Fear, and Loathing in Las Vegas
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/20 03:08 UTC 版)
概要
2008年結成[6]。
バンド名は1998年のテリー・ギリアム監督の映画『ラスベガスをやっつけろ』の原題(Fear and Loathing in Las Vegas)に由来する。公式な略称は「FaLiLV」「ラスベガス」。バンド名が長いため、「なんちゃらラスベガス」に略されることもある[注 1]。
音楽性
ポスト・ハードコアをベースに、オートチューンボーカルとシンセサイザーを交え、トランスの要素を取り入れたスタイルが特徴[6]。
結成メンバーの一人であったSxunは、日本人が作るようなメロディと日本国外のアーティストのサウンドの融合というのが当初のバンドサウンドのイメージであったと語っており、具体的には彼が対バン経験のあったNorthern19やTOTALFATのようなメロディを想定していたという[8]。またBOOM BOOM SATELLITESとの対談ではバンドの音楽性について、「自分らでできることをやってるだけなんですけどね。打ち込みもあるし、生っぽさもあるし、どっちも普通にあるっていうか、自然に成り立ってしまったんですよね。ルールがないというか、知識のなさから生まれた、偶然の結果ではあると思うんですよ。普通だったらできないテンポチェンジとかも、「でも、ここは速くしたいから速くするんだよ」っていう感じで[9]」と語っている。
多彩な音楽ジャンルを取り入れていることに関して、「自分たちはいろんなジャンルの要素を取り入れてますけど、だからといって、それぞれのシーンでその音楽を極めている人たちに負けたくないという思いがあって。いろんなジャンルに手を出して、それぞれが60点でも意味がないと思う」、「やるなら、それぞれのジャンルを極めている人たちに負けないものだけが、自分たちのところに並んでいるような音楽を作っていきたい」と語っている[9]。
Tomonoriは結成当時のインタビューにて、Minamiのキーボード、Sxunのギターリフ、その下でリズムが前面に出るようなドラムの3つを基盤にした上で、さらに個人の個性を曲に突っ込んでいくことによって自然と今のサウンドを確立したと語っている[10]。彼曰く、「カオス」、「ポップ」、「コア」、「ダンス」がバンドの軸であり、その4つをどのようなバランスで組み合わせるかだという[11]。また一番こだわりたいのは、Fear, and loathing in Las Vegasにしかできない音楽を作りたいということであり、「Las Vegas」というジャンルを作り上げることだとしている[10]。
また多彩なサウンドの要素を1曲に融合させる秘訣については、固定観念に縛られずいろいろなフレーズを当てはめてみた上で格好いいかどうか、これをメンバー全員の感性で格好いいと思えることだとTomonoriは語っている。基本的にはかなり感覚的な作業で曲を作っているというものの[9]、ノリで適当にくっつけて意味の分からない曲になってしまわないように、様々な音をくっつける場所、曲の変わり目をどうアレンジするかは考え抜かれて制作されており、ここに苦労してボツになった曲は数え切れないくらいあるという[10]。
Tomonoriは「このバンドには、「やっちゃダメなことはない」っていう考えがある[9]」と語っている。またBOOM BOOM SATELLITESとの対談では、「僕らの音楽って、ハードでもあるし、ポップでもあるし、いろんなジャンルの音楽のいいとこ取りをしてやろうっていう音楽なんですね[12]」「個々のメンバーの個性をそのまま掛け合わせていったのが今の僕らの音楽で[9]」と語っている。
音楽的な影響
結成当初のインタビューでは、デスコアからジャズ、アニメソングを聴いたりなど、音楽的な趣味がメンバー一人一人で全く異なるということが明かされている[10]。
結成メンバーのSxunは元々メロディックバンドを組んでおり、海外のアーティストが作るメロディはしっくりこないと語っている。最初にバンドを始めたきっかけはSHACHIであり、そこからインディーズのバンドをよく耳にするようになったという[8]。
Minamiはもともとクラシック・ピアニストであり、そこから派生してきたジャンルやアニメ・ソングをよく聴いているという[8]。またシャウトをやるきっかけになったバンドとしてTHE USEDを挙げている[13]。
Soはバンドを始めたきっかけとしてELLEGARDENを挙げている。その後はSTORY OF THE YEARやTHE USED等のスクリーモを聴くようになり、現在はジャンルレスに何でも聴く雑食だという[8]。またTHE BACK HORNのボーカリスト山田将司の歌い方が好きだと語っている[13]。
Tomonoriは基本的にスクリーモやメタルコアといったジャンルを全然聴かないという。ドラムを始めたきっかけは銀杏BOYZ、GOING STEADYを聴いて衝撃を受けたからであり、その後はファンクやジャズ、サンバ、メタルなどごちゃごちゃに聴いていたといい、1つのアーティストから影響を受けたというよりは、様々なアーティストから色々な部分の影響を受け、吸収しているという[13]。
Taikiは影響を受けたアーティストに玉置浩二を挙げ、ライブに行った際に感動的な衝撃を受けたと語っている[13]。
Tetsuyaはベースを始めるきっかけとなったレッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーの他、Billy SheehanやIKUO、THUNDERCAT、Henrik Linder(ダーティ・ループス)といったベーシストをそれぞれ挙げている。
功績
ライターの荒金良介は、もはや国産のラウド/ヘヴィミュージックにエレクトロが入っているのは当たり前であるとした上で、その当たり前を常態化させたのはFear, and Loathing in Las Vegasの存在によるところが大きいと分析し、今や右を見ても左を見てもその手のバンドであふれ返っていると語る[14]。
ライターの中村拓海はラスベガスについて、エレクトロ×ラウドロックという組み合わせにハードコアのエッセンスを加え、次世代のバンドも交えて「ピコリーモ」というジャンルを確立したと語る[15]。
タワーレコードの加藤直子、安達香菜、桜間里奈は、ハードコア/スクリーモ系が頭角を現すようになった流れの中で一番の起点になっているのはFear, and Loathing in Las Vegasであるとし、ラスベガスの登場以降は確実に流れが変わったと語る。具体的にはASHLEY SCARED THE SKYや、ファッション性もラスベガスに近いものがあるTHREE LIGHTS DOWN KINGS、ARTEMAなど、レイヴィーなスクリーモ/メタルコア系のバンドが続々とメジャー・デビューしたことを挙げた[16]。
同じくライターの西廣智一はセールス/ライブ動員的に大成功を収めたラウドロックバンドのひとつとしてラスベガスを挙げ、「ラウドロックの未来を示すという意味でも、彼らの成功は非常に大きな意味を持っている」と語る[17]。
評価・反応
BOOM BOOM SATELLITESの中野は、ラスベガスの音楽について展開の早さとテンポチェンジの仕方に驚かされると述べた上で、「ゲームがメチャクチャ上手いヤツが作ったみたいな音楽[12]」と例えている。
coldrainのボーカリストであるMasatoは、ラスベガスについて「最初に出てきたときに“すごいな”と思いましたもん。1stアルバムであれだけちゃんと定まってるのはすごいなと。感心のみですよ[18]」と、デビュー時には既にバンドとしての方向性が定まっていたと語る。
その音楽性から「ドイツのFear, and Loathing in Las Vegas」と形容されることもあるELECTRIC CALLBOY(当時・ESKIMO CALLBOY)は、2014年のインタビューにてラスベガスについて自身と比較して「とても速いけどメロディックな曲を作る」と語り、ARTEMA、ギルガメッシュと並んで最もドイツで人気があるとしている[19]。
RAISE A SUILENはライブ・パフォーマンスに影響を受けたアーティストとしてラスベガスの名前を挙げている[20]。メンバーの中でも特に倉知玲鳳がラスベガスのファンであり、同じキーボーディストのMinamiを目標にしているという。
PassCodeは自身の音楽性のルーツになったアーティストとしてラスベガスを挙げている。中でもメンバーの南菜生はデビュー初期辺りが特にラスベガスの色濃い影響を受けていたと語り、「ベガスご本人達はどう思ってるんだろう?」と思っていたという[21]。
タワーレコードの山口コージーは、ラスベガスにはエンター・シカリのレイヴ×スクリーモ/メタルコアなサウンドやストリート感溢れるファッション性が受け継がれていると評している[22]。
ライターの荒金良介はReal Soundにて、ラスベガスの音楽性を語る上で外せないのは、「ラウド」と「エレクトロ」の両要素だとした上で、「前例がない。お手本がない。比較すべきアーティストが見つからない」「ラスベガスの前にラスベガスなく、ラスベガスの後にラスベガスなし」とコメントしている[23]。また、「エレクトロを標準装備したアプローチが増えれば増えるほど、ラスベガスの技量とセンスはより一層強い光を放っている。あるいは、模倣できないオンリーワンの個性として堂々と君臨している[14]」とも語る。
音楽ライターの西廣智一は、CrossfaithやARTEMAのようなエレクトロの要素を取り入れたヘヴィなサウンドを信条とするバンドは存在したが、ラスベガスの場合はラウドロックの側面とダンスミュージックの側面を両立させつつ、なおかつキャッチーさやポピュラリティも存在するという点が他とは異なる大きな個性といえると評した[24]。
楽曲制作
基本的な作曲方法は、まず曲のテーマやイメージをマネージャーが提示し、それをもとにバンド側(主にMinamiとSxun)がフレーズなどのネタを作成、それをマネージャーとともに曲に仕上げていくという流れで行われる。この流れはSxunが脱退して以降も変わっておらず、Minamiも根本的なやり方自体はずっと変わっていないとしている[25]。マネージャーとの共同制作は自主制作EP『Take Me Out!! / Twilight』から行われている[26]。
作曲に関しては、Tomonoriがインタビューにて、基本形のようなものは存在するもののあまり固定しないようにしているとも発言している。Tomonoriは、基本に従ってやり過ぎると結局同じような曲しか作れなくなるため、そこは頭を柔らかくしていろいろなやり方で作っていけたらいいとしている[27]。
なお歌詞に関してはほぼ一貫して、マネージャーがメンバーの経験したことなどをもとに大枠のテーマを決め、Soが日本語でまとめ上げ、それを英訳する、という手法で手掛けられている。
デビュー当時
『Dance & Scream』制作は、SxunとMinamiがメロディやキーボードのフレーズを持ってきて、それをメンバー全員で広げていくという形で行われた[28]。
具体的には、まずSxunやMinamiがそれぞれギターリフやメロディを作成し、それをTomonoriがスタジオで聞いて構成を立てつつ、ある程度できあがったものに対してメンバーでディスカッションを行って制作するという方法が取られていた。誰かが作った曲をそのまま演奏することは無く、スタジオに入ってワンフレーズ格好いいものができたら、それを中心に構成を立てていくという形で行われた[10]。その際に意見を言うのは基本的にSxunとTomonoriであり、他のメンバーはそれに対して「俺はこう思う」というような話し合いをしていた[28]。
『NEXTREME』制作では作曲陣それぞれの得意な部分、長所的な部分が分かれてきたため、Tomonoriは構成、Minamiは打ち込みやキーボードメロディ、Sxunはメロディ、というようなそれぞれを活かす方法に変化していった。Tomonoriは、楽器隊や構成の下地を彼とMinamiが作りその上にSxunがメロディを乗せた曲や、Sxunがメロディとコードを制作し彼とMinamiと構成を広げていく曲など、前作『Dance&Scream』に比べて制作方法が異なるパターンが増えたとしている[29]。
『All That We Have Now』制作では、前作制作時から役割分担が取られるようになったことも影響し、フレーズを作ることだけに目がいって曲全体を見ないという状況が生まれた。それは良くないということで、メンバー全員で話し合ってひとつのイメージを決めてという確認作業を、曲作りを一旦止めて時間を割いてでも行った[30]。また、それまで曲の構成は足し算が多く要素を詰め込んでいくというやり方だったのに対し、「これを抜いたらもっと良くなるんじゃないか」という引き算をして潰す方法が取られた[31]。
『PHASE2』以降
『PHASE 2』制作時は、ベースが交代したこともあってバンド・サウンドにベースのアレンジを多く取り入れていきつつ、全体のバランスを考えて要所要所で見せ場を作ったという。またMinamiとSxunの2人でスタジオ以外でも集まって制作するようになった。制作終盤にはリハーサル・スタジオで全員集まった際、MinamiとSxunがロビーで作業をする中、他のメンバーはスタジオでフレーズやライブの練習をする等、分担することが多くなったという[32]。
『Feeling of Unity』制作時には、バンド内での作業が分担化して作る方と待つ方の時間に差が生まれてしまい、お互いを見れないために気遣ってフォローするといったことができず、空気が悪くなって一回揉めたという。そのため、メンバー同士がコミュニケーションを取り同じ感覚を共有することの大切さを再確認したといい、アルバムタイトルにも反映されている[33]。
『New Sunrise』制作時は、以前からはっきりしていた役割分担がさらに強くなったという[34]。
『HYPERTOUGHNESS』以降
『HYPERTOUGHNESS』制作時には、作曲を担当していた1人のSxunが脱退しているが、それまでの方法と変わらずに制作が行われた[35]。続く『Cocoon for the Golden Future』も同じ方法で制作された[25]。
新型コロナウイルス流行以降の作曲は基本的にオンライン上で行われている。Minamiが曲のネタを事前に作りマネージャーがそれを聴いた上、使えそうなフレーズをピックアップし二人でブラッシュアップしていく形であり、マネージャー曰く前述のMinamiの作業を「宿題」と呼んでいる。ツアー中などにはMinamiが「宿題」をコツコツ進め、後でマネージャーがそこから細かくフレーズを変えたり構成を整えたりした上で、新たな「宿題」を出しては出来上がったものを聴いて加工しての繰り返しで行われている。楽曲の構成や完成の線引きは全てマネージャーが指揮を執っている。Minamiは、Sxunが抜けたために以前は考えていなかったパートも考えるようになったものの、コロナの影響で時間も増えたためそこまで負担にはなっていないとしている。しかしながら、他のアーティストのライブを見に行けないという点で刺激を受けることが少なくなったなど、難しい面もあるという[36]。
注釈
- ^ 但し2019年12月リリースの『HYPERTOUGHNESS』の広告では「なんちゃらラスベガスでは予約できません」と宣伝されている[7]
- ^ 最初の方はTaikiとマネージャーふたりで主にやりとりしながらやっていたという
- ^ 『Feeling of Unity』のリリース時期では一度髭を完全に剃っていた。
- ^ 加入発表時のアーティスト写真および『The Stronger, The Further You'll Be 』のMVでは自身が使用しているベースとKeiが使っていたベースを持っている姿で登場した。
出典
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Fear, and loathing in Las Vegas
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/01/18 18:46 UTC 版)
Fear, and Loathing in Las Vegas(フィアー・アンド・ロージング・イン・ラスベガス)は、日本のポスト・ハードコアバンド。
- ^ a b c d Fear, and Loathing in Las Vegas - フィアー・アンド・ロージング・イン・ラスベガス - キューブミュージック・2014年8月30日閲覧。
- 1 Fear, and loathing in Las Vegasとは
- 2 Fear, and loathing in Las Vegasの概要
- 3 タイアップ
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