音律と音韻によって、高度な言葉の技巧で、精妙な描写が行われていると、参照本では述べられているが、英訳、更に重訳の日本語では、何がエクプラシスか判然としない。女神を絵画的に描写していることはかろうじて分かる。

出典

  1. ^ a b Barnard 1978, p. 204.
  2. ^ a b c d Joyce E. Salisbury (2001). “Anyte of Tegea”. Encyclopedia of Women in the Ancient World. ABC-CLIO. p. 10. ISBN 978-1-57607-092-5. https://books.google.com/books?id=HF0m3spOebcC&pg=PA10 
  3. ^ 沓掛 2018, p. 461.
  4. ^ Palatine Anthology 9.26
  5. ^ 沓掛 2018, p. 460.
  6. ^ a b Hornblower et Spawforth 2003, p. 117。
  7. ^ a b Ian Michael Plant (2004). Women Writers of Ancient Greece and Rome: An Anthology. University of Oklahoma Press. pp. 56–. ISBN 978-0-8061-3621-9. https://books.google.com/books?id=uYGay_yqBLUC&pg=PA56 
  8. ^ 沓掛 2018, p. 468.
  9. ^ a b c Barnard 1978, p. 209.
  10. ^ Joyce E. Salisbury (2001). “Aristodama of Smyrna”. Encyclopedia of Women in the Ancient World. ABC-CLIO. p. 15. ISBN 978-1-57607-092-5. https://books.google.com/books?id=HF0m3spOebcC&pg=PA15 
  11. ^ a b c Gutzwiller 1993, p. 71.
  12. ^ Gutzwiller 1993, p. 72.
  13. ^ Gutzwiller 1993, pp. 75–76.
  14. ^ Gutzwiller, Kathryn J. (13 February 1993). “Anyte's Epigram Book”. Syllecta Classica 4 (1): 71–89. doi:10.1353/syl.1993.0005. https://muse.jhu.edu/article/458641/summary. 
  15. ^ André Lardinois; Laura McClure (25 March 2001). Making Silence Speak: Women's Voices in Greek Literature and Society. Princeton University Press. pp. 210–. ISBN 0-691-00466-8. https://books.google.com/books?id=YSLjWrr7_xkC&pg=PA210 
  16. ^ Παλατινή Ανθολογία/IX/144 Ανύτης ウィキソース
  17. ^ a b Gordon L. Fain (2 August 2010). Ancient Greek Epigrams: Major Poets in Verse Translation. University of California Press. pp. 34– 
  18. ^ Παλατινή Ανθολογία/VII/649 Ανύτης ウィキソース
  19. ^ Ελληνική Ανθολογία/XVI/231 Ανύτης ウィキソース
  20. ^ Amyte”. Brooklyn Museum. 2017年11月19日閲覧。
  21. ^ Anyte”. Gazetteer of Planetary} Nomenclature. 2017年11月19日閲覧。


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